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2024年9月26日、東京ゲームショウの開催に合わせて日本一ソフトウェアの新作RPG『ファントムブレイブ 幽霊船団と消えた英雄』のグローバルプレスカンファレンスが開催されました。
日本一ソフトウェアから開発責任者の細野裕矢氏とシナリオを手掛けた城花健人氏、そして声優の寺井らんさんと戸田めぐみさんが登壇し、さまざまな新情報が発表されたイベントの模様をレポート。
さらにメディア向けに開催された体験会でのプレイインプレッションと、城花健人氏への単独インタビューの模様もお届けします。
◆発売日は2025年1月30日!DLCではあの殿下も……!?
プレスカンファレンスでは最初に作品説明が行われ、“海賊”がテーマとなるシナリオや重要な戦闘システム「コンファイン」について解説。さらに初公開となったPVでは作品の世界観や見どころを深堀りした内容が紹介されました。
そして今まで未定とされていた発売日が2025年1月30日、日本と北米欧州で同時発売と明かされ、アジア圏とSteam版の発売日が2025年春頃になることもあわせて発表されました。
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続いては登壇者によるキャラクター紹介へとなり、戸田さんは「アプリコを見守ってほしい」、寺井さんは「私の中に眠る怪物を呼び覚まして(二面性あるウルミを)演じました」と、それぞれ演じたキャラクターの印象を語る場面も。
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さらには特典やDLCの情報も初公開となり、限定特典の内容や他の日本一ソフトウェア作品のキャラクターが登場することも明らかに。今回明かされた顔ぶれには無かったものの、途中ポロリと「ラハール」というフレーズも飛び出していたので、『ディスガイア』シリーズファンは今後のDLC情報に期待しても良いのではないでしょうか。
最後には質疑応答と登壇者それぞれから可愛らしくも感動できるストーリーや奥深いゲーム性に触れるコメントが送られ、新情報盛りだくさんのカンファレンスとなりました。
◆デモ版で「ネイビィ島」でのバトルを体験
カンファレンス後にはプレス向けの体験会が実施され、拠点となる島での会話や探索、そして作中で訪れる「ネイビィ島」でのバトルシーンがプレイできました。
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バトルではマップ上の岩や草に死者の魂を乗り移らせて味方ユニットに変える重要なシステム「コンファイン」を中心に、マップ上を自由に移動して戦うターン制の戦闘システムに。画面右上に行動順が表示され行動範囲も円で示されるなど、UIの視覚的な分かりやすさで前作のプレイ経験がない筆者でも行動プランを立てやすく感じられます。
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強力な一撃を持つアプリコなどコンファインした仲間が主戦力ではあるものの、時間が経つと憑依が「解除(リムーブ)」となって離脱してしまうので、マローネでユニットを上手く指揮していくのが攻略のポイントのようです。
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移動やアビリティの選択肢が多く、どんなオブジェクトにコンファインするかにもよってユニットの能力が変化するため、同じマップでも全く同じ展開にはなりづらい印象。自由度の高さから明らかに「これが正解だ」と思える選択肢がなく、色々なことを試したくなるプレイフィールになっています。
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バトル前後の掛け合いではキャラクターが表情豊かにモーションするのもかわいらしく、探索でもマップの見づらい角度まで作りこまれているのが印象的。原田たけひと氏によるキャラクターデザインを忠実かつキュートに再現した3Dモデルにも注目です。
◆「懐かしくも新しいSPRGを目指す」 シナリオを手がける城花健人氏インタビュー
イベント後には本作のシナリオを担当している城花健人氏へのインタビューの機会をいただきました。
──最初に簡単な自己紹介をお願いします。
城花:日本一ソフトウェアで主にシナリオを担当しています。本作ではシナリオをひとりで執筆しておりまして、技などキャラクターの個性に関わる部分の演出も監修しています。
──シリーズとしてすごく久しぶりの続編と言う立ち位置の作品になりますが、このタイミングで続編を出そうとなった経緯を教えてください。
城花:企画がスタートしたのは『ディスガイア7』の開発段階でした。『ディスガイア7』は開発段階から手応えもあり今後もシリーズが続いていく中で「ディスガイア以外にもSRPGの看板になるタイトルがあれば」という話が開発部で持ち上がり、ゲーム性や方向性が違っている『ファントムブレイブを復活させるのはどうか』という案が持ち上がりました。
──初代の発売が2004年なので、20年前の作品の続編を作るとも言えるチャレンジだったかと思いますが、シナリオ作りも相当大変だったのではないでしょうか。
城花:そうですね。私も当初は主人公継続は難しいのではないかと、別の主人公案を5つほど考えていたんです。ですが弊社の会長の北角(浩一)から「それは逃げだ。ファンはきっと彼らの続きの物語を見たいと思っているはずだ」と指摘を受け、アッシュとマローネが主人公の物語を描くことにしました。
最終的には13案くらい書いてみてようやく形になりましたが、そうした苦労の甲斐もあって第1作をプレイされていない方でも楽しめるシナリオになったのではないかなと感じています。
──私もデモ版をプレイしてみましたが、ビジュアル面も含めて“日本一ソフトウェアらしさ”を感じられますね。
城花:“日本一ソフトウェアらしさ”というイメージの代表例では『ディスガイア』シリーズが挙げられると思いますし、そこにパロディを交えたユーモアやダークなネタを思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。
ただ、私は日本一ソフトウェア全体に「色んな価値観を持っている種族がぶつかりあいながら分かりあっていく」というものがあると個人的に考えて大事にしていまして、本作ではそうした“日本一らしさ”が味わっていただけるのではないかと思います。もちろんユーモアがあり、遊んでみると意外とシリアスな展開もありというテイストでブランドのファンの方にも楽しんでいただけるのではないでしょうか。
──初代と比較するとハードウェア性能を含めてかなり状況が変わりましたが、ゲームにおいて変えた部分や「あえて変えなかった」要素があれば教えてください。
城花:変えたのはプレイ感ですね。「前作の要素は全て入れよう」という基本的な考えはありますが、コンファインの度にメニューを開くような面倒なステップは省き、現代的なテンポでプレイ出来るよう遊び心地はブラッシュアップしています。
逆に変えなかったのは「色んな武器で色んな技が使える」システムですね。これは好評の要素ではあったんですが、3Dグラフィックになると「剣を持って銃撃技を出している」などの状態で見た目の違和感が強くなってしまうかなと考えました。ただ、今作は小さな頭身でコミカルな表現に落とし込むことが出来たので、少しの違和感は了承の上で残すことにしました。
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──この装備でこんな技が出るの?というのは面白く受け止められるのではないかと。
城花:極端に言えばキノコで斬撃を繰り出すこともできるので、それを楽しんでいただけたらと思います。
──先ほどユーモアもありシリアスもありと作品のテイストを紹介いただきましたが、城花さんの中ではどれくらいのバランスが理想と考えていますか?
城花:『ファントムブレイブ』は可愛い見た目でありながらもシリアス・過酷な物語もしっかり描かれてきたシリーズなので、グロテスクにはならないよう気をつけつつ、シリアスさを和らげることなく描くことを意識しました。
──確かにグラフィックとの良い意味でのギャップを感じる要素もありますね。
城花:序盤は明るいんですけど、物語を進めると結構過酷なシーンも出てきます。そこも楽しんでいただければと。
──まだ本作の発売前ではありますが、シリーズの今後についてのビジョンはありますか?
城花:せっかく復活させたのだから続けていけるものに、という想いはあります。もちろん初代が綺麗にまとまった終わり方だったように作品ごとの綺麗なまとまりを持ちつつ、上手く再構成していきたいと思っています。これは完全に個人的なアイデアですが、マローネが色んな地域に行ってさまざまなキャラクターと交流するような展開など面白いのではないでしょうか。
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──前作を遊んだことがない人が本作からでも遊びやすいポイントがあれば教えてください。
城花:前作を知らなくても置いてけぼりにならないよう、冒頭で初代の物語をナレーションで丁寧に振り返っています。どれくらい丁寧かと言うと、一度録り終わった後に「これじゃ伝わらないだろ」と指摘が入って完全にナレーションを作り直したくらい細かく語っています(笑)。
ゲーム性は独自のシステムもあるのでいきなりプレイすると難しく感じる要素もあるかも知れませんが、本作では「やさしい」という難易度を用意していますので、気軽にプレイしていただきたいですね。
──ちなみに本作の開発に当たってはやはり前作をプレイしなおしたのでしょうか。
城花:資料ではなく生のプレイ感を確かめるために何人もゲームをプレイしていましたし、私はノベライズまで読んで物語の世界をしっかりと確認しました。ただ、私は日本一ソフトウェアが好きで入社した人間なので「20年前のゲームをプレイしなおすのは無理だよ」と言うファン心理も分かりますので、知らなくても楽しめる作品作りを大事にしています。
──当時開発を手掛けられていた方もあまりいらっしゃらないのではないでしょうか。
城花:そうですね。実は前作を手がけた新川(宗平)さんにもアドバイスを求めたのですが「当時の俺らも好きに作ったから、お前たちも好きに面白いと感じるものを作ればユーザーさんも面白いと思ってもらえるよ」と無責任なことを言われました。今は『クラシックダンジョンX3』に携わっている池田(真一)にも同じことを言われたので、僕たちも面白いと思えるものを一生懸命作っています。
──ではゲームシステムだけでなく開発精神も受け継がれているということですね。
城花:そう言えるかも知れません(笑)。
──最後にメッセージをお願いします。
城花:私が一番皆さんにお伝えしたいのは「20年前の作品のキャラクターであるマローネとアッシュは今でも皆さんの心を掴める存在である」という点です。前作のファンの方の心を掴みつつ新しい方にも向けたタイトルになるよう、個人的には「懐かしいけど新しいSPRG」を目指して作ってきましたので、初めての方からずっと続編を待っていてくださった方まで楽しんでいただけたらと思います。よろしくお願いします!
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『ファントムブレイブ 幽霊船団と消えた英雄』はスイッチ/PS4/PS5向けに2025年1月30日、日本と欧州北米で発売予定。Steam版は2025年春頃の発売を予定しています。
東京ゲームショウではセガ・アトラスブースにて試遊展示も実施中。会場を訪れた際は足を運んでみてはいかがでしょうか。
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【UPDATE:2024年10月2日11時30分】
記事掲載当初、北角浩一氏の肩書が「代表取締役」となっていましたが、正しくは「会長」です。お詫びして訂正します。