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【特集】「まるで香港映画!」詠春拳修行中のライターが新作『バーチャファイター』アキラの体術を徹底解説

アキラが動画で魅せた攻防戦を凝視!

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格闘ゲーム『バーチャファイター』の新作プロジェクト『New VIRTUA FIGHTER Project』のコンセプト動画が大きな話題を呼んでいます。

それまでの「攻撃をブロックする動作」とは一線を画す、「攻撃を受け流す動作」が精緻に再現されています。それは単純な打撃だけではなく、その後の掴みや組み付きも想定した動きに仕上がっています。まるで香港映画を観ているような感覚になってしまうほど。

そして、中国拳法(詠春拳)を修行中の筆者から見ても、これは中国拳法の技術でちゃんと説明できる動きだ! と確信できる内容になっています。というわけで今回は、新しく生まれ変わった結城晶(以下アキラ)の体術について解説していきたいと思います。

前蹴りの受け止め方が今までと全然違う!

従来の格ゲーの防御といえば、キャラが両腕を使って顔の前に壁を作るスタイルでした。腕が縦向きなのか横向きなのかという違いはあるにせよ、相手の打撃をガッチリ受け止めた直後の細かいカウンター攻撃というものはあまりありませんでした。

しかし、『New VIRTUA FIGHTER Project』のコンセプト動画には「防御後の攻防」が実装されていることが窺えます。

この動画に登場するのは、服を着たアキラと上半身裸のアキラ。ここでは分かりやすく「着衣アキラ」「半裸アキラ」と呼びたいと思います。

まず筆者が驚いたのは、蹴りの受け止め方。従来の格ゲーであれば両腕で壁を作る防御か、ムエタイのような片足を上げる防御でブロックしていたと思います。それを手刀で斬り下げる動作で、外側に流すように防御している!

こうすることで、半裸アキラは防御直後の攻撃にすぐさま移行することができます。もちろん、着衣アキラものんびりそれを見ているはずはありません。現実の格闘技では、このあたりに「先に打つか、それとも敢えて打たせてやるか」という駆け引きが発生します。

「掴んで下に落とす」動作も

さらに興味深いのが、上の動画の23秒からの攻防。ぜひスロー再生でご覧ください。

半裸アキラが左の裏拳をかまし、それを着衣アキラが左前腕でブロックします。直後、着衣アキラがそのままの体勢を崩さず半裸アキラの裏拳を掴み、彼の腕ごと下に落とします。その動作とほぼ同じタイミングで、着衣アキラが右パンチ!

ところが、攻防はそれだけで終わりません。着衣アキラの右パンチを半裸アキラが右腕でブロック。すると、体勢は下の画像のようになります。

この状態から、着衣アキラが右手を使って半裸アキラの右手を取ります。それを下に落とし、直後に左裏拳! 見事に半裸アキラの顔面をぶちのめしました。

この動き、香港映画ではよく見かけると思います。詠春拳を始めとした中国南派武術のそれと、まったく同じ理論のアクションです。相手の腕を掴むことが禁じられているボクシングには、このような攻防はまずありません。

それでも詰めが甘いぞアキラ!

ただ、筆者から見れば上の攻防での着衣アキラには詰めの甘い部分があります。半裸アキラの腕を掴んで下に落とした直後、すぐにそれを離してしまったからです。

結果として着衣アキラは半裸アキラの両腕を掴んだはずですが、もし最後まで「掴みっぱなし」の状態を維持していたとすると、半裸アキラは以下の画像のような体勢になっていたはず。

相手の腕が体の前でX字になると、その時点で何もできなくなります。手錠で拘束されているようなものです。着衣アキラが最後まで掴み続けることを意識していれば、半裸アキラを戦闘不能に追い込むことができたかもしれません。

「手首の動き」に注目

今後も新しい動画の公開が待ち望まれる新作『バーチャファイター』ですが、注目すべきはキャラクターの手首の動きではないでしょうか。

中国拳法や西洋剣術において、最も重要視されるのは「手首の柔軟さ」。もしも手首が固いと、接近時の細かい組み合いで不利を強いられてしまいます。相手の腕や手首を即座に掴むためには、あらゆる角度に手首を回せるくらいの柔軟さが必要です。

そして、これが理解できると「武術や拳法にゴリゴリの筋力は必要ない」ということも分かってきます。

詠春拳ゆかりの地・中国広東省の仏山市

詠春拳の創始者は、男性ではなく女性という伝説があります。あくまでも言い伝えではありますが、最大限のパワーを込めたパンチやガチガチのガードを使わず、パリィとカウンター攻撃で相手を追い詰める戦い方は確かに女性のものかもしれません。余計な力を使うことを忌避し、脱力状態からある一瞬だけ力を入れる体の使い方も、パワーで押し切る筋骨隆々の男にはできない発想です。

今はまだ「開発前」

ここで、注意すべき点が一つ。

今回取り上げた動画は、あくまでもコンセプトを紹介するための動画であるという点です。既に開発されて配信を間近に控えている作品の紹介動画……というわけでは全くありません。したがって、ここまで取り上げたアキラが「本当にこのような動きになるのか」ということについてはまだ未知数。

ですが、それを加味したとしても「新世代の格ゲーの在り方」を予感させる素晴らしい動画であることに違いはありません。テクノロジーの進歩は格闘技をより精緻により正確に再現するようになり、我々に新しい発見をもたらしてくれるようです。



ライター:澤田 真一,編集:キーボード打海

ライター/ゲーム×社会情勢研究家です。 澤田 真一

「ゲームから見る現代」をテーマに記事を執筆します。

編集/「キーボードうつみ」と読みます キーボード打海

Game*Spark編集長。『サイバーパンク2077 コレクターズエディション』を持っていることが唯一の自慢で、黄色くて鬼バカでかい紙の箱に圧迫されながら日々を過ごしている。好きなゲームは『恐怖の世界』。

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  • スパくんのお友達 2025-01-13 22:43:46
    バーチャのきっかけとも言えるあの某拳法漫画とコラボすんのかね?
    松田氏は既に逝去し藤原氏はゴルゴに取り込まれてしまってるけど
    七月バーチャ連載の時にやっとけばよかったものをと思うけどあん時の拳児は中学生だったものなぁ
    0 Good
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  • スパくんのお友達 2025-01-13 13:00:37
    「相手が技を出す」⇒「それに対して防御を入力する」というプロセスが格ゲーにある限り、
    こんな余裕をもって流れるような動きにするのは不可能だよ

    FF15みたく、防御ボタンの押しっぱなしで攻撃待つとかならこういう演出もできるだろうけど
    3 Good
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  • スパくんのお友達 2025-01-13 9:52:00
    まぁでも確かにPS3時代に、あと20年もしたらこれぐらい進化してるよな~ぐらいには妄想してたな
    2 Good
    返信
  • スパくんのお友達 2025-01-13 9:23:46
    動画を見てとても面白そうに感じたし楽しみにしているんだけど防御のやり方は格闘技によって色々違う訳でその辺りをどう処理して行くのかな?とは思った
    4 Good
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  • スパくんのお友達 2025-01-13 6:13:17
    チンナチンナ
    1 Good
    返信
  • スパくんのお友達 2025-01-13 4:59:44
    格ゲーじゃなくてリズム覚えゲーにでもしないとそういう動きはむりでしょうな
    6 Good
    返信
  • スパくんのお友達 2025-01-13 4:51:18
    リアルだけを追求するとゲームはつまらなくなるよ。
    そんなことはゲーマーならみんなわかってるでしょ?

    もちろんセガもそんなことは理解している。
    だからこれは本当にただの魅せ映像にすぎないよ。
    実際に手てくるゲームは普通に従来のバーチャと同じシステムになるよ。
    21 Good
    返信
  • スパくんのお友達 2025-01-13 4:36:36
    カットシーンでのリアルな表現はどんどん進化してるけどゲームプレイ時のモーションは難しいよな
    リアルにするには予備動作が必要でもっさりしてゲームにならんし、RDR2も発売時それで結構文句言われてたもんな
    個人的にはソウルライクでグラップリングの戦闘まで表現できる未来が見てみたい
    5 Good
    返信
  • スパくんのお友達 2025-01-13 4:24:34
    こんなの超が付く天才ゲームクリエイターでも作れるのだろうかと思うし
    2キャラしか使えませんなら可能かもしれんが
    しかしセガは過去に体感ゲーム、3DCGゲームと突然とんでもないことをやってきたから
    もしかして・・・はある
    セガはすごいという世界線に再び俺たちが動くときがくるのかのかもしれない
    新しいゲームがどんどん出てきた90年代がずっと続く世界に
    8 Good
    返信
  • スパくんのお友達 2025-01-13 4:10:28
    攻撃ごとにガードのモーション作りこむとか狂気の沙汰なのでそれ以外ならAIとかでも使わん限り無理筋だと思うけどAIもまだまだそこまでできるわけじゃないからなー
    あくまでグラフィックとかキャラのモーションの雰囲気だけ捉えるぐらいにしといた方がええぞ
    ドラクエ3とかも最初のコンセプト動画からかなり変わっちゃってたでしょ
    1 Good
    返信
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