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最近のKickstarterでは90年後半〜2000年台前半のRPGのリブート作が続々と発表され、本企画の第一回目でもご紹介した『Ultima』の生みの親リチャードギャリオット氏の事実的なシリーズ最新作『Shroud of the Avatar』や90年台を代表する敏腕クリエイターが一同に集結した超期待作『Project Eternity』をはじめ、RPGファンには嬉しいオールドスクールゲーム復活のニュースが続いています。
今回は数多く発表されたKickstarter生まれのリブート作品の中から、今年11月にリリースが決定した『Divinity: Original Sin』をピックアップし、2002年にPC向けタイトルとして発売された『Divinity』シリーズの原点『Divine Divinity』を紹介していきたいと思います。
今手に入れるなら
シリーズの記念すべき第一作目としてリリースされた『Divine Divinity』とその続編『Beyond Divinity』はPC版のみという事もあってか『Divinity II 』に比べると日本での知名度がイマイチ低いタイトルで、ユーザーの中にはもしかしたら初耳という方もいるかもしれません。
シリーズの最新作『Divinity II』ではドラゴンへの変身をフィーチャーしたアクション性の高い戦闘が大きな特徴でしたが、初期2作は昔ながらのトップダウン視点を採用した王道RPGで、『Divinity II』とはまた違った雰囲気を醸し出しています。
数年前まではパッケージ販売のみでやや手に入れ難い作品の1つではあったものの、最近になりオンラインストアでの取り扱いもスタートし、日本円にして僅か数百円ほどで購入出来るようになりました。
密度の濃い生きた箱庭世界
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誰を選んでもストーリーに変化は無いので自分のプレイスタイルと相談しましょう。
7つの種族が共存する3つの地域で構成されたRivellonを舞台に、プレイヤーは記憶喪失の主人公を操りながら、世界の陰に渦巻く陰謀と自分に課せられた使命を解き明かしていくのがゲームの目的。
メインストーリーに関しては、“まさに王道”といったところで、特に特筆すべき点はありませんが、本作の一番の魅力は細部まで作られた膨大な量のクエストにあります。
近年で爆発的なヒットを飛ばした『The Elder Scroll: Skyrim』が良い成功例ですが、世界中に散りばめられた膨大な量のイベントをプレイヤーが好きなように攻略していくのがオープンワールドRPGの醍醐味の1つであり、同時に何十時間とゲームに熱中させる為の重要な要素です。
その点において、本作のアイディアの練り方は秀逸で、まさに探索をすればした分だけ何かを発見出来るような作りとなっています。マップ自体はそれ程広く無いものの、大小様々なイベントが密度ギッシリに詰め込まれ、その量は普通に歩いてるだけでも数分に一回はイベントに遭遇する程。
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たまたま迷い込んだ森が人間と敵対するオークの住処であったり、何の変哲もない井戸が大富豪の屋敷やおぞましい処刑場に繋がっていたりと、好奇心を刺激する仕掛けがあちらこちらに存在するのが本作一番のポイント。
マップを埋めているだけでも次々と新たなクエストが発生するので、あっちにも何かあるかもしれない、こっちにはもっと凄いアイテムがあるかもしれない……。といった具合に、どんどん本来の目的を忘れて道草ばかりに精を出してしまうのは最早必至。
プレイ中「このクエストが終わったら今日は寝よう」と思っても、大体新たなクエストや怪しげなダンジョンが見つかってしまうので、ついついこれが終わったら……。を繰り返して結局徹夜してしまう事もありがちで、RPGファンを虜にするツボをバッチリと抑えた中毒性の高いゲームです。
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旗はイベントが発生した場所やオブジェクトのメモとして使用。これでもほんの一部です。
馬鹿ゲーとしての一面
一見すると、硬派でガチガチのハイファンタジーにも見えますが、『Divinity』シリーズは下らないジョークとブラックユーモアの塊でもあります。
幾つか例を挙げると、大体のプレイヤーがゲームを開始してすぐに“妻からの花は絶対にいらない!”と書かれた男の墓石を目にする事になります。洋ゲーにはありがちなお墓のイタズラ書きかと思いきや、隣にある妻の墓から花を移動させると、アンデットと化した夫が登場し物凄い剣幕で襲いかかってきたり、昆虫同士が戦争を繰り広げる異世界に、何故か世界的なセレブMCハマーの石碑が建っていたりと、ちょっとした小ネタやお馬鹿要素が至るところに存在。
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能力が上昇する度にメッセージが変化するので毎回確認するのも楽しい。
キャラクター同士の会話や各種ダイアログメッセージも凝っていて、ステータス画面1つをとってもそのユーモアは健在です。初期のレベルの低い状態を見てみると“君の体力は最低だ。階段を登るだけで息切れを起こし、このままだと30歳になる前に死んでしまうだろう。悪いことは言わない、もう少し体力を付けるべきだ。”、“駆け出し冒険者の君は総合的な能力に欠けている。指をくるくるさせるおまじないで自分の身が守れると本気で思っているぐらいだ。“といった具合。
その他、「どうして自分は骨なのにご飯を食べれるのか」という疑問に悩むスケルトンや、インチキ商人と繰り広げるコント、他ゲームのパロディなどクエストや細かいダイアログにもクスっと笑えるネタがたっぷりと仕込まれています。
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1つずつ挙げるとキリが無いほどの遊び心に溢れていて、普通のゲームではイースターエッグとして用意されている様な小さなイベントも盛りだくさん。ジャンルこそ違いますが、シリアスを基準としながらスタッフのユーモアを上手く融合させた作風は『メタルギア』シリーズにも近いかもしれません。
しかしながら、少々やり過ぎな部分も多く、真剣な場面でも笑いを取ろうとするセリフ回しや、ジョークが少々くどすぎる場面もあるので、その辺りは好き嫌いがはっきりと分かれそうなところ。
名作ゲームをいいとこ取りしたシステム
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関連クエストを攻略すれば凄まじい装備が手に入る。
本作のゲームシステムは“色々なRPGの美味しいところだけを詰め込んだようなシステム”と例えられる事が多く、特に当時PCゲームで大ヒットを記録した『Diablo』と『Baldur's Gate』から強く影響を受けているのは明白で、『Baldur's Gate』の広大なクエスト探索と『Diablo』の育成要素を合わせた様なシステムが採用されています。
『Diablo』同様、ゲーム中に登場する装備品は基本パラメーターに加えてランダムな追加パラメータが付与されます。ものによっては専用のスロットに更なる強化アイテムを埋め込む事も出来るので、一見ゴミのような低級品がもしかしたら素晴らしいアイテムに化ける可能性もあるのです。勿論その逆もまた然りで、ゲーム中最強と言われる装備であっても、運が悪ければお店で売っているアイテム以下の性能になってしまう事も……。
アイテム以外の育成要素として魔法や鍵開け、透明化、トラップなど豊富なスキルが用意されており、ある程度幅の広いキャメイクを行う事も可能です。
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アイテム欄は自分で好きな様に配置が出来ます。細かい点でも個人的には結構重要なポイント。
当時最高峰のRPGをいいとこ取りにしたのが『Divine Divinity』である事は間違いありません。しかし、それらの要素がどれも中途半端になってしまっているという致命的な欠点も抱えています。
前述した通りクエスト量は多いものの、やはり本家『Baldur's Gate』に比べるとマップサイズやボリュームの物足りなさは否めません。また、ゲーム中に登場する敵の数が限られているので、『Diablo』のようにトレハンやファームを行うことも出来ず(特殊なスキルを使えば一応は可能)せっかくのランダム要素を生かしきれていないという問題も。
また、スキルバランスにもやや難があります。スキルの数は多いものの、1度習得すればほぼ全ての場面をノーダメージで突破出来てしまう凶悪なものから、全く使い道の無いようなスキルまで性能の差が激しく、プレイヤー自身である程度の制約を取らなければ、大体がテンプレート通りのキャラクターに仕上がってしまうかもしれません。
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ゲームバランスが完全に崩壊してしまう為、どう使うかはプレイヤー次第です。
後追いながらも海外産のレトロゲームをプレイしていて思うところ、80〜90年代初期のRPGは壮大なアイディアばかりが先行しそれを実現する為の技術が全く追いつかず、結果的に理不尽な謎解きであったり、不便なだけのシステムを実装したゲームが溢れてしまっている印象です。
時代を考えれば仕方の無い事ではありますが、2000年前後からようやく作り手のイメージが具現化され始め、その中でもスタッフのやりたい事を片っ端から実装しながらも、日本のゲーマーが楽しめる程までに丁寧に作りこんだ初期の成功例の1つが『Divine Divinity』では無いかと思います。
少々欲張り過ぎて消化不良な面もあるものの、10年以上経った今でも色褪せない魅力を存分に秘めた名作タイトルです。幸いにも、現在はダウンロードストアを通して10ドル以下の価格で購入出来るので、本記事を読んで興味を持った方は是非手にとってみてください。
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