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先日、5月11日、PLAYISMの3周年記念のパーティーを行われました。ご存知の通り、PLAYISMは国内外のインディーゲームのディストリビュートを行うだけではなく、ローカライズやプロモーションも手がけており、先日、ボストンで開催されたPax EAST 2014にも出展を行いました。
具体的には『洞窟物語』でお馴染み開発者Pixelの『Kero Blaster』、えーでるわいすの2.5Dシューティング『アスタブリード』、NIGOROの『La-Mulana 2』が展示を行い、デベロッパーも現地に足を運んでいます。
そこで今回、パーティーの合間を縫って、NIGOROの楢村匠氏にPAXの感想とインディーゲームの海外プロモーションのあり方について伺いました。楢村氏が現地で撮影した写真とともにお届けします。
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――どうもこんにちは。今日は先日、ボストンで開催されたPax EAST 2014の話を聞かせてください。楢村さんは、他のデベロッパーやPLAYISMのスタッフと共に現地に言ったんですよね。
楢村:
そうですね。以前から海外向けのプロモーションは課題の一つだったんです。日本にいると、直接ライターの方と知り合って、新作を記事にしてもらうことも可能ですよね。それが海外の人だと、たまにTGSでインタビューしてくれることがあっても、その一回で終わりになってしまうんですよ。メールベースで付き合いを増やすというのも限界があります。なので、いつかは絶対、現地に行きたいと思っていたのです。
――なるほど。しかしながら、2013年に楢村さんはGDCで渡米していますよね?その時も海外のメディアとコンタクト取ることはなかったんですか?
楢村:
あの時は僕一人でスピーカーとして参加したんです。ゲーム自体は持って行かなかったので、取材は講演を聞いてくれた人がまとめたものくらいです。またアメリカのイベントは初参加だったんで、自分の役目が終わったら、周りを見て回ることばかりしていました。
――ブログにも書かれていましたが、観光していましたよね(笑)。
楢村:
そうそう。でも、Paxでは実際に展示を行い、反応を見る機会になりました。『LA-MULANA 2』のバージョン自体は、TGSでもBitSummitでも出展したものだから、特に目新しいものではなかった。それでも出展したらどうなるのかを見てみたかった。
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――今回の『LA-MULANA 2』はKickstarterでクラウドファンディングをやったので、そのBackerの方が見に来ることはありましたか?
楢村:
来てましたね。「Backerだ」と言われると恐縮してしまいます(笑)。こっちはお金を払ってもらっているから。それでちょっとグッズを多めにあげたり、サインを書いたり。日本では、このPLAYISMのパーティーなどで、ファンと交流する機会はあるんですが、向こうにはそれがないんですよね。
――そういった熱心なファンにとって、楢村さんと直接会う機会は貴重だと思います。では、実際にプレイしている様子はどうでした?
楢村:
僕は昔から国が違っても、びっくりするリアクションはどこでも同じだと思っていたんですよ。だから、海外にも販売するからといって海外向けのゲームを作ることはしていないし、いつも自分が面白いものを作っています。ただ実際に海外の方を生で見ると、日本人に比べると無駄にリアクションがデカい(笑)。「Awesome!」とか「Oh so cool!」とか。
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僕以上に驚いていたのが、初めて海外に出展したえーでるわいすのなるさん。彼は今までで同人ゲームの世界で作品を発表してきたので、お客さんはほとんど男ばっかりでした。しかし、初日のPAXがオープンして最初に彼のところに来たのが、親子連れだったんですよ。小さな女の子が『Astebreed』を遊んで、「cool!」って連発するんですよ。その楽しそうな姿を見て、なるさんは感動していました。面白ければ、年齢とか人種とか関係ないんだってのが、実感できたんです。
――それは良い話ですね。中でも『LA-MULANA 2』は、リアクションを誘発しやすいゲームなので、いろんな国の人にプレイしてもらうのはちょっと楽しみですね。
楢村:
あれだけ大きなイベントだと、『LA-MULANA 2』を初めて触った人もいました。最初は操作もわからないけど、説明したらすぐに慣れて、でも速攻で殺されて、大笑いしていました。また時々、何も言わないけど「貴様やりこんでおるな」っていう人も来ます(笑)。
あとは3日間のうち、一人だけ「shit」って言って去っていく人もいました。そういう感情ですら、オープンに出すんだと感じましたね。日本人だと、気に食わない時は、そっと置いて止めますからね(笑)。
その辺の振れ幅の大きさは、海外と日本では差があるかなと思いました。いずれにせよ雰囲気はとても良かったです。コスプレでも自由に闊歩でき、マリオが『LA-MULANA2』で遊んでいたりするんですよ。
――最近では、日本のインディーゲームが海外に進出するようになりましたが、認知度はどれくらいあるのでしょうか?
楢村:
PAXの来場者に関していえば、日本のインディーゲームに対する認知度はほぼ無いと言って良いと思います。ただ、それでもみんな足を止めてくれます。TGSなどでは、自分の好きなゲームのために2時間並んだりしますが、満遍なく遊んでいるという印象を受けました。だから「これが日本製だ、インディーだ」っていう感覚もほぼないと思います。
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――プロモーションとしてはどの程度、有効でしたか?
楢村:
Twitchのブースに行って、15分間だけ『LA-MULANA』の動画を流す機会があったんです。そうすると次の日からTwichに『LA-MULANA』の動画を配信する人が増えたんです。たった数人ですが、今まで海外の動画配信サービスまでリーチすることはでなかった。渡航費用も含めて結構なお金がかかり、プロモーションとしての対費用効果は微妙です。だけど、今まではそれすら出来なかったし、行くと効果があるのは間違いないんですよね。それ以上に、直接、遊んでいるところを見れるのは貴重な機会です。
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またイベントを通して海外のデベロッパーと交流することができます。PAXとGDCで仲良くなったのは、『Chasm』というサイドビューのジャンプアクションを作っているデベロッパー。我々と同じく、Kickstarterで資金を得て、Gleenlgihtを通過したので、仲間意識が芽生えました。あとはTGSに来ていたビジュアルノベルを作っているChristine Love。彼女はPAXでは、うちの後ろにブースを構えていました。シューティングゲームを作っている17bitというデベロッパーも隣でした。サルが出てくるリズムゲームの『Jungle Rumble』を作っているトレヴァーはボストン在住だったので、PAXに来ていました。
今年のGDCの講演にもありましたが、こういったデベロッパー同士の交流はインディーゲームで成功するためには非常に重要です。足繁く通い、仲良くなって、IGFで推してもらう。今回、それがちょっとでも出来てきました。
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――なるほど。海外に行くのは、単純に海外のユーザーに情報発信するだけではなく、海外コミュニティとコネクションを持つことが重要なのですね。では最後に『LA-MULANA 2』の進捗を教えて下さい。
楢村:
規模が大きくなったので、年内にリリースすることは無理です。ただ2014年に何の活動もないはまずいので、他の人達と何かをしたり、一緒になって何かを出したりしたいと思っています。僕らは人数が少ないので、一旦、作り出すと1、2年は沈黙しなければいけない。
だけど、作っている最中もプロモーションをしなければいけないんです。それでKickstaterでアルファ版のプレイ動画を公式に認めることをアナウンスしたんですが、どうも海外では当然のことだったようです(笑)。むこうでは作りながら、様々なコンテンツを公開していきます。制作風景すらストリーミングで流したり。なので、今後のプロモーションのやり方はもっと考えていかないといけないですね。
――なるほど。『LA-MULANA 2』が出るのは、まだまだということですが、それまでもうまくファンを盛り上げるイベントを打っていければいいですね。
楢村:
本当です。デスクワークから解放されるイベントあれば、ぜひとも呼んでください(笑)。