記野直子の『北米ゲーム市場分析』2014年5月号―Ubisoftのチャレンジ精神に拍手 | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

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記野直子の『北米ゲーム市場分析』2014年5月号―Ubisoftのチャレンジ精神に拍手

こんにちは。E3(Electronic Entertainment Expo)が開催されていたロサンゼルスから帰国しました。帰国後すぐに5月の北米市場販売データが発表になりましたので、E3のまとめ記事の前にこちらを報告します。

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こんにちは。E3(Electronic Entertainment Expo)が開催されていたロサンゼルスから帰国しました。帰国後すぐに5月の北米市場販売データが発表になりましたので、E3のまとめ記事の前にこちらを報告します。

■市場全体動向

ハードの売上規模は好調で前年同月比95%増、昨年の約2倍の市場になっています。新ハードの発売が昨年末と考えれば当たり前の結果ですが、今月のソフトの動向を見るとソフトがハードを牽引しているという理想的な流れと言えます。新規タイトルラッシュのソフトウェア売上規模は2億7,400万ドル(約280億円)と前年同月の1億7,500万ドル(約178億円)から大きく伸ばしています。

■ハード動向、『マリオカート8』の装着率は驚異の20%


NPDによると、PS4は5カ月連続でナンバー1セールスハードとなりました。残念ながらNPDが断片的な情報しか公表しないため各ハードがどれくらいのシェアでしのぎを削っているか明確ではないのですが、PS4やXbox Oneの競争ばかりフィーチャーされがちな中、実は5月のナンバー2セールスハードは3DSだったとのこと。また、Wii Uと PS Vitaにとっても前年を上回るよい結果だったと報告がありました。

北米では薄型の新PS Vita(PCH-2000シリーズ)が日本・欧州に遅れて5月6日に発売され、199ドルの『Borderlands 2』バンドル版による瞬間風速によってPS Vita好調という意地悪を言うアナリストもいますが、ハード全体が活気づいている様子が見受けられます。

Wii Uを押し上げたのは『マリオカート8』の功績が大きいようで、発売後1週間以内に全世界で120万本を売り上げ、装着率20%、つまりWii U所有者の5人に1人が『マリオカート8』を購入しているという驚異的な現象であることがわかります。

前回お伝えしたように、6月9日に399ドルのKinect非同梱版Xbox Oneが発売されました。これは5月の売上には入っていませんが、私の批判をくつがえして好調のようです。今回現地で取材をしたところ、ハードコアユーザーにとってKinectはかえって邪魔なもので、それが外れて100ドル下がるのは喜ばしいとの声も上がっていました。小売店での売上も好調なようで6月の売上結果にどう影響しているか楽しみですね。

■ソフト動向、『Watch Dogs』はアサクリに迫るセールス


ソフトウェアランキングを見てみましょう。

    1. Watch Dogs (PC/PS3/PS4/X360/X1) - Ubisoft
    2. Mario Kart 8 (Wii U) - Nintendo
    3. MLB 14: The Show (PS3/PS4/PSV) - SCE
    4. Wolfenstein: The New Order (PC/PS3/PS4/X360/X1) - Activision Blizzard
    5. Minecraft (X360/PS3) - Microsoft/ SCE
    6. The Amazing Spider-Man 2 (PS3/PS4/360/ Wii U/3DS) - Activision Blizzard
    7. NBA 2K14 (PC/PS3/PS4/X360/X1) - 2K Games
    8. Titanfall (PC/X360/X1) - Electronic Arts
    9. Kirby: Triple Deluxe (3DS) - Nintendo
    10. Call of Duty: Ghosts (PC/PS3/PS4/X360/X1/Wii U)  - Activision Blizzard

『Watch Dogs』は発売1週間で全世界400万本を売り上げ、Ubisoft の過去歴代初動売上記録を塗り替えたと報道されました。初代『Assassin's Creed』の現在までの販売本数630万本を上回る勢いだとUbisoftが発表しています。

『マリオカート8』はWii Uのみ、『Kirby: Triple Deluxe』は3DSのみに向けたソフトとしてのランクインと考えると、任天堂製ソフトの底力を感じます。マクドナルドとタイアップして「ハッピーミール」セットに『マリオカート8』の7種類のキャラクター(カートに乗っている)フィギュアが北米で展開される予定のようです。(http://www.happymeal.com/en_US/index.html#/Toys)

E3でも年末に向けてたくさんのWii Uの大型タイトルが発売されると発表がありました。ロイヤリティの高い任天堂ユーザーが期待に胸を高鳴らせていますので任天堂の復活は意外に早いかもしれませんね。

ちょっとびっくりしたのは『Minecraft』です。PS3のパッケージ版が5月16日に発売されたのですが、各ハードメーカーがそれぞれのパブリッシャーということで、Xbox 360版はマイクロソフトが、PS3版はソニーがパブリッシャーという珍しい形態です。


さて、話は『Watch Dogs』に戻ります。このタイトルの素晴らしいところはオリジナルIPであるというところでしょう。EAの『Titanfall』もそうですが、映画などのライセンスIPでもなく既存タイトルの続編でもない「オリジナル」タイトルは、市場に認知させるコストを考えるとメーカーにとって大きなリスクとなります。また、ハードスペックの向上に伴い開発コストの高騰がこのリスクを更に増幅しています。

この環境下でオリジナルを投入するメーカーの判断としてはハード切替時が定説でした。しかしながら日本ではこのような英断ができるメーカーが減ってきており、続編志向が進んでいることも否めません。オリジナルIPタイトルどころか今回のハード切替時の日本発タイトルの少なさは異常事態です。ガンバレ日本!はサッカーだけの話ではありません。これをもって日本メーカーへのエールとさせていただきます。

UbisoftはWii Uローンチ時にも積極的にタイトルを供給していました。『ZombiU』や『Rabbids Land』、『Rayman Legends』など、Wii U本体の売上が伸び悩んでいるため必ずしも成功とは言えませんが、あらゆるチャレンジをしているという意味では群を抜いています。

5月単独でのメーカー別売上ではUbisoftがダントツの1位だったそうです。既に発表されているUbisoftの『Tom Clancy’s The Division』は残念ながら2015年に発売が延期になりましたが、UbisoftがEAやActivisionを押しのけてソフトメーカーとして高みを目指している姿はユーザーに確実に受け入れられているのです。またいろいろと手を広げているからと言ってクオリティへの妥協をしていないところも格好良いと思います。

それではまた来月!
《記野直子》
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    • スパくんのお友達 2014-06-27 5:22:47
      >1
      開発におけるマネージメントの差が主です。
      新技術の導入と同条件下における作業量の増加に対して企画段階から何も考慮されていないケースが多く見受けられました。
      企画そのものは練りきれていないものも多く、多方面に渡る様々な向上的意見の取り纏め役も居ない。同時にマネーマネジメントに対する青写真を描ける人は皆無。金融を学んだ専門家など、まず居ませんでしたからね。
      某最大手で数年前はこの様な状況でした。
      状況を好転させるには、まずは何となく学ぶのを辞め、各セクションで徹底した専門家を育てるかリテインし、同時に椅子にふんずり返っている割に粗利の低い古参をバッサリ切り捨てる勇気も企業にとっては必要でしょう。

      皆さんの意見が非常に熱の篭った意見ですね。こういう意見を拝見させて頂くと、日本のゲーム開発も未だ捨てたものではないと思えます。

      本気を出せば、まだやれるんじゃないか?   なんちゃって。
      0 Good
      返信
    • スパくんのお友達 2014-06-18 15:42:53
      このままだと先進国全体の消費文化自体が70年代生まれとともに滅んでしまう気がする。
      無駄な消費をしない、無駄な行動をしない、は合理的ではあるけど社会全体で見るとあらゆる産業の縮小を招くんじゃないかな。
      2 Good
      返信
    • スパくんのお友達 2014-06-18 13:51:56
      よく海外で据置CS機がすごい売れてる的な表現をよく見るけど、いまだマニア層にしか売れてないように感じる。
      ubiのチャレンジと成功はすばらしいが、ラインナップの中心はやはり(大人向けといえば聞こえはいいが)売上が手堅い殺人ゲームが多い。
      このまま若年層世代への普及を無視し続ければ、前世代機の普及台数を大きく下回り、市場全体が縮小する可能性が高いと思う。
      4 Good
      返信
    • スパくんのお友達 2014-06-18 13:32:21
      >>18
      君自身が「人気」「売れてる」「受け」みたいな事しか評価基準にしてないじゃないか
      4 Good
      返信
    • 太郎 2014-06-18 12:18:33
      朝ドラが人気なのも、短時間でさっと見られるスマフォゲームみたいな利便性があるせいかもね。
      小説内で漢字が減って、分かりやすく且つ、書かなくても分かることをあえて書いたのが売れてるのも、読書時間を減らせるからだろうし。

      「何かにこだわってそれだけに夢中になること=オタク」というマイナスイメージで植え付けたのも、深い作品が受けなくなっている理由の一つかもね。
      このままじゃ日本人はどんどんバカになって、本質よりも表面重視(物語のよさよりも出演するタレントが大事、自分で中身を確かめると言うより売れてるという回りの評判を重視)のバカ女と変わらなくなっていく気がする。
      6 Good
      返信
    • スパくんのお友達 2014-06-18 12:18:12
      UBIのチャレンジ精神は素晴らしいね ハードのロンチにも積極的だし新規IPもよく作る。
      10 Good
      返信
    • スパくんのお友達 2014-06-18 11:49:55
      >>4
      何かプロっぽい人キタ━━━(゚∀゚).━━━!!!
      4 Good
      返信
    • スパくんのお友達 2014-06-18 10:57:25
      PS3、4/箱○、いちで出してくれる大手はまだ良い方だよね。
      5 Good
      返信
    • スパくんのお友達 2014-06-18 10:36:33
      安易にデモンズソウルの続編じゃなくて新規でPS4に挑戦するフロムは偉い
      F2Pなのは気に喰わないけどdeep downのカプコンも
      FFタイトルを量産しまくって、肝心の続編がいつまで経っても出てこない何処ぞのメーカーも見習って欲しい
      13 Good
      返信
    • スパくんのお友達 2014-06-18 10:01:05
      そんな煽ってるとかゲハ的な内容には見えないんだけど、それは自分がPSユーザーだからかな?
      6 Good
      返信

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