Gray氏が所属しているustwoはもともとモバイルアプリの開発をメインにしている会社。シドニー、ロンドン、ニューヨーク、スウェーデンと世界4ヶ所にスタジオがあり、『Monument Valley』を開発したustwo gamesはロンドンスタジオを拠点にしています。同社は開発会社の中でも独特の雰囲気があり、Gray氏はそこに惹かれ、以前勤めていたMicrosoftから今の会社に転職したとのこと。
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また、Gray氏はゲーム開発にあたって「エレガントで幅広い層の人が楽しめるものを作りたい」という目標をもっていたと説明。こうしたゲームを作るためには開発する側にも多様性に溢れた豊かなバックグラウンドを持つ人材が必要だと語りました。
本作のコンセプトでは「ゲームの概念を変えるためにはゲームの外から取り入れる」という考えのもと、エッシャーの錯視絵はもちろんのこと、現実の建築物や音楽アルバムなどを参考にしたとのこと。例えば『Monument Valley』のステージでは、アルバムに含まれる音楽一つ一つのように、単独でゲームとして成立するものを目指していたそうです。
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本作のストーリー性においては、非常にシンプルな姿をしている主人公アイダから見て取れるように、わかり易さを重視して開発。敢えて特徴を省くことでプレイヤーが経験や思いを重ねることが出来るようにしたと語りました。開発当初は従来のストーリーテリングや、カットシーンを挿入してストーリーをより明確にする計画もあったようですが、そうした要素を入れることによって、電車の中で遊べるような「手軽さ」が失われてしまうことが分かり、今の形になったようです。
また、ゲーム性では「ゲームを遊ばない人に対してどう訴求していくか」を考えた時、モバイルアプリでの日常的な動作を取り込むことを意識して開発したとのこと。ゲームで遊ばない人にテストして貰うことで、操作性を確認し、完成度を高めていったと語っています。
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Gray氏は、最後に一番重要な要素として「人間性を感じるゲーム」を作ることをあげました。ustwoでは「楽しんで働ける環境」を重視しており、年1回全世界の社員がバカンスに出かけ、同僚としてではなく友達になれるような環境づくりを心がけているそう。人間性を感じるゲームを作るためには「従業員は人間であって、働くためのロボットではない」という考えが重要だと強調しました。
昨年数々の賞を獲得し、86カ国でナンバー1アプリとなり、累計ダウンロード数500万を突破した『Monument Valley』。ゲームのヒットの裏にあるゲーム開発への多様性と人間性を大事にした姿勢に、講演を聴いていたインディーデベロッパーも共感したのではないでしょうか。