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バハマで開催されている『ハースストーン(Hearthstone)』の大会、「ハースストーン冬季選手権(HCT Winter Championship Tour)」。当然ながらブリザード・エンターテインメント関係者も多数イベントに参加していますが、本稿では『ハースストーン』開発チームメンバーであるMatt Wyble氏へインタビューを敢行。バハマでの開催の大会経緯や日本のe-Sportsに関するコメントなど、様々な質問を投げかけてみました。
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―――まずは自己紹介をお願いします。
Matt Wyble氏(以下、Wyble氏):Matt Wybleです。『ハースストーン』の開発チーム、Team5に在籍しています。主に『ハースストーン』のe-Sports部門を担当しています。
―――ブリザードでの経歴や、これまでどのようなことをやってきたのかを教えてください。
Wyble氏:2013年から『ハースストーン』のインターナルアルファ(未公開のアルファ版)から携わっています。それまではビジネススクールで大学院に通っていて、近代五種競技のプロ選手でもありました。アメリカ代表だったんです。
―――すごい経歴ですね!今回の大会は初めてバハマで開催されていますが、なぜバハマで『ハースストーン』の大会を開催しようと思ったんですか?
Wyble氏:『ハースストーン』でなにか新しく、クレイジーなことをやりたかったんです。2017年度はどうしようか、といった話が社内で上がった際、ファンと選手の両方が楽しめる環境を作るのが大事だと感じていました。
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最初は冗談半分で言ってたんですが、実際にロケハンをしたところ、このバハマをとても気に入ったんです。加えて、他のe-Sports大会とは差を付けたかった。『ハースストーン』という作品自体が、他のe-Sportsに採用される作品とは異なると思いますが、そういった面でも「違い」を見せられると思い、バハマ開催に踏み切りました。
―――いつ頃から計画していたものなんですか?
Wyble氏:バハマ開催に関しては、6ヶ月前からです。「ハースストーン選手権」の年間通じてでの全体像は、1年前から行っています。
―――今回のイベントがスタートして数日経ちましたが、これまで「成功している」といった実感はありますか?
Wyble氏:今のところ成功しているという実感はあります。今年の目標のひとつに、世界中のプレイヤーが1年を通して何度も戦う、というものがありました。各リージョンごとにプレイヤーやファンがいて、「ヨーロッパが最強だ!」「アジアのほうが強い!」といったライバル関係が築かれることで盛り上がりますが、それが何度も開催されることでその機会が多くなります。欧米とアジアは、メタの違いにより全く異なるスタイルが構築されているので、そこの激突も興味深いですね。
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また今年はプレイヤーにより焦点を当てて、プレイヤーの「ストーリー」を大事にしたい、と考えていました。視聴者にプレイヤーのことをより知ってもらおう、と考えています。どういったスキルを持っているのか、どういったパーソナリティなのか、という点は、配信を見てもらえるときっとわかってもらえる部分だと思います。そこは今のところできている、と思っているので、成功だと言えます。
―――これまでe-Sports大会の運営を行ってきている中で、大変だったこと、良かったことを教えてください。
Wyble氏:バハマという土地で、会場のインターネット環境を整える点、機材を準備する点は苦労しました。「BlizzCon」でも同じようなことはやってきましたが、今回は『ハースストーン』のみでの初めてのイベントです。『ハースストーン』チーム単独で開催することで、学んだことは多いし、今なお学ぶことが多いです。
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良かった点は、プレイヤーの背景、物語を知ることができる点です。b787選手などの一挙手一投足は、イベントを開催することで初めて知れた部分ですし、そういった面を見られるのは大会開催の醍醐味だと思いました。
―――「BlizzCon」の開催は、大会運営のノウハウなど得るものは多かったのでしょうか。
Wyble氏:得るものはありました。共通することもいくつかあります。ただ、島に囲まれてる、ってところは「BlizzCon」とは違うかな(笑)。通じるものはあるけど、それ以上に違う部分は多いです。
―――日本でも徐々にe-Sports文化が広がってきていますが、欧米や他のアジアに比べればまだまだです。Wybleさんは何をすれば、より日本のe-Sportsが盛り上がると思いますか。
Wyble氏:今度開催されるHearthstone Championship Tour Japan Majorは、盛り上げるため要素のひとつになると思っています。これを開催することにより、(世界から)日本のe-Sportsへの注目度が集まります。試合の配信を行うことで、日本にe-Sportsのシーンがあることを、世界中のプレイヤーや観客に知ってもらえる良い機会だと考えています。
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日本のプレイヤーの熱意にも驚かされます。日本語が実装されていないベータの頃からプレイしてくれているユーザーもいたのは驚きました。その熱意を持ち続けることが『ハースストーン』という作品だけでなく、『ハースストーン』のコミュニティの発展にも繋がるのではないかと思います。
―――『ハースストーン』以外のe-Sportsタイトルで注目しているものなどはありますか?
Wyble氏:他のブリザードタイトルの大会ですね(笑)でも、我々ブリザードの社員はみんな、自社タイトルはもちろん、他社タイトルのファンでもあります。『League of Legends』にも注目しています。また、チームは異なりますが新しいゲームとして『オーバーウォッチ』の今後の展開は注目しています。
―――ありがとうございます。最後に日本の『ハースストーン』ファンへメッセージをお願いします。
Wyble氏:『ハースストーン』の魅力は、今配信を見ている初心者の人たちが、いつかは大会の舞台に挙がるようになるかもしれない。そういった可能性を孕んでいる作品だと思っています。そして、そういった初心者の人たちのために環境を整えるのも我々のチームの役目だと思っています。
日本人の世界チャンピオンも是非見てみたいです!mattun選手、Kno選手、b787選手も舞台に挙がってますが、まだこれは日本にとって序の口だと思います。なので、『ハースストーン』をたくさん遊んで、練習して、公式サイトを始めとする様々なサイトの情報で力を付けて、是非大会で活躍してください!そして、「ハースストーン・グローバルゲーム」では日本のチームを応援してくださいね!
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インタビュー中に印象的だったのは、Wyble氏がブリザード・エンターテインメントのメンバーとしてだけではなく、いちゲーマーとしてゲームやe-Sportsについて熱く語ってくれた点。純粋にゲームが好きで、ゲームに愛情を注ぎ続けてきたスタッフが、『ハースストーン』という作品を通じて「何か新しいことをやりたい」「何か驚かせることをやりたい」と考え続けた結果、バハマでの選手権開催という答えを導き出したと考えられます。
日本のe-Sportsシーンの発展には欠かせない存在となっているブリザード・エンターテインメント作品。国内e-Sportsシーンにおいても、『ハースストーン』がさらにその勢いを見せてくれることを期待したいです。
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インタビュー中はお茶目な一面も
取材協力:Blizzard Entertainment