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2017年9月24日まで実施中であった東京ゲームショウ2017。同イベントのインディーコーナー、クロスファンクションブースでは、日本の古き良きRPGに大きな影響を受けたという、『Earthlock: Festival of Magic』のPS4/ニンテンドースイッチ向け日本語版がプレイアブルで展示されていました。本記事では出展のため来日していた開発メーカーSnowcastle GamesのCEO、Bendik Stang氏と、共同創設者Erik Hoftun氏へのインタビューをお送り致します。
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――まずはお二人の自己紹介をお願い致します。
Bendik Stang氏(以下Bendik):私はSnowcastle GamesのCEOを努めています。そしてこちらのErikはCOOです。
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――『Earthlock』を作成される前はどのようなゲームを作っていたのでしょうか?
Bendik:『Earthlock』の前は、『HOGWORLD: Gnart's Adventure』というiOSゲームを作っていました。2014年のアップルのゲームリストのTOP10にも入っていたのですが、実はこの『HOGWORLD: Gnart's Adventure』は『Earthlock』のメインキャラの幼少期のお話だったりします。同作のヒットでゲーム開発の体制を整えることができ、『GTA IV』や『GTA V』のチーフ開発チームの一員などを加えて、小規模だったチームも大きなものとなりました。
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――『Earthlock』の概要について教えてください。
Bendik:『Earthlock』は私達が子供の頃にプレイしていた大好きな日本のRPGをオマージュしたタイトルです。物語としては、2000年前に自転が止まってしまった惑星を舞台として、自転を復活させるために冒険をする内容になっています。主人公の一人は体調不良の叔父がいるスカベンジャーで、彼がおじさんのケアをしつつ冒険を始めるところからストーリーが始まります。
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――JRPGを意識した作品では戦闘システムがキーポイントとなりそうですが、本作ではどうなっているのでしょうか?
Bendik:ターン制の戦闘で、特徴として“スタンス”というものがあります。この“スタンス”を変更することで、魔法を攻撃系から回復系に切り替えたり、といったようなことが可能です。
また、“絆システム”(日本語正式版では名称変更の可能性あり)というものがあって、キャラ同士の絆を深めていき、“リミットブレイク”というシステムで大技が繰り出せるようにもなっています。他には“タレント”(こちらも日本語正式版では名称変更の可能性あり)があります。これはスキルやアビリティを向上させたり、後々変更したりすることを可能とするものです。
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――先ほど説明のあった“スタンス”の切り替えは戦闘中でも可能なのでしょうか?
Bendik:敵との相性を考えながら“スタンス”と“スキル”を事前にセットしておく形になります。戦闘中には“スタンス”の切り替えは可能ですが、“スキル”は切り替えできません。
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――“タレント”の他にもレベリングでの成長要素はあるのでしょうか?
Bendik:レベルアップでポイントが得られて、このポイントを消費してスキルなどを追加していくようになっています。キャラクターの組み合わせでスキルは変わるので、成長させきったら別のペアで新たなスキルを追加する、といったことも可能です。
――ベースのレベルの成長は通常の経験値によるものなのでしょうか?
Bendik:ベースのレベルは敵を倒したときの経験値や、クエストクリアなどでの経験値で上昇します。また、敵モンスターは複数同時に戦うと経験値倍率が上がっていきます。8匹と同時に戦うことで、最大の8倍の倍率を得ることができるので、可能ならより多くの敵を同時に相手どるようにするといいでしょう。
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――Earthlock』の物語はどのようなユーザー層へと向けたものなのでしょうか?複雑であったり、ロマンス要素があったりとか。JRPGのオマージュであれば、こちらも重要なポイントになりそうです。
Bendik:基本的にはユーザー層を意識せず、誰でも遊べるような物語を目指しています。ロマンス要素については……少しあるので楽しみにしてください。物語の大軸としては、惑星の自転を復活させるためのストーリーが常に背後にある形です。
実は……本作は3部作予定の第1部なのです。自転の復活については第2部以降でより深いストーリーが語られるかたちで、本作では小さな物語が中心に展開していきます。第1部である本作の終盤以降、自転が静止してしまった理由について見え隠れするようになります。
――「3部作」構成とのことですが、どの作品も単体で成立するものなのでしょうか?例えばゲームのラストが「次へ続く」というかたちで幕が降ろされることはありますか。
Bendik:はい、単体で成立します。3部作ではありますが、いつどれをプレイしても楽しめるようなものになっています。第2部以降も、プレイするのに前作の話がわからなくも大丈夫です。
――『Earthlock』の制作に当って、大きな影響を受けたJRPGはどの作品でしょうか?
Bendik:開発チーム全員が『ファイナルファンタジーVII』、『ファイナルファンタジーIX』を強く意識しています。『牧場物語』シリーズもかなり意識しています。
――お二人自身のお気に入りのタイトルはありますでしょうか?
Bendik:『二ノ国』シリーズですね。
Erik Hoftun氏(以下Erik):古い『ファイナルファンタジー』シリーズで、今もプレイ中です。
――ノルウェーだと、やはり日本のゲームは入手やプレイが難しいのでしょうか?
Bendik:1年ぐらい後には遊べるようになることが多いですが、だいたい英語です。ノルウェー語は利用者が少なく500万人程度なのであまりローカライズされないのです(笑)。
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――『Earthlock』の「この部分はJRPGと違う」という部分や、あえて“お約束”通りになっている部分などありますでしょうか?
Bendik:答えになるかは分かりませんが、私達はターン制の戦闘システムであったり、農場の成長要素などを始めとして、システム全般についてもJRPGを非常にインスパイアされていますが、“「JRPG」を作ろう”として本作を作ってはいません。私達の中から湧き出てきたものが、結果的に「JRPG」というスタイルに大きな影響を受けた物となってしまったのです。アートスタイルについては日本風を意識しつつも欧米のタッチとなっているので、そこは日本人の人達に楽しんで頂ければと思います。
Erik:我々独特のスタイル、「NRPG」と言ってもいいんじゃないかな(笑)。
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――直接ゲーム内容とは関係ないのですが、本作はKickstarterに2度目で成功しています。やはり苦労があったのでしょうか?
Bendik:最初は2013年11月。何も知らないで実施しましたが、この時期は本当にKickstarterに向いていない時期でした。また、不勉強な部分も多かったため、非常に勉強になりました(笑)。翌年、2014年4月に2度目のKickstarterを実施したのですが、春先はKickstarterに向いており、一言で言えば時期的にピッタリだったのです。Kickstarterを実施する際は必ず勉強して、知識を蓄えてから挑戦してください。
別のKickstarterの利点として、ファン層が増えることが挙げられます。そのファンを裏切ることができないというプレッシャーがあるので、良いものが生まれました。他にも、我々は非常にギリギリな状態で開発を行っており、Kickstarterが無ければ倒産寸前だったのです。
――2017年9月にはKickstarterで日本からのプロジェクト立ち上げが可能になったのですが、日本からKickstarterに挑戦するデベロッパーに対してアドバイスなどはありますでしょうか?
Bendik:Kickstarter期間は、やることがたくさんありすぎて、特に『Earthlock』はグローバルなプロジェクトだったので、寝る時間が全くありませんでした。昼夜問わず各国から問い合わせが来ていて、パニック状態です。なので、できる限り体制を整えて、そういう対応ができるように意識してください。
Erik:良く皆勘違いしがちなのは「Kickstarterが成功したら全ての開発資金が集まる」といったものです。実際はそうではなく、Kickstarterでは開発資金のほんの一部しか集めることはできません。その先の自分たちの頑張りと努力で、“Kickstarter以外の”資金援助を受けて初めてタイトルを完成させることができるようになるのを皆さん忘れないでください。
最後のアドバイスとして、Kickstarterには、目標達成可能なファンの層があることを、前もって必ず確認してからチャレンジしてください。Kickstarterに失敗すると自身にも、ファンにも大変な衝撃となります。あと、もしもっと具体的な質問があるなら、ぜひいつでも我々に連絡してください。
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――最後に、日本のゲーマーに向けたコメントをお願いします。
Bendik:JRPGをオマージュしたタイトルを日本で発売できるのは光栄です。皆さんも是非私達の「JRPG」の解釈を、ゲームを楽しんでくださればと思います。
Erik:Bendikが纏めてくれました(笑)。
ノルウェーからのJRPGへのラブコール、そしてその先にある独自の「NRPG」を目指す、古き良き自体の空気タップリのRPG『Earthlock: Festival of Magic』は、PS4/ニンテンドースイッチ向けに2017年冬に3,240円(税込)で発売予定です。なお、既に発売中のSteam版への日本語収録については未定です。