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2018年5月12日から13日にかけて京都市勧業館・みやこめっせにて開催された「BitSummit Vol.6」。Game*Sparkでは、『白き鋼鉄のX(イクス)』、『Bloodstained: Curse of the Moon』の発表を行ったインティ・クリエイツ社長・會津卓也氏にインタビューを実施しました。
[聞き手:Daisuke Sato]
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――今回、BitSummitで2作品の発表を行った理由を教えてください。
會津:そもそも『蒼き雷霆 ガンヴォルト』は2014年のBitSummitで発表した作品なんですよ。さらにその続編も中間発表にはなるんですが、BitSummitで行っていて、『ガンヴォルト』シリーズは、ここで発表するケースが多かったんです。今回の『白き鋼鉄のX(イクス)』もBitSummitで発表しようと最初から決めていたんですが、ちょうど5月24日が『Bloodstained: Curse of the Moon』の発売日になりそうだということになった時に、もうスポンサードもしているし一緒に発表しようと後で決めたので、2タイトル同時の発表になってしまいました。同時発表で、発売日と価格も含めて発表してしまうと内容としてはオーバースペックになってしまうので、『ガンヴォルト』シリーズは開発開始という形で発表させていただきました。
――『白き鋼鉄のX(イクス)』の開発はいつ頃から始まっていて、現在はどのぐらい進んでいるのでしょうか。
會津:今年に入ってから開発を開始しており、進捗度としては10%行っていないくらい…ディレクターには5%と言っておいてくれと言われています(笑)
――タイトルの『X(イクス)』が引っかかったんですが、『ロックマンX』を意識されている点はあるのでしょうか。
會津:私はちょっとわからないんですが、ディレクターはかなり意識していると思います。
――開発規模は何人ぐらいで制作されているのでしょうか。
會津:『ガンヴォルト』シリーズは、最初は6~7人ぐらいの少人数でキャラクターや世界観、ゲームのメインシステムになる部分を決めて、そこから人が追加されていって、最終的に40人程度の規模にはなっています。『イクス』は、まだ物量制作に入っていないので、コアなところを固めていこうというところですね。通常であれば物量制作に入って2~3ステージ出来てから発表するんですよ。コアな部分を練っている最中に発表するのは、インティ・クリエイツとしてはかなり異例なことです。
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――体験版をプレイさせていただいたんですが、10%とは思えない完成度でした。
會津:そもそも『蒼き雷霆 ガンヴォルト爪』の中に出ている「アキュラ」のシステムをかなり流用しています。最終的には今回の新シリーズとして遊びごたえのある進化を見せなければならない部分もありますし、そういったところは今後開発して作っていく形です。そこが開発陣としては大きいと思っているので、現段階の「アキュラを使って遊べます」という段階から、これから新シリーズの部分を作っていきますよという意志の現れで5%かなと思っています(笑)
――ー前作の製作期間はどれぐらいだったのでしょうか。
會津:構想段階から言うともうちょっと長いですが、『蒼き雷霆 ガンヴォルト』は2年半~3年ぐらい、『蒼き雷霆 ガンヴォルト爪』大体2年ぐらいですね。発売期間は2年間に1本ぐらいですが、べったりと開発しているわけでもなく、間にSteam版の制作なども行っていました。今回は新シリーズということで、新しいシステムという事を考えると、通常よりは時間がかかるかもしれません。
――このシリーズはストーリーのテキストがしっかりと作られているのも特徴ですが、ストーリー部分の制作にはどれぐらいかけているのでしょうか。
會津:ストーリーは開発のかなり初期の頃に作っています。ゲームの制作に入る前には完成していないといけないので、長くて1年、短くても6~8ヶ月ぐらいで全部フィックスしているんじゃないかなと思います。新タイトルの方も元のシリーズと同じようなストーリーラインを追うかは私は聞いてはいませんが、新シリーズなので従来の『ガンヴォルト』とは違う内容になっているのかなという風に思っています。
――『ガンヴォルト』は様々な他のゲームにゲストとして登場していますが、今後も他タイトルに特別出演の予定はあるのでしょうか。
會津:日本のメーカーさんはあまり『ガンヴォルト』に興味が無いんですが、インディー系のソフトハウスさんやデベロッパーさんはそういったオファーをしてくださってますね(笑)。ただ、最初のメールは来るものの、2通目以降は返信がないところはどうしようもないんですが、継続的にお話が続くところであれば、基本的にオファーを断るということはしていません。
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――2Dの横スクロールアクションに関して、国内と海外の温度差はあると感じていますか?
會津:そんなことはないと思います。シューティングゲームに比べたらニッチではないと思うんですが、好きな方はとことん好きで、そうでもない方は難しいよね、というのがサイドビューのスクロールのアクションなのかなと思っています。全体のゲーマー人口に占める2Dアクション好きの割合は国内も海外もそこまで変わらないと思うんですが、海外の方がゲーム人口が多いので、そういった意味では国内よりも海外の方が売れている数が多くなっています。
――国内に限ってですが、3Dのゲームから入ったような若い世代、特に子供達への手応えはどうでしょうか。
會津:3DSになってからは減りましたが、弊社はDSぐらいまでバンダイナムコさんと一緒に受託という形で、『クレヨンしんちゃん』といったサイドビューのアクションを発売していました。毎年10万本ぐらいは売れていましたが、全く遊んだことがないという状況がないとは思っています。そういった意味では任天堂ハードに限っては新規のユーザーは育成されているかなと思います。
ハードウェア自体の売れ行きがスマートフォンに負けてきてしまっているという中では、スマートフォンでしか遊んだことがない層に対しては、アクションゲームはおろか、十字キーやボタンを触ったことがない層が増えていくので、そうなった時はなかなか厳しいかなとは思っています。現時点では小学校中学年~高学年ぐらいから後の世代は、遊んだことがある人はまだちょこちょこいるかな、と。うちのゲームのお客さんとしては20代後半が多いんですが、それが2~3代前の統計なので、もしかしたら30代に足がかかってるかもしれませんが…。
――『イクス』が『ガンヴォルト3』ではない理由は何なのでしょうか。
會津:これを言うと怒られるかも知れませんが、『ガンヴォルト』シリーズのディレクターの津田がかなり『ガンヴォルト3』を難産しておりまして...。ファンの皆さんをずっと待たせておくというわけにはいきませんし、津田じゃない人間に本編シリーズを作らせるのも難しい部分があるので、スピンオフを1つ作るのもアリじゃないかなぁと思いました。それが全てではないんですが、表向きに言えるのはそういった理由からです。
――『イクス』は津田さんは開発に関わっているのでしょうか。
會津:今回はオブザーバーという形で関わっていますが、だいぶ津田の色は抜けていますね。
――『蒼き雷霆 ガンヴォルト』は3DSから始まったシリーズですが、今回も新作は任天堂のハードに向けてリリースされていくのでしょうか。
會津:そうですね。そのことについての最も大きな理由は、弊社の中では任天堂さんのゲームが好きなスタッフが多いということがあります。例えばスマートフォンのゲームを作ろうと思えば、どこにもライセンスを受けずに作って販売することはできますが、各社さんのライセンスを受けて各ハードで出すというのはそれなりにカロリーがかかることです。どのハードでも出すというのは当時は難しかったのですが、今は『ガンヴォルト』をたくさん遊んでいただいたおかげで、色々なハードで出せるようにはなりました。
ただ、やっぱりそれほどカロリーを使わずに出すとなると、やはりプラットフォームを絞らなければならなくなります。大手であればマルチプラットフォームで出せますが、弊社みたいな小さい会社ではなかなかマルチプラットフォームで出すことはできません。じゃあプラットフォームを絞りましょうとなった時に、任天堂のハードで育ってきたスタッフが多いわけですから、任天堂さんのハードに絞りましょうとなります。
『蒼き雷霆 ガンヴォルト』の時は弊社は3DSのゲームばかり下請けで作っていましたからノウハウは溜まっていたのもありますし、うちが3DSで出したゲームを見てうちで作りたいと感じて弊社に入って来るスタッフが多いわけですから。そうやって3DSが好きな人が増えていってしまうので、どんどん濃くなって行くわけです(笑) Switchでアクションゲームを作っている会社だから、ニンテンドースイッチでアクションゲームを作りたいですって入ってくると、じゃあ作りましょうかとなります。作っている人達も人ですから、自分たちの好みがあるので、自分達が買って遊んだものと作るものが自然と同じになると思います。
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――次に『Bloodstaind: Curse of the Moon』についてですが、開発に携わるようになった経緯を教えてください。
會津:まず、2015年に五十嵐孝司さんがされた、『Bloodstained: Ritual of the Night』のKickstaterキャンペーンの立ち上げから弊社は関わっていました。アートワークや開発を請け負うために一緒にKickstarterキャンペーンの立ち上げに協力しています。デベロッパーという立場ではありますが、アートワークを提供して、デベロップメントも最終的にKickstarterが始まったら始めました。Kickstarterキャンペーンのストレッチゴールの中で8bitゲームを作りましょうというものがあり、それが達成できたので8bitゲームを3DSやPS Vita含む携帯機向けとして制作することが決定しました。
それをメトロヴァニア的な探索系のゲームにしてしまうと本編とかぶりますしグラフィック違いの同じゲームを出しても仕方がありません。なので、8bitバージョンはステージクリア型にしようというのが決まってから、Kickstarterキャンペーンのストレッチゴールに設定しました。弊社は『Bloodstained: Ritual of the Night』を制作するためにずっと忙しくて作ってる余裕が全くなかったんですね。翌年の2016年、E3でアルファ版を発表し遊んでいただいたところ好評でした。ここで開発から手を引きましょうということで、別の会社さんに開発を引き継いで、弊社は8bit版を作ることに専念することになりました。構想自体はずっと練っていたということになります。
――五十嵐さんがシナリオと世界観の監修、インティさんでゲームデザイン等は制作しておられますが、ディレクションはどなたが担当されているのでしょうか。
會津:今回ディレクターは『蒼き雷霆 ガンヴォルト』『蒼き雷霆 ガンヴォルト爪』でプランナーを担当していた宮澤が担当しておりまして、一部のファンの中では生放送で超絶プレイをする人間として有名だったりします。かなりアクションゲームの上手い弊社スタッフが初ディレクションということになりますね。弊社のほとんどの人間が『ガンヴォルト』シリーズを担当していた人間になってしまいます。
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――『Bloodstained: Curse of the Moon』をプレイさせていただきましたが、非常に昔の『悪魔城ドラキュラ』という印象を受けました。これは意識はされていたのでしょうか。
會津:意識というか、過去に稲船さんの作品を作っていますし、今回五十嵐さんのゲームを作っていますが、それぞれのゲームが好きなのはその人のゲームが好きな人達なわけです。ということは、お客さんに向けてゲームを作るというのはプロデュース的には必要となります。一番ファンの方に喜んでいただけるのはどんなビジュアルなんだろうとなった時に、ジャンプする高さも距離も固定型のジャンプアクション、そして、ダメージを受けたらヒットバックを受けて穴に落ちるゲームだろうと。五十嵐さんのファンに向けて相性の良いゲーム性ってなんだろうと考えた時に落ち着いたところが今回のゲームデザインでした。
ビジュアルは『Bloodstained: Ritual of the Night』の時に決まっていましたし、曲も『Bloodstained: Ritual of the Night』で作曲したものを8bitアレンジして、それに違和感がないように新曲を追加しています。世界観、曲、見た目に関しては既に固定してあって、ゲーム性だけ弊社で何ができるかという選択肢があった中で、五十嵐さんのファンに向けたものにし、キャラクターをどんどん切り替えて遊んでいくことができたり、ルート開拓ができるという仕様で完成したのが『Bloodstained: Cruse of the Moon』です。
――今回の発表で期待を寄せるファンの皆さんへ一言お願いします。
會津:まず『Bloodstained: Curse of the Moon』は、ディレクターは非常に面白いゲームを作ったと自負していますし、彼の自信作です。私もプレイしましたし、社内でもすごく評判の良い作品に仕上がっていますので、6機種9で販売するので、お持ちのハードに併せて是非購入してください。また、『白き鋼鉄のX(イクス)』は開発開始の発表となっていますので、今後どんどんだしていく続報を楽しみにお待ち下さい。
――本日はありがとうございました。
※UPDATE(2018/05/20 22:00):タイトルおよび本文の誤字を修正しました。コメント欄でのご指摘ありがとうございます。