「サイバーパンクなヤミ市」的ラインナップ
真ゲマ:
SNSでは「俺ならこれを入れる!」とプレステクラシックのラインナップについて大いに盛り上がっています。たぶん皆さんも「俺バージョン」を考えられていると思うんですよね。まずは子供のころ、プレステを怖がってたという葛西さんはいかがですか?
葛西祝:
そうですね。ぼくのはプレイステーションの時代というのは謎のゲームが大量にあったということをみんなに思い出してもらうチョイスです。「サイバーパンクのヤミ市」ラインナップですね。以下になります。
- クーロンズゲート
- プラネットライカ
- アクアノートの休日
- 太陽のしっぽ
- LSD
- ガボールスクリーン
- グルーヴ地獄V
- やるドラシリーズ ダブルキャスト
- やるドラシリーズ 雪割りの花
- 2999年のゲームキッズ
- 聖剣伝説 LEGEND OF MANA
- ベイグラントストーリー
- TOBAL 2
- エースコンバット3 エレクトロスフィア
- ウンジャマ・ラミー
- サルゲッチュ
- グランツーリスモ
- 高機動幻想ガンパレード・マーチ
- 攻殻機動隊 GHOST IN THE SHELL
- GERMS 狙われた街
- ミザーナフォールズ
伊藤ガブリエル:
うおお……!これまた異彩を放つタイトルがいくつかありますね……!まさしくヤミ市だ……!(笑)
葛西祝:
そう……これが華やかなりしプレイステーションの時代の裏面……
真ゲマ:
このラインナップはやってみたくなりますね(笑)
小室哲哉が最先端のジャンル「ウォーキングシミュレーター」を作っていた?
SHINJI:
うっそでしょ……!昨日ライター仲間とプレステの話をしていたら、ちょうど話題に『ガボールスクリーン』が出てきたんですよ!
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葛西祝:
マジですか!世界中の死刑囚が同時に脱獄するんじゃないかってくらいのシンクロニシティですよ。この作品、小室哲哉ウォーキングシミュレーターですからね。
伊藤ガブリエル:
そのジャンル名だけで気になるじゃないですか!
葛西祝:
様々な3D世界を歩きながら音楽のパーツを集めていくんです。当時ならではのローポリゴンも相まってすごくキッチュで奇妙な世界でした。
基本は音楽パーツを集めていくというゲームプレイなんです。ゲームオーバーもないあたりもウォーキングシミュレーター的で。それから音楽を完成させると篠原涼子のPVが楽しめるなど、いきなりゲーム体験がカルトなものからメジャーな感じになるんですよ。
SHINJI:
そこで仲間由紀恵の貴重映像も見られる伝説のタイトルでもありますからね。
伊藤ガブリエル:
音楽パーツを集めるというのは面白そうですね。集めていくうちに楽曲の音パートが増えていったりするんでしょうか?あ、ギターの音が増えた、みたいな。
葛西祝:
そうそう、そういう感じですね。プレイアブルキャラもなぜかスニーカーで、それが浮きながら音楽を探すというすごい奇妙なものでして……
伊藤ガブリエル:
その説明だけでも凄いやってみたくなってしまうのですが……(笑)ぷかぷか浮かぶスニーカー……!
葛西祝:
ウォーキングシミュレーターがゲーマーの中で比較的一般化しつつある今、意外に受け入れられるのではと思いますね。同ジャンルで音楽をフィーチャーしたものも多くは見当たらないですし。
SHINJI:
あの当時だったら無理だったかもですが本当に今ならいけちゃうと思いますよ!
伊藤ガブリエル:
なるほど!『LSD』で365日分過ごした僕なら難なく行けそうですね!チェックしておきます!
葛西祝:
うわ……(同名ゲームタイトルとはいえ)ガブリエルさんその字面ヤバすぎ……関係ないですが、当時の音楽業界の薬物事情は大丈夫だったのかなとも心配になるソフトですよ。
SHINJI:
ちょっと幻覚体験を思わせる映像表現ではありますからね。
葛西祝:
その他にも『グルーヴ地獄V』などミュージシャンがゲームに近づいたり、『ウンジャマ・ラミー』ではゲームがミュージックに近づく時代でもありました。
『高機動幻想ガンパレード・マーチ』の革新性
真ゲマ:
『高機動幻想ガンパレード・マーチ』が入っているのも良いですね。
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SHINJI:
葛西さん、『ガンパレード・マーチ』って今のネット情報とかだとかなり評価されてますが、具体的にどういう評価で候補に入れましたでしょうか?
葛西祝:
やはり仲間たちとともに戦争を繰り広げたり、学園生活を送れたりと自由なゲームプレイをできるのが魅力ですね。英雄的な兵士になってもいいし、指揮官としてヒロイックに生きるはもちろん、整備兵としてだらだらしててもいいという、さまざまな遊び方も許容する懐の広さがあるんです。それだけではなく、AIによるNPCなど、現在大きなテーマになっている機能が使われていることも大きいです。
一方で世界の謎を解くみたいな、プレイヤーが意識的に物語の背景を探っていく解く遊び方もできました。さらにはメタフィクション要素まで揃っており、いま振り返ると現代のゲームに繋がる要素がたくさん入っているんですね。
真ゲマ:
僕は、やっぱり色んなキャラクターと交友を深められるのが面白かったです。特に、原素子さんと付き合った上で浮気するのが楽しかったですね。
葛西祝:
真ゲマさん大丈夫ですか? このゲームでは他の仲間とも恋愛関係になることも楽しめるんですが、特定のキャラクターと恋人関係になるとおかしなイベントが起きるんですよね。
整備主任として登場する原素子さんは気丈なキャラクターなんですが、恋人関係になったあと「嘘だろ」ってくらい変わっちゃうんです。他の女の子と仲良くしていると嫉妬に狂って刺しにくるという。
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しかも発生条件は日常パートで彼女にふつうに近づいてきた時。なので教室で彼女を見かけたら『パックマン』のように当たらないように逃げるという、別のゲームに変貌するんです。
真ゲマ:
アニメ版も楽しめましたね。
SHINJI:
メディアミックスって当時多かったですが、低品質な物もあった一方、こうやって評価される物もきちんとあったということですよね~!
葛西祝:
あと、制作者側もどこまでメタフィクションの領域を引き上げられるかをプレイヤーと楽しんでいたところもありますね。WEBサイトの公式掲示板で物語の謎をやり取りする事まで、実はゲームの世界観の一部である、というふうに仕掛けているとか。
SHINJI:
ああー!いまでいうバイラルサイトというか、そういうのもありましたね!
伊藤ガブリエル:
すごいですね、サイトや掲示板でのやりとりまで作品の一部!
葛西祝:
『ガンパレード・マーチ』のベースはTRPGなんですね。TRPGは進行役のゲームマスターとプレイヤーが会話をしながら世界観を広げていくというゲームプレイです。コンピューターのRPGよりも自由な展開や、世界観の掘り下げが可能なんですね。それを元にしているから、いろんな試みができたんだと思います。
「ネット」「電脳」がテーマの『エスコン』異色作
真ゲマ:
その他に葛西さんが語りたいタイトルはありますか?
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葛西祝:
『エースコンバット3 エレクトロスフィア』ですね。シリーズの中でも異色作なんです。当時はファンの間でも賛否が分かれ、特に前作を愛好していたプレイヤーからは強い拒否反応もありました。
ただ、そんな賛否両論を起こしてしまう作品になるほど、プレイステーションの時代は表現を追う流れが強かったということを感じさせるんですね。
伊藤ガブリエル :
僕はシリーズのなかで『エースコンバット3』が一番好きですよ。
葛西祝:
自分もそうですね。ただ当時のネットでそう発言したら初代を愛するエースコンバット十字軍と化した方々に袋叩きに遭いましたよ。
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どう異色だったかって、『エースコンバット』シリーズは基本、硬派な戦記のストーリーでリアルな戦闘機を操るゲームですよね。だけど『3』だけ電脳世界や人工知能みたいなテーマで、架空の戦闘機や兵器も出てくるんです。
シナリオも電脳世界というのが結末にも関わってくる内容なんですね。90年代半ばから後半って、押井守監督作品の「GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊」がヒットしていましたし、『Serial experiments lain』なども話題となっていて。『3』は、そんなインターネットの世界がフィーチャーされていた時代の流れに乗っているんです。「まさか押井守が監督したのか?」みたいな展開になるんですよ。
SHINJI:
つまり舞台はSF的な未来なんですか?
葛西祝:
そうですね。国家が解体して、企業が支配している世界観です。そこで電脳空間でプレイヤーが登場人物とやり取りするという。当時は架空の国家同士が闘う戦記的な世界観よりも、電脳世界をテーマにしたほうが感覚としてはリアルでした。インターネットが拡大していく時代でしたし。
SHINJI:
『エースコンバット』シリーズはストーリーがすごい!という事をよく耳にしますが、それが決定的になったのが『3』なのでしょうか?
葛西祝:
確証はないですが、『3』がビデオゲームならではのストーリーテリングを追求したことは確かです。この経験を経たことで、後のシリーズで元の路線に回帰したときストーリーの作り方に生かせたのではないでしょうか。自分は『エースコンバット』シリーズのストーリーの評価をそう考えています。
伊藤ガブリエル:
ストーリーもそうなんですが、ミッションでも本当に驚く要素が多かったですね。「そこでドッグファイトするの!?」みたいなステージもいくつかあるんです。
SHINJI:
へえー!演出面まで優れていると!
伊藤ガブリエル:
『1』『2』と遊んできた当時、その表現力の進化具合に度肝を抜かれた覚えがあります。世界設定も、一回クリアしただけじゃ全容がつかめなくて。ストーリー分岐やメニュー画面で閲覧できるニュースやサイト、登場人物からのメッセージを見ることで、情報を補完していくというかたちでした。
SHINJI:
今にも通じる、いわゆる背景情報からストーリーを読み解くみたいな。
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葛西祝:
あの時代はインターネットが身近だけど未来的なメディアだったから、『FRONT MISSION3』などもゲーム中のWEBサイトを訪問してストーリーの裏事情を探るというゲームデザインになってましたね。
SHINJI:
ありましたねー!外部情報と繋げるというか、あれも一種のメディアミックスに近い手法で、別のメディアとゲームを繋げる試みが盛んだった証拠ですね。
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