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id Software(イド・ソフトウェア)が新作FPSを発売する──この事実だけで心がざわついてしまう者達といえばFPSプレイヤーのことを指します。FPSプレイヤーならば誰もが(自分の)足元にロケットを撃ち込みますし、どのような怪物よりも自分の方が強いと思い込んでいて、実際に襲ってくる数多の怪物を全部叩き潰すまで足を止めることもなく、戦闘の後は何もなさそうな壁に隠された部屋を探しはじめるものなのです。彼らにデカくてヤバい銃を与えてはなりません。地獄を壊滅させるまで戻ってこなくなってしまうのですから……
そんなFPSプレイヤーを多数輩出してきた作品『Quake』『DOOM』で有名なid Softwareが、オープンワールドの雄であるAvalanche Studiosとタッグを組んで繰り出すのは2019年5月発売予定の『RAGE 2』です。
発売に先駆けて体験会にお招き頂き、『RAGE 2』のデモをプレイできましたので、本稿では主に戦闘パートとオープンワールドパートに注目してご紹介します。なお、今回用意されたデモは「ベータ以前のバージョン」であり、製品版に向けて内容が変更される可能性があることを予めご了承ください。
id Softwareが戦闘システムを担当
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広大なオープンワールドの開発はAvalanche Studiosが担っており、『ジャストコーズ』シリーズで培ったノウハウを活かしています。そして、id Softwareは戦闘システムやストーリー部分を担当するという、2つのスタジオによる完全協業体制で開発が進む本作。
前作『RAGE』は、記事冒頭のようにして「id Softwareの新作が出るぞ!」と大きな期待が寄せられたタイトルでした。ゲームエンジンの「id Tech 5」ではメガテクスチャと呼ばれる、描画方法の新技術が注目されたことを覚えている方もいらっしゃるのではないでしょうか?
狭いダンジョンのようなステージをクリアしていくタイプのFPSを作り続けてきたid Softwareにとっては──先のメガテクスチャも含め──オープンワールド風となった設計など、様々な面で挑戦的なタイトルだったと言えます。
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友好的な人達が住む町や、恐ろしい敵の拠点などが点在する世界を構築する上で、id Softwareはそれまであまり描くことのなかった人間関係やクエストにも挑む必要がありました。結果として、これらの要素は経験不足が露呈した形となり『RAGE』の評価は賛否の分かれることとなったのです。
2016年に発売された新生『DOOM』は、原点に立ち返ったid Softwareが強みを最大限に発揮し、最新世代FPSの先頭に相応しい作品として高い評価を獲得しました。本年発売予定の『Doom Eternal』に向けて開発に邁進しており、大きな期待を寄せられています。
『RAGE 2』がオープンワールドの流れを持つ作品であることや、『Doom Eternal』の開発が進行していることなどを考えると、今回のタッグの形の意図が見えてくるのではないでしょうか。
『DOOM』を受け継いだ「闘っている」実感のある戦闘システム
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id Softwareが助言をする形を取るといっても、同社ファンのプレイヤーが求めるものを用意できるのだろうか……といった懸念は当然のものだと思います。
筆者が受けたデモのプレイフィールから結論を言えば「2016年版『DOOM』にハマれた人ならば戦闘に没入できる」かと思います。この点においては前作『RAGE』から大きく進化しています。むしろ、感覚としては新生『DOOM』の戦闘システムにプラスアルファを施したもの、といった体験を率直に感じられるのではないでしょうか。
速めの移動スピード、高低差のある戦場と二段ジャンプ、多種の武器を素早く切り替えて戦う、四方八方から襲い来る敵、決して頑丈ではない自ヘルス、常に動き回るアグレッシブな戦闘、近接的な戦闘距離……
こうした設計のFPSは、高速で視点を回して敵の位置を把握し、攻撃を避けるため常に動き続け、間断なくこちらの攻撃を浴びせ続けるというプレイスタイルを誘発し、気が付けば画面にかじりつくかのような没入感を生み出します。
一般的な軍隊モノのFPSでは、空中で回転しながら敵の位置を把握するといった超人的な動きはあまり行いません。必然的に慎重かつ戦略的な長距離中心のプレイスタイルとなります。
『Quake』や『DOOM』を体験していないプレイヤーにとっては慣れない動きが多く、慎重すぎてしまえば攻撃の強みがほとんど活かされないまま、被弾すると簡単にやられてしまうので、結果として『RAGE 2』はハードな難度を要求されるFPSといえるでしょう。
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『DOOM』に対して「FPS狂いなプレイヤー」が遊ぶものという印象をお持ちの方もいるかもしれません。しかし、『RAGE 2』はプレイヤーに様々な能力を授けることで、プレイスタイルの幅を持たせました。
本作の主人公は、「アーク」と呼ばれる地下に埋められていたシェルターから獲得した古代の技術を利用しています。この技術により、シールドをはじめとして、高速で短距離を移動する緊急回避や、空中からエネルギーを叩きつけて周囲を吹き飛ばすなど、瞬間的に特徴ある強みを発揮できるようになりました。
もちろん全てを活用し続けようとすれば、より忙しくなってしまいます。正直なところ、筆者がプレイしている時には「そういえばこの技しばらく使ってなかった……」と忘れてしまうものが出るほど、行える攻撃手段が多く用意されているのです。
はじめのうちはこれらの特殊技能を、生き残る為の手段として防衛的に活用するのが良いと思います。戦闘と技の効果に慣れていくと、スムーズにコンボを組むようにして、段々と自分に合った攻撃的なスタイルを作り上げていけるだろうと感じました。
先日公開されたプレベータ版プレイ映像では、いくつかのシチュエーションによる戦闘場面が紹介されました。動画を見て「思ったより戦闘のテンポはおとなしめなのかな?」と思われた方はご安心ください。
体験会で実際に戦闘をこなした後にこの動画を見ると「視聴者へ技や雰囲気を丁寧に伝えるため、おとなしくゆっくりと戦っている場面だ」という印象を受けます。戦闘はもっと激しく仕掛けることも可能です。
プレイヤーのスタイルにもよりますが、筆者はPC操作におけるWキーを離さないタイプの人間なので、常にダッシュし続け、もっと高頻度に回避行動をとり、ビュンビュン飛んで、ぐるぐると視点移動していました。一般的には脳筋と呼ばれるようです。
筆者が試遊できた中では、四方八方から敵が沸いてくる忙しいステージや、大型のボスとの戦闘など、短時間ながらバリエーション豊かな体験ができました。(何度かやられてしまったものの……)それでも、慣れてしまうと主人公が強すぎるのではないかという懸念があります。アークによって得られる特殊能力は状況の打開力が高く……「ぶっぱなし」になってしまいがちなのです。
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『DOOM』では、決して楽勝ではない戦場の中でさえ「アイツらをどう料理してやろうか?」と、戦闘の流れを組み立てながら飛び回れば、血沸き肉躍る感覚に没入していきます。この感覚は『RAGE 2』でも十分に体験できるでしょう。
しかしそんな中で、地面を叩きつけて広範囲攻撃を仕掛ける「スラム」は、モーションの大きさや効果から、戦闘の流れがリセットされるほどの強さでした。とりあえずスラムしておけ!といった感じだと、マンネリ化してしまうかもしれません。
とはいえ、先の動画の中では5分05秒より「高所からのスラム」→「シールド展開」とスムーズに繋げており、その戦略の可能性が見て取れます。可能な技が増えた分、プレイヤーに託された技術の伸びしろは存外に大きそうです。
今のところ、発表された映像や体験会の中では、ほとんどが人間を相手にした戦闘であり、その強さに大きな差は感じられませんでした。ボス戦は存在するものの、敵の種類が少ないままでは、せっかくの「アーク」の技術も十分に真価を発揮できずに終わってしまうでしょう。
製品版に向けて、様々な強敵や難所が立ちはだかることを期待します!!
高速&軽快&多忙!!『RAGE 2』は真のオープンワールドへ
広大なオープンワールドを高速に移動可能としながら、軽快な動作を実現している『ジャストコーズ』シリーズのAvalanche Studiosも、id Softwareに負けず劣らずその真価を発揮しています。
前作『RAGE』では、オープンワールド風とされていたものの、ほとんどは目的地へビークルを走らせるための空間となっており、その広さの意義も強くは感じられないものでした。
また、クエストについても「NPCへ会話→クエスト受領画面→確認」と画面遷移が多く、弾薬などを売り買いするにもNPCのセリフが毎回挟まるのを待たねばならないなど、いくつかのシーンで軽快さに難点を持っていたといえます。
こうした不満点は、振り返ればid Softwareの挑戦の結果とも受け取れます。オープンワールドの滑らかさや安定度、クエスト画面表示の洗練具合や、マップの機能のわかりやすさを『RAGE 2』体験会で目の当たりにしたことで、id SoftwareがAvalanche Studiosと組むという「割り切り」の判断は正しかったのだろうと感じました。
ビークルの操作も直感的で軽快です。マップで行き先を指定しておけば、道路に黄色とピンク色の矢印が大きく描かれます。
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またオープンワールドを強く意識させられたのは、移動中に発生するランダムイベントの高い頻度です。(※体験会に向けて、高めに設定してあるとのことでした)
道中には攻略可能な拠点が大小様々に点在しており、寄り道も含めて、ランダムイベントにまで手を出していると、クエストは全然進まないだろうなという感触です。悪党が数人で誰かを襲っている場面や、追いはぎから必死に逃げている商隊のカーチェイス、謎の飛行物体から投下される武装集団など、その種類も様々でした。
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体験会での設定では、街の拠点からビークルで数分の地点にあるクエストへ向かう間に、3~4件のランダムイベントに出くわしました。退屈な移動を刺激的なものにする様々な工夫が仕掛けられているようです。
そうした密度で彩られているオープンワールドは、担当者によればPS4 ProおよびXbox One X版では60FPS固定、PC版はフレームレートの制限なく描画されるとのこと。戦闘部分と共に高い安定性を持った描画は、そのプレイフィールを損ねることはないでしょう。
筆者が特に気に入ったのは、小さな拠点を制圧した時の「リザルト表示」でした。敵の最後の一人を倒したまさにその瞬間、画面の中央にバシッと戦利品などの情報が表示され、しかもそれは画面遷移を挟まずプレイヤーの操作を一切止めなかったのです。
id Softwareが得意とする『DOOM』的興奮の没入を損ねることのないよう、こまかく調整されたユーザーインターフェースだと感じました。敵を倒したのならば、考えるべきことはただひとつ──「次は誰だ?」
ストーリーの壁を越えられるか
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残念ながら前作『RAGE』は、ストーリーや設定に明かされない部分が多く、物語の部分で厳しい評価となってしまいました。
ひたすら敵を倒して突き進むFPSにストーリーなど不要……などというつもりはありませんが、そうした面が(特にid Softwareの作品群は)過去にあったことは否めません。
『Halo』で有名なBungieが制作した『Marathon』(1994)は、FPS駆け出しの時代にも拘わらず、宇宙規模の設定や自我を持つ複数のAIとの駆け引きなどを読みながら楽しめました。『Halo』では『Marathon』のロゴが登場するなど、知っている人をニヤリとさせていたのです。
Respawn Entertainmentの『Titanfall2』では巨大ロボとのバディものという熱いストーリーが描かれました。Irrational Gamesの『Bioshock』ではFPSの視点で主人公を操作することを利用したギミックがストーリーの大きな転換点として作用していました。
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id Softwareは本当にそうした演出が苦手なのでしょうか。答えはNoです。新生『DOOM』にも、緻密な設定が盛り込まれているのです。FPSだからこそ、自らの意思でそれらを読み込む面白さがあります。主人公がどれだけ地獄のデーモン達に恐れられているのかが語られる演出は一種のカタルシスでした。
暴虐と突進こそがこうしたFPSの魅力といった面もあるのかもしれません。しかし、その代表格とも言えそうな新生『DOOM』にも、VEGAというAIの存在が逆説的に人間らしい感動を与えてくれる場面があるのです。(戦闘狂であるはずの主人公が取った一瞬の行動で、筆者はちょっと泣いてしまいました……)
『RAGE』シリーズは、まだまだ語られていない要素を多く持っているので、設定の可能性を大きく含んだタイトルだと思います。体験会では短い部分しか確認できなかったので、この点に関してはただただ期待するしかありません。読み込むほどに「そうだったのか!」と発見の喜びを得られるような舞台となるのか……発売までの数か月間、腰を据えて待ち続けましょう!
『RAGE 2』海外公式では、PC/Playstation4/Xbox One向けに2019年5月14日の発売が予定されています。担当者によれば、音声・テキストともに日本語にフルローカライズし、ほぼ同時期の発売を目指しているとのことです。