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「中華ゲーム見聞録」第64回目は、トップクラスのハッカーである主人公が、この世に存在しない架空の人物を作製し育成するアドベンチャーゲーム『妄想ブロークン(妄想破綻)』をお届けします。
本作は宅極電が開発し、中国の動画配信サイト「ビリビリ動画」でおなじみのbilibiliによって11月27日にSteamと海外PS4で配信されました。科学が発達し、「分子再構築技術」が発明された近未来が舞台。物質を分子分解し、他の物体に変えることができるという、錬金術のような画期的なテクノロジーです。
主人公は分子再構築技術によって造られた都市に住む高校二年生。実は凄腕のハッカーで、あるとき架空の人物をネット上に作り上げ、実存の人物のように仕立て上げます。しかしそれが事件への引き金となっていきます。
本作の内容ですが、選択肢を選んで物語を展開させていくアドベンチャーゲームです。また主人公の作製した架空の人物に、様々な個人データを付与して育成していくという要素があるとのこと。いったいどんなゲームなのか、さっそくプレイしていきましょう。
スーパーハッカーな主人公
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ゲームを起動してしばらくすると、日本語の主題歌と共にムービーが流れます。本作は音声を日本語にすることもできますが、残念ながら日本語字幕はありません。リリース直前でSteamから日本語対応表記が無くなった形ですが、開発元によれば、翻訳が未完成であったためとして、後日正式に日本語が実装されるとしています。
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物語は主人公の部屋から始まります。主人公は新建市でひとり暮らししている高校二年生で、夜な夜なネットの世界でハッカーとして活躍しています。そのことで毎日夜更かししてしまい、朝起きて学校に行くのがつらいという状況に。
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この日も起きられず、「遅刻だ!」と慌てて部屋を飛び出す主人公。公園の向こうにあるのが主人公の通う「新建市ZiL-489国立高校」です。2Dのイラストですが、公園の噴水が立体的に動いているのが面白いですね。
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公園をまっすぐ抜けて行けば10分で学校に着くのですが、都市の区画調整で公園のまわりに壁が出来てしまったため、遠回りしなくてはならなくなりました。このままでは遅刻してしまいます。
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しかし主人公はスーパーハッカー。分子再構成で作られたこの壁をハッキングし、近道を作ってしまおうと考えました。ここで調査モードに入ります。照準を動かして壁の綻びを探し、そこからハッキング開始です。
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ハッキングモードに入ると、ミニゲームが始まります。パックマンの敵キャラのようなものが主人公の操作機体。左から迫ってくるファイアウォールに追いつかれないよう、右へと進んでいきます。スペースキーを押して進むラインを変更して障害物をかわしつつ、ゴールを目指しましょう。ゲームオーバーになってもやり直しができますし、どうしてもクリアできない場合はスキップも可能。本作には他にも様々な種類のミニゲームが用意されています。
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学校に入るときにIDチェックが行われます。ここで主人公の性別や名前を聞かれますので、入力していきましょう。こういうキャラクターメイクの導入の仕方は良いですね。性別は男、名前はいつものように「GameSpa」にしておきました。
クラスメイトとの交流
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ゲムスパのクラスは2年E組。教室に入ると、クラス委員長の「源琉璃」が話しかけてきました。名前が日本人っぽいので、日本語での読みは「みなもとるり」でしょうか。ちなみに日本語音声でプレイしているので、日本人声優による音声です(CV:尾崎真実)。
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琉璃は困っている人を見捨てることができない性格で、よく朝食を抜いてくるゲムスパのために弁当を用意してくれていました。というのも、ひとり暮らしのゲムスパの食生活はかなり適当で、以前教室で、貧血で倒れてしまったこともあったからです。ありがたく弁当を受け取りましょう。琉璃は去り際にクッキーもくれました。他のクラスメイトにも配っているようです。
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次に現れたのは「柴柴」という少女(CV:豊田萌絵)。日本語音声で聴くと、自分のことを「ササ」と呼んでいました。甘い物が好きで、先ほど琉璃からもらったクッキーに犬型のものがあるらしく、「もし柴犬のがあったらちょうだい。代わりにアイスをおごってあげる」と言ってきました。
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主人公は甘い物自体に興味がないようで、先ほどもらったクッキーをよく見ていませんでした。調べてみると、中には柴犬のクッキーがあります。柴柴にクッキーをあげると、大喜びで去っていきました。
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授業中はほぼ寝ていたゲムスパ。午前の授業が終わると移動モードになりました。行きたいところを選択できるようですが、現時点では公園の噴水前しか選べません。とりあえずそこへ行ってみましょう。
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噴水前にいたのは病弱そうな少女……かと思ったら少年でした。ゲムスパのクラスメイトで、「白却」と言います(CV:筆村栄心)。日本語音声では琉璃が彼のことを「ジュン」と呼んでいました。授業には出ず、クラスに友達もいないようです。声をかけても無視されました。
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突然倒れる白却。どうやら気を失っているようです。急いで保健室へ連れていきましょう。ゲムスパも力があるほうではないのですが、白却は体重がかなり軽いので背負っていくことができました。
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保健室で目を覚ました白却。よくあることのようで、保健室の先生も扱いに慣れていました。白却は昼食をとっていないようです。ここで本作初の選択肢が出現したので、「自分の昼食を与える」を選択。しかし白却は受け取りません。
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放課後、柴柴が「アイスをおごるからPuddingへ行こう」と言います。Puddingとはスイーツ店のことで、周年記念抽選会の最終日が今日なのだとか。当選した3名は、一年間無制限でスイーツ食べ放題になるそうです。甘い物好きの柴柴は、「もし当たったらPuddingに住み込む」と言っています。
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柴柴に付き合わず、さっさと帰宅してハッカー業にいそしむゲムスパ。夜10時、柴柴から電話がかかってきました。Puddingの店内にいて、夜12時に発表される抽選結果を待っているとのこと。あまり遅くならないよう注意しておきました。
架空の人物を作製
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抽選は、店で食事をした客の履歴からランダムで3人選ばれるので、すでに結果が出ている可能性があります。先に結果を見てやろうと思ったゲムスパは、店のデータベースへの侵入を試みます。
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ここでまたハッキングのミニゲームです。スペースキーを押すと地面が跳ねるので、それでボールを打ち返して所定数の三角マークを取っていきます。制限時間もあるので急がなければなりません。時計マークを取ると制限時間が伸びます。
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侵入に成功。当選者の3名の中に、柴柴の名前はありませんでした。柴柴を不憫に思ったゲムスパは、当選者の名前を消して柴柴の名前に書き換えようとしましたが、思いとどまりました。そのあと、当選者の名前を戻そうとしたのですが、すぐに消してしまったため、名前を覚えていません。どうにもならないので適当な名前を入力することにします。「TodoMaru」にしようとしたのですが文字数オーバーだったので「SpaKun」にしました。
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翌日、学校へ行く途中、柴柴から抽選に落ちたとのメッセージが届きました。「次、頑張ればいい」と返信しておきます。本作ではこのメッセージ欄に、ハッカーとしてのゲムスパ宛に依頼が届くこともあります。受ける受けないはプレイヤー次第です。
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SpaKunという名前で店のデータを書き換えたゲムスパ。もしSpaKunに様々な個人データを与えれば、実在の人物として存在させられるのではないかと考え始めました。ネット社会が進むと、本人よりも個人データの方が信用できるようになってきたりしますからね。ここでSpakunの性別とタイプを選択します。性別を男にすると、温和タイプと孤高タイプのどちらかを選ぶことになります。カラー的に左を選択しましょう。
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AIを駆使してSpaKunに架空の個人データや友人、SNSでの書き込みをすべて用意します。さらにSpaKunの弟が自殺したという事件も用意し、世間の注目を集めさせます。裏を取っても大丈夫なように、各種データも書き換えていきます。
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そして物語が完成。Spakunは孤児で、とある家に養子としてもらわれました。しかし、その家にはSpaKunより小さな子どもがいて、両目が見えません。幼い子は義眼の手術に耐えられないため、SpaKunの両目を移植することになりました。SpaKunは代わりに義眼を入れられましたが、元の目よりも視力は悪く、日によっては痛むこともあるという、あまりにヘビー過ぎる生い立ちに。しかも義弟は罪悪感から自殺してしまいました。
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義弟の自殺事件をニュース記事の上位に上げ、SpaKunの生い立ちを架空の友人によってSNSで発表させたところ、世間が食いついてきました。「その両親を晒し上げろ!」と言い出す人たちも登場し、SpaKunは話題の人物となっていきます。
育成では「人物設定を強化」「SNSでコメントを出させる」「他のアカウントと交流させる」「他人のアカウントの発言改ざん」などを行い、あたかもSpaKunが本当に存在しているかのように仕立てあげていきます。コマンドは行動点が尽きるまで実行可能。しかしこのイタズラが、あとで予期せぬ結果に……。この続きはぜひとも自身の目で確かめてみてください。
異なるストーリーとマルチエンディングのADV
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本作は選択した架空の人物によって物語も変わってきます。またマルチエンディング方式にもなっているので、周回プレイをする必要があります。女性を選ぶと画像のようにアイドルタイプ(左)と武道タイプ(右)が選べます。ちなみに武道タイプの日本語音声は、『Bright Memory』日本語版の主人公の声優を務めた石川由依さんです(アイドルタイプは佐倉綾音さん)。
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本作では本筋のストーリー以外に、ハッカーとして依頼を受け事件を解決するサブストーリーも用意されています。サブストーリーにしか登場しないキャラクターもいるため、余裕があれば受けておくのもいいでしょう。本作はニンテンドースイッチ版の配信も予定されていますので、今後の日本語版の配信を期待したいと思います。
製品情報
『妄想ブロークン』
開発・販売:宅極電、bilibili
対象OS:Windows
通常価格:720円
サポート言語:中国語(簡体字)、日本語(音声のみ)
Steamストアページ:https://store.steampowered.com/app/1108320/_Broken_Delusion/
※本記事で用いているゲームタイトルや固有名詞の一部は、技術的な制限により、簡体字を日本の漢字に置き換えています。
■筆者紹介:渡辺仙州 主に中国ものを書いている作家。人生の理念は「知られていない面白いもの」を発掘・提供すること。歴史・シミュレーションゲーム・ボードゲーム好きで、ブログ「マイナーな戦略ゲーム研究所」を運営中。著書に「三国志」「封神演義」「封魔鬼譚」(偕成社)、「文学少年と運命の書」(ポプラ社)、「三国志博奕伝」(文春文庫)など。Twitterはこちら。