
ROG Flow Z13は、 2022年2月17日にASUSから発表された2-in-1型のゲーミングノートPCです。
取り外し可能なキーボード型カバーを備えたタブレットにもなる2-in-1ですが、単体で3Dゲームをプレイできるゲーミング性能を備えているのが大きな特徴です。さらに、専用のeGPUユニット「XG Mobile」を接続すれば『バトルフィールド 2042』や『Microsoft Flight Simulator』などの重量級ゲームも楽しむことができます。
今回は、インテル Core i9とNVIDIA GeForce RTX 3050 Ti LaptopおよびフルHD 120Hz液晶を搭載したモデル(GZ301ZE-I9R3050TE)と、NVIDIA GeForce RTX 3080 Laptopを搭載したXG Mobile(GC31S-026)を評価機としてお借りすることができました。
実際に重量級ゲームをプレイしてみた使用感をお伝えするとともに、現時点で最強クラスのCPUとiGPU、dGPU、eGPUという3種のGPUを組み合わせたベンチマークテストで、既存のノートPCやゲーミングデスクトップPCとの比較もしてみました。
2021年版から外観も中身も全面刷新
「ROG Flow Z13」は2-in-1PCのスタンダートとも言えるマイクロソフトの「Surface Pro」に似たコンパクトな外観となっていますが、ゲーミングPCとしてさまざまなチューニングが施され、強力な外付けGPUもオプションで用意されています。
ASUSのゲーミングPCブランドである「ROG」(Republic Of Gamers=ゲーマー共和国)の2-in-1型ノートPCとしては、2021年に発売された「ROG Flow X13」もあります。こちらは液晶部分が360度回転してタブレット型になる2-in-1で、CPUにはAMD Ryzen 9を採用。今回のZ13とは同じ2-in-1といっても完全に別物です。なお360度液晶回転型は、「ROG Flow X13(2022)」として、継続販売されます。
さらにZ13を始めとする2022年新発売の3モデルはMUXスイッチ、液体金属グリス、ベイパーチャンバーなど、さまざまな新技術が投入されており、ゲーミングPCとしての基本性能が大きくアップデートされています。これについては、後ほど詳しく述べます。


ハイエンドから普及価格まで4種の基本スペック
まず、「ROG Flow Z13」シリーズのスペックを確認しておきましょう。最上位のCore i9モデルから普及価格のCore i5モデルまで、ハードウェアの仕様では4つに分かれています。
ここでは便宜上、CPU内蔵CPUを「iGPU」(インターナルGPU)、ノートPCの基盤上に搭載された独立したGPUを「dGPU」(ディスクリートGPU)、ケーブルで接続する別筐体のGPUを「eGPU」(エクスターナルGPU)と記載していきます。
4つのうち、上位2機種はCore i9とGeforce RTX 3050 Ti Laptopを搭載しており、主な違いは液晶の解像度とリフレッシュレートになっています。今回評価する「GZ301ZE-I9R3050TE」(型番)は、1,920×1,200ドットの解像度で、120Hzのリフレッシュレートの液晶を採用した、ゲーミング用途に向いた製品です。
もう一方の「GZ301ZE-I9R3050TE4K」(型番)は、3,840×2,400ドット、60Hzの液晶を搭載したゲーミング用途と供にクリエイティブ用途も意識したと思われる製品です。この2つは型番は異なりますが、製品名は同じ「ROG Flow Z13 GZ301ZE」となっています。
製品ラインナップ上のミドルレンジに位置する「ROG Flow Z13 GZ301ZC」(型番:GZ301ZC-I7R3050)は、CPUにCore i7-12700H、dGPUにGeForce RTX 3050 Laptop、液晶に1,920×1,200ドット 120Hzを搭載しています。
ローエンドの普及品となる「ROG Flow Z13 GZ301ZA」(型番:GZ301ZA-I5UMA)は、CPUにCore i5-12500H、液晶に1,920×1,200ドット 120Hzを搭載。dGPUは搭載しておらず、iGPUのインテルIris Xeのみとなります。
主なスペックを下記にまとめました。
製品名:ROG Flow Z13 GZ301ZE 型番:GZ301ZE-I9R3050TE4K
CPU:Intel Core i9-12900H
iGPU:Iris Xe
dGPU:NVIDIA GeForce RTX 3050 Ti / VRAM 4GB
液晶ディスプレイ:3,840×2,420ドット、60Hz
メモリ:16GB(LPDDR5-5200)
SSD:1TB(PCI Express 4.0 x4接続)
重量:タブレット約1.18kg、カバー型キーボード:約340g
価格:269,800円(税込み)
製品名:ROG Flow Z13 GZ301ZE 型番:GZ301ZE-I9R3050TE
CPU:Core i9-12900H
iGPU:Iris Xe
dGPU:NVIDIA GeForce RTX 3050 Ti / VRAM 4GB
メモリ:16GB(LPDDR5-5200)
液晶ディスプレイ:1,920×1,200ドット、120Hz
SSD:1TB(PCI Express 4.0 x4接続)
重量:タブレット約1.18kg、カバー型キーボード:約340g
価格:254,800円(税込み)
製品名:ROG Flow Z13 GZ301ZC 型番:GZ301ZC-I7R3050
CPU:Core i7-12700H
iGPU:Iris Xe
dGPU:NVIDIA GeForce RTX 3050 / VRAM 4GB
メモリ:16GB(LPDDR5-5200)
液晶ディスプレイ:1,920×1,200ドット、120Hz
SSD:512GB(PCI Express 4.0 x4接続)
重量:タブレット約1.18kg、カバー型キーボード:約340g
価格:239,800円(税込み)
製品名:ROG Flow Z13 GZ301ZA 型番:GZ301ZA-I5UMA
CPU:Core i5-12500H
iGPU:Iris Xe(CPU内蔵)
dGPU:なし
メモリ:16GB(LPDDR5-5200)
液晶ディスプレイ:1,920×1,200ドット、120Hz
SSD:512GB(PCI Express 4.0 x4接続)
重量:タブレット約1.12kg、カバー型キーボード:約340g
価格:199,800円(税込み)
メモリはすべてLPDDR5-5200、SSDはPCI Express x4接続で、現状で最も高速な規格を採用しています。
X13(2021年版)は、すべての型番でAMD Ryzen 9 5900HSを搭載し、GPUの種類(RTX 3050 TiとGTX 1650)、メモリ搭載量(32GBと16GB)、SSDの容量(1TBと512GB)で差別化していました。今回のZ13は、メモリはすべて16GBで拡張不可となり、CPUはCore i9からCore i5まで広がり、Core i5モデルはiGPUのみとなっています。
メモリが16GB統一となったのはグローバルモデルとして仕様の統一が必要だったからとのことで、もっとも需要の多い16GBになったそうです。
Core i5モデルにdGPUがないのは、価格を抑えるためとのことです。dGPUを搭載しないPCを「ゲーミングPC」と呼ぶべきかという指摘もありそうですが、キーボードは全モデルNキーロールオーバーのゲーミング仕様であり、インテルの第11世代以降のCore iシリーズに搭載されているiGPUである「Iris Xe Graphics」は、1920×1080ドットで60fpsを実現する性能があるとされ、第12世代でも大幅に強化されています。
液晶ディスプレイは3,840×2,400ドットもしくは、1,920×1,200ドットの縦横比16:10で、従来一般的だった1,920×1,080ドットなどの縦横比16:9よりも、やや縦長となっています。映画など16:9の動画再生時には縦に空きができてやや無駄になりますが、ゲームにおいては、フルスクリーン状態でより遠くが見えるなどのメリットが考えられますし、事務作業やクリエイティブ作業でも16:10の方が作業しやすく生産性が高いという理由から、他社製品でも16:10のディスプレイを採用する例が増えています。
今回使用した1,920×1,200ドットモデルのリフレッシュレートは120Hzです。秒間120回、0.0083秒に1回画面を書き換えるわけで、ROGの他のモデルでは300Hz、360Hzという性能のものもありますが、一般のゲーマーが遊ぶには120Hzでも十分なスペックではないでしょうか。
明るさ500nits、コントラスト1000:1などのスペックもあり、実際にゲームをしていて不満を感じることのない明るく見やすいディスプレイだとは感じました。
この液晶ディスプレイはタッチパネルとなっており、キーボードを外せばタブレットPCとして使用できますし、後述しますが、ASUS Penなどのスタイラスペンを使用することもできます。
専用eGPU兼ドック「ROG XG Mobile」でパワーアップ

ROG Flowシリーズのもうひとつの魅力は専用eGPU兼ドックである「ROG XG Mobile」の存在です。ここで紹介するXG Mobileは、主に2021年に発売された製品についての話になりますが、発売が予告されている2022年の新製品に共通する話題も多いので、改めて特徴を確認していきます。
「eGPU」とは、ケーブル接続で外付けできるGPUで、PCのゲーミング性能やクリエイティブ性能を向上できるターボチャージャーのようなものです。一般的なeGPUは、Thunderbolt3のケーブル1本で接続します。これは手軽ではありますが、Thunderbolt3は16GbpsというPCIe接続時の転送速度がボトルネックになります。仮にThunderbolt4対応のeGPUがあっても、PCIe接続時の転送速度は32Gbpsです(出典:Introducing Thunderbolt 4: Universal Cable Connectivity for Everyone | Intel Newsroom)。
ASUSは「ROG XG Mobile」を「外付けグラフィックスデバイス」としていますが、用途的にはeGPUと言って問題ないでしょう。一般的なeGPUとの違いは、Thunderbolt3ではなく、PCIe 3.0x8(理論値64Gbps/実効値63Gbps)の専用ケーブルで接続することです。理論値では4倍なので、高性能なGPUの性能をより活かしやすくなっています。

現在、XG Mobileには以下の2つのラインナップがあります。
製品名:GC31S-026
GPU:NVIDIA GeForce RTX 3080 Laptop GPU
ビデオメモリ:16GB
価格:188,800円(税込み)
製品名:GC31R-026
GPU:NVIDIA GeForce RTX 3070 Laptop GPU
ビデオメモリ:8GB
価格:149,800円(税込み)
一般的なeGPUはちょっとしたデスクトップPCに近い大きさがあり、放熱や音の問題でも導入のハードルが高いものでした。
XG Mobileは幅208mm×奥行き155mm×高さ29.6mmのコンパクトサイズで、Z13やX13本体に電力を供給するACアダプターとしても使えます。さらにHDMI、DisplayPortのビデオ出力に加えて1000BASET-XのLANポート×1、USB3.2 TypeAポート×4、SDXCメモリーカードスロットx1を備えているため、いわゆる外付けドックとしても利用できます。

XG Mobileに最大2台のモニタとキーボード、マウス、ゲームコントローラーなどを繋げておき、外出から帰ったらケーブル1本でZ13に接続してデスクトップマシンとして使う、といったライフスタイルやワークスタイルが可能になります。
XG Mobileに接続した外部モニタに加えて本体のタッチパネル液晶、さらにThunderbolt4 / USB Type-Cコネクタにも外部モニタを接続可能なので、最大4台のディスプレイを同時に使用できます。

これに加えて2022年にはAMD Radeon RXシリーズを搭載した「ROG XG Mobie GC32」の発売が予告されました。資料には、「USB Type-A×4、DisplayPort 1.4×1、HDMI 2.1×1、2.5GBASE-T対応のLANポート×1を搭載」とあり、GPU以外もアップデートされるようです。
搭載されるRadeon RXは、事前に行われた内覧会の資料では「AMD Radeon RX 6850M XT」となっていました。RX 6850M XTは2022年1月のCES2022でAMDが発表した最新のノートPC用GPUです。メモリバス幅は192bitで最大VRAMサイズは12GB、最大メモリ帯域幅は432GB/秒。
XG MobileのGC31S-026に搭載されているRTX 3080 Laptopは、メモリバス幅256bitで16GBのVRAM容量を保持しており、今回借りたZ13に搭載されたNVIDIAのコントロールパネルで見ると最大メモリバンド幅は448.06GB/秒となっています。これだけ見ると新製品のGC32は、現行のGC31S-026よりGPUスペック面で劣る可能性がありますが、ASUS広報に問い合わせたところ、「下位機種ではない」という回答でした。
2月17日時点の正式な発表資料では、「AMD Radeon RXシリーズ」とあるだけで、「RX 6850M XT」という具体的な記述はないため、実際の製品がどうなるかはまだわかりません。正式な発表を楽しみにしましょう。
XG Mobileも本体に劣らず、ゲーミングPCの周辺機器らしく、内部でランプが赤く光ったり、ロゴのレリーフなど、カッコ良くデザインされています。



※UPDATE(2022/02/24 22:27):本文中の誤字を修正しました。コメントでのご指摘ありがとうございます。