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グランゼーラ開発のサイドビューシューティングゲーム『R-TYPE FINAL 2』の登場機体である「R-9A ARROW-HEAD(アロー・ヘッド)」をキット化した、2022年5月発売のピーエムオフィスエー1/100「R-9A[ARROW-HEAD]Ver.R-TYPE FINAL 2」のプラモデルをレビューします。
ピーエムオフィスエーは過去に、前作『R-TYPE FINAL』版の1/100「R-9A アローヘッド」をリリースしていますが、今回のキットは2021年発売の『R-TYPE FINAL 2』をベースにしているためR-9A本体そのものは新規設計です。なお、前作版1/100「R-9A アロー・ヘッド」は、オープニングやパッケージで描かれた機体をベースとしているために、ゲーム内モデルと大きく異なります。
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巨大な箱からわかる1/100 R-9Aの大きさと緻密さ
1/100 R-9Aはパッケージからして大きめ(ガンプラで例えればマスターグレードに近いサイズ)で、内部に入っているランナーも18枚と多量です。デカールなどは同梱されていませんが、組立説明書には塗装のカラーガイドや機体、ゲーム本編の解説、パーツリストが記載されています。
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組立順はコックピットの機首部分から、本体中央→上部→下部→左右のユニットという構成。本キットは、基本的に色分割されたパーツを組み合わせるスナップフィットのキットですが、一部パーツに対して接着剤が必要です。他にも、組説の注意アイコンは小さめで所々注視する必要があるのが気になるところ(接着剤が必要なことについても、巻末のパーツリスト側に記載されているため見落としやすい)。
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接着剤を使う箇所は主に後部のアンテナ部分を構成するパーツに対してですが、パーツが小さく難易度は高めです(どうしても手で表面を汚しそうになるためにピンセットは必須)。他にも、ほとんどのパーツはアンダーゲートとなっているため、組立時のゲート処理も多めでした。当然のことながらフォルムも飛行機プラモデルと異なり、組み立てるパーツ量やディテールの細かさなど多ユニットで構成される宇宙船を意識した作りとなっています。
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組み上げた本体を手に取ってみると、1/100というサイズを感じさせるような少し手からはみ出るような大きさです。フォースは半球のクリアパーツを二つ組み合わせて、4本のコントロールロッドを組み立てると完成。フォースも1/100 R-9Aとほぼ同じぐらいのサイズでした。またキットにはランディングギアが無い為に(『R-TYPE FINAL 2』版のR9-Aにその設定があるのか自体が不明瞭)、付属のスタンドを用いて飾ります。
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大きすぎず小さすぎない絶妙な1/100というスケール
1/100 R-9Aは、目立つ合わせ目もなく、『R-TYPE FINAL 2』本編からそのまま出てきたようなフォルムで、全体的なプロポーションの良さに驚きます。また少々やり過ぎと思えるような色分割で構成されているために、素組みのまま飾っても見劣りしません。特にキャノピーのクリアパーツはパーティングラインが表れておらず、そのまま取り付けても綺麗なのが素晴らしいです。
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フォースはR-9A本体とスタンド同士を合わせることで合体を表現。また、後方のフィンがフォースの球体と干渉してしまうため、中心から少しずらす無理矢理な配置ですが機体後方に置くこともできます。
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前回制作した『グラディウスV』版1/144ビックバイパーと並べて見ると、スケールの違いがあるとはいえ、R-9Aがフォース分大きいように見えます。
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フォースの他に、ビットが付属していないことがどことなく物足りなさを感じますが、フォルムの良さや全体のボリュームを含めて、R-9Aの造型そのものもモチーフをよく捉えていて、素組みのまま飾っていても満足感を得られるキットであることは確かでしょう。次は、いよいよ全体塗装に移ります。
『R-TYPE』2周目のように、もう一度組立順を追って塗装
本キットを組んでいた時も塗装の事は考えていましたが、パーツ構成から白パーツのみ、グレーパーツのみで塗装をするのが困難で、シンプルに作業を進めることの難しさが見え隠れしていました。
時間を短縮することを考えても、他の航空機キットのような表面/裏面の2面構造ではないために、結果時間が掛かるように思えたのです。そのため、組立順をもう一度追って塗装することにしました。塗装を開始してから気付いたのですが、まるで難易度が上がる『R-TYPE』本編二周目のようでした。
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必要最小限までパーツを分解し、目立つ合わせ目にパテを持って消して行きます。特に目立つのが、コックピットとフォースのコントロールロッド、そして左右のユニット部です。
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塗料はカラーガイドや『R-TYPE FINAL 2』でのR博物館で見られる3Dモデルを参考にしつつ下地はグレーサフにシャドウ吹きをブラック、白をC316に、明るいグレーをクレオスのC336に、機体の配管はGXメタルパープルに、機体内部など暗いグレーをガイアのメカサフHに、エンジンノズル外周はEXシルバーに、ダークイエロー部分はタミヤのX-31チタンゴールドに、赤はレッドC327にそれぞれ割り当てています。
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コックピットから上部→中央→下部の順で塗装。左右のユニットとエンジン部、コントロールロッドは一部合わせ目があることから、それらをラッカーパテで合わせ目を消して塗装しました。全てを塗装し終えたら、細部をスミ入れブラックでパネルラインを強調します。
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今回の塗装は、全てを一度に塗れるわけではないので、工数が倍に増え(塗料を変える時のエアブラシの洗浄を挟まなければならないため)予想以上に時間が掛かってしまいました。しかしながら、パイロットを含めた部分塗装と塗装後のスミ入れを終えて、完成した時の感動は大きいものでした。
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まるで生き物のように見えた完全塗装の1/100 R-9A
完全塗装を施した1/100 R-9Aを見てみましょう。PLUMの1/100 R-9Aは、パッケージに映されているR-9Aをベースにしているため、『R-TYPE FINAL 2』のゲーム内で見えるR-9Aと微妙に細部のモデリングが異なっています。それでもゲーム内モデルとほぼ同じフォルムを持っていることからUE4でレンダリングされたモデルがそのまま現実に表れたようにも見えてきます。
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初めて素組みの完成品を見たときは宇宙船としての印象が強かったのですが、塗装を終え、アンテナ部分に赤が増えたことや機体上部の曲線から甲殻類に近い生き物みたいな印象が生まれました。生物的なバイド機でないはずなのに、生き物に近づいているような奇妙な感覚です。
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改めてフォースと合体してみましょう。クリアパーツであるフォース本体はそのままですが、コントロールロッドに赤ラインが入ったことにより存在感が増しました。より一体感を持ったうえでディスプレイ出来るのはとても魅力的です。一方で個体差かもしれませんが、重量の問題かR-9A側の展示ベースが姿勢を保持仕切れず右や左へ傾いてしまうことも時々あり、展示ベースの限界が見え隠れしているようにも思えます。
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他にも素組み時と同じように他のシューティングゲームを題材としたキットと並べてみました。コックピットやエンジン部分に注目してみると1/100スケール故に少しばかり拡張されたように感じますが、フォルムが丸く曲線が多いR-9Aが他タイトルのプレイヤー機と異なる存在感を放っているのが解ります。
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1/100というスケールを再評価できるPLUM「R-9Aアロー・ヘッド」―立体物を手に取って思う『R-TYPE FINAL 2』の当たり判定
PLUM1/100「R-9A アロー・ヘッド」は、前作『R-TYPE FINAL』版R-9Aより色分割や造型そのものが進歩し、『R-TYPE FINAL 2』ゲーム内で見るモデルを表現できているプラモデルです。パーツを切り出して素の状態のまま組み立てても良いですし、塗装など手間をかければそれに応じたクオリティに到達してくれます。
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また1/100というスケールは、一般的な航空機プラモデル(1/72や1/144など)のスケールと異なるために忌避されがちですが、サイズだけに注目すると全長約15cm(フォースを含めると全長約25cm)と、大きくも小さくもない戦闘機にとって絶妙なバランスで成り立っていることがわかるスケールであると思えました。
一方で、組立時に接着剤を推奨していることについてパッケージや説明書でのアピール不足であることや、組説における注意アイコンが小さいこと、『R-TYPE FINAL 2』ゲーム内にあるようなデカールが付属していないこと、上下に接続を間違えてしまう差し込みピンの物理的な形状など、今一歩ブラッシュアップ仕切れていないと思える部分もあります。
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ところで本キットは再三に渡って書いているように『R-TYPE FINAL 2』からの立体化なのですが、胴体中央を作っている時にふと同作で取り沙汰されやすい「当たり判定」について考えてしまいました。
この1/100 R-9Aのフォースはゲーム内モデルに比べると若干小さく感じるサイズですが、ゲームの方で比較してみれば、初代『R-TYPE』においてフォースに対して機体が小さいのに対し、『R-TYPE FINAL 2』では機体側が大きく均等ぐらいになっているのがわかります。
『R-TYPE FINAL 2』におけるR-9Aの当たり判定はコックピット後方より少し下の小さな正方形らしく、位置的に胴体側でありません。『R-TYPE FINAL 2』の当たり判定が大きいと指摘されたのは、フォースより機体の3Dモデルが大きいことで、当たり判定を解釈する位置が各々バラバラだったからと思えてきます。ゲーム本編についてこういった考えを巡らせる切っ掛けになるのも、ゲーム系プラモデルならではです。
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PLUMの1/100「R-9A[ARROW-HEAD]Ver.R-TYPE FINAL 2」は、7,480円(税込み)とフルプライスのゲームタイトルに近い価格でハードルがそこそこ高めですが、R-9Aの造型の良さやフォースを合わせた時のボリューム感だけでなく、サイズもそこそこ大きく価格に見合ったクオリティを持つキットです。
・ゲームからそのまま出てきたようなR-9Aの造型
・高い価格なもののフォースも付属しボリューム感もある
・徹底した色分割によって素組みでも見劣りしない見た目
・1/100スケールから満足出来るサイズ感
悪い点
・R-9Aが大きく重いためスタンドの長期的な保持力に不安
・組立ページの注意アイコンが小さい、接着剤必須なことが最初にアピールされていない