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2023年4月7日、D4エンタープライズより『魔導物語 超きゅ~きょく大全 ぷよぷよ入り』が発売されました。『魔導物語』シリーズは1989年より主にコンパイルが発売していたダンジョンRPGシリーズで、『ぷよぷよ』シリーズの元になった作品としても知られています。
筆者はダンジョンRPGに興味がありましたが、同ジャンルの柱の一つと言える「キャラクターメイキング」の面白さはまだ理解できておらず、ハードルが高く感じていました……。そんな中、この『魔導物語 超きゅ~きょく大全 ぷよぷよ入り』が発売するという情報を耳に。そこで思ったのです、『魔導物語』シリーズはプレイヤーキャラクターが固定なので、ダンジョンRPGをはじめるのにはぴったりなのでは……と。そこで、25,600円とやや高価ですが『魔導物語』シリーズだけでなく『ぷよぷよ』やシリーズ関連作品計42作品を前に、迷わず購入を決意しました。
本稿では、収録作の中から3作品をピックアップしてプレイレポをお届け。パッケージに収録されている同梱物も紹介しています。
『魔導物語 1-2-3』(PC-9801版)
『魔導物語』シリーズの中核となる3つのエピソードが収録されていて、本パッケージの購入の大きな目的のひとつでもあったのが、この『魔導物語 1-2-3』です。ちなみに読み方は「まどうものがたり いっちょうめにばんちさんごう」。エピソード1は主人公のアルル・ナジャが卒園試験のため、モンスターがはびこる「魔導の塔」と呼ばれるダンジョンに挑むというストーリーです。
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ダンジョンRPGであるため、探索は1人称視点です。次の一歩に何があるかわからないハラハラ感と、お宝や階段を見つけたときの嬉しさは魅力ですね。反対に、うっかり強敵に出くわしたときは肝を冷やします……。
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戦闘はターンベースのコマンド制。基本の魔法は「ファイアー」と「アイスストーム」の2つ。ぷよぷよは寒さに弱いのでアイスストームで凍らせる、人狼は燃えやすいのでファイアーで燃やすという具合に戦略を練ることが可能。どの魔法が有効なのか、手探りしていくのも楽しいです。
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とはいえ、卒園試験の塔というだけあってどの敵も一筋縄ではいきません。ダンジョン内のショップでHPや魔導力(MP)を回復するアイテムを購入し、強敵との戦闘に備える必要があります。特徴的な点として、「ファジーパラメータ」システムが挙げられます。普通のRPGであれば「HP:100 MP:50」だとか、「10のダメージ!」といった具合にステータスなどが数字で表されるはずですが、本作の戦闘にはなんと「数値」という概念が存在しません。
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そのかわり本作では、ステータスやダメージはふわっとした文章で説明されます。それが本作の特徴である「ファジー(曖昧な)パラメータ」システムです。アルルの体力は「ゴォーゴォー!元気だいっ!!」「だめー 意識がたもてなぁい」、敵の体力は「元気、元気!」「へろへろだ」といったといった言葉で表されます。
プレイヤーレベルも存在しますが、こちらも数値では説明されません。そのかわり、敵を倒すと画面の周りの黒丸に水色の経験玉が溜まっていき、すべて満たされるとレベルアップという仕組みになっています。
このファジーパラメータシステムはダンジョンRPGの探索における手探り感とも非常にマッチしており、より「冒険感」を感じられます。「RPGのパラメータは数値で表される」ということに対し今まで疑問を感じたことすらなかった筆者にとっては、このシステムは非常に衝撃的でした。ステータスを表すテキストのおちゃらけた雰囲気も魅力的です。
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もし、手に入れたアイテムがどんな効果を持っているかわからない!となっても大丈夫。本パッケージに収録されている作品はすべてPDF形式の復刻説明書が付属しており、ゲームの内容をしっかり理解できます。レトロゲームは説明書を読むことが前提、というものも少なくないですし、とても嬉しい配慮に感じました。『1-2-3』の説明書には1階層と2階層のダンジョンマップも書かれており、初心者でも安心です。
また、作品を動作させるエミュレーターにはクイックセーブ・クイックロードやゲームパッドが使用できるオプションもあります。クイックセーブのおかげで中断しやすいですし、強敵にやられる前に巻き戻すことも可能です。また、ゲームパッドを繋げればPC向けに出たタイトルでもゲーム機と同じ感覚で楽しめます。
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本作の独特さを楽しみながら順調にアイテムを進めつつ攻略していたところ、2階層に突如現れた強敵「ナスグレイブ」に「ぼけなぁすっ!」と罵倒されながらボコボコに打ちのめされました。こんなコミカルな見た目なのに超強い……。強敵が現れそうになる前にクイックセーブをしておけば、再びやり直すことなく楽しめます。
『魔導物語 はなまる大幼稚園児』(SFC)
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エピソード1のさらに前日譚となるのが、スーパーファミコンで発売された『魔導物語 はなまる大幼稚園児』です。ストーリーは卒園間近のアルルが卒園試験を受けるための受験資格を得るために奮闘するという物語。不思議な手紙によって「集めると願いが叶う秘石」の存在を知ったアルルは、卒園資格を手に入れるべく秘石集めに奮闘します。
本作は打って変わってJRPGのような見下ろし視点に変化しています。イントロでは図書館の本をすべて読むことでゲームのルールや魔導を覚えることが可能。お馴染みの魔導はこうやって覚えたんですね……!
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戦闘は見た目こそ違えど、本質的にはターン制の魔導バトルです。敵によって弱点が異なったり、強力な攻撃の前には1ターン溜めが入るためその間に「ばよえ~ん」で攻撃をキャンセルさせたりと、戦略的な要素を受け継いでいます。
ファジーパラメータもバッチリ用意されているほか、『ぷよぷよ』のようにバトル前にちょっとした会話があるのも楽しいです。JRPGは好きだけどDRPGに不慣れ・苦手という人でも『魔導』らしさをしっかりと味わえる作品であると感じました。PC98版『1-2-3』と比べて世界観がかなり可愛らしくなっていることも、入りやすい理由と言えます。
『ぷよぷよ』
本パッケージの目玉のひとつとも言えるのが、元祖『ぷよぷよ』が収録されていることです。今や新キャラクターもたくさん増え、コミカルで楽しい人気作となっていますが、発売当初はMSX2とファミコン ディスクシステムという、ややニッチなプラットフォームで発売されていました。
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アーケード版はアルルたちが楽しい漫才を繰り広げてくれますが、MSX2版ではタイトル画面に出てくるのみ。ですが、いつもと違うカジュアルな服装が可愛いです。
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コア部分のルールは現代の『ぷよぷよ』と同じで、同じ色のぷよを4つ並べて消す、というもの。連鎖を繋いでいく爽快感はこの頃からすでに確立されていることに感動を覚えました。
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違うところを挙げるとすれば、直線状にぷよを消してくれる「ビッグぷよ」やぷよの色を変えて消してくれる「カーバンクル」の存在です。そもそもMSX2/ディスクシステム版はぷよの落下スピードが上がるのが早くやや難易度が高めですが、これらのアイテムは救済措置として機能しています。
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また、詰将棋的にお題をこなしていく『なぞぷよ』的なモードが最初から搭載されているのにも驚きました。「一度に○個消すべし」「○連鎖せよ」といった指示をこなしていくモードですが、連鎖のタネを組むのが苦手な筆者はこちらのほうが好みです。
なお、他にもファミコンROM版やAC版がベースのPC-9801版『ぷよぷよ』『なぞぷよ』が収録されています。『ぷよぷよ』のルーツを探りたい!という熱心なファンに対してもおすすめできます。
サントラや復刻説明書に…スタッフが描いた漫画まで!?充実すぎる特典
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本作のパッケージはPC98版『ぷよぷよ』の復刻デザインとなっています。
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サイズは非常に大きく、ニンテンドースイッチのパッケージと比べるとこれほどの差があります。PCゲーム=箱が超デカいというイメージも今は昔でしょうか。
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パッケージの中にはソフトが入ったディスクに加え、本作に収録された『ぷよぷよ』シリーズのサントラ、そして復刻説明書などが多数同梱されています。当時のコンパイルスタッフが描いたと思われる漫画や描き下ろしの小説、シールなどが復刻同梱されており、コレクター魂をくすぐられます。
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余談ですが、ゲームランチャーからはサントラCDには収録されていない名曲も多数楽しめます。アルル大集合絵も可愛いですね。
『魔導物語』は自分にピッタリのゲームではないか、という筆者の考えは見事に当たり、非常にお気に入りの1作となりました。ダンジョン探索のワクワク感やヘンテコなテキストは非常に魅力的ですし、数字で表されないファジーな戦闘システムは今なお独特なシステムであると感じます。
今回紹介した以外にも、本パッケージには様々なジャンルの多くの作品が収録されていて、まだまだたっぷりと楽しませてくれそうです。いかんせん昔のPCゲームが多いということで、遊びづらく感じる部分がないわけではないですが、『魔導物語』が気になっていたという方にはぜひおすすめしたい、値段に見合う価値のあるパッケージでした。
『魔導物語 超きゅ~きょく大全 ぷよぷよ入り』は、AC-MALLにて販売中です。