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『Replica』や『リーガルダンジョン』などで知られるインディーデベロッパー・SOMI氏の新作『未解決事件は終わらせないといけないから』が1月18日に発売を迎え、ゲームファンの間でにわかに話題となっています。
本作は退職警官である主人公・清崎蒼が、突然尋ねてきた若い警官と共に、自身のあいまいな記憶をたどりながら未解決となった「犀華ちゃん行方不明事件」を解決に導くアドベンチャーゲームです。本記事ではそんな同作のプレイレポートをお届け。今回はSOMI氏より提供いただいたキーを使っており、致命的なネタバレを避けながら紹介しています。なお、序盤の物語の内容を映したスクリーンショットがあることにはご留意ください。
複雑な記憶を整理して真相へ……
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清崎蒼は、12年前に警察を退職。清崎は優秀な警部補でしたが、最後に担当した「犀華ちゃん行方不明事件」は未解決のまま退職してしまいました。
清崎は捜査の過程でさまざまな関係人物から証言を得ましたが、時が経ち、清崎自身もその記憶に苦しみ、あまり思い出したくない様子。そのため、清崎が覚えている会話は、時系列も、話者も、それが真実かどうかもごちゃごちゃの状態です。プレイヤーの役割は、話題を整理したり思い出させたりしながら、事件の真相を突き止めることです。
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基本的なゲームプレイは、会話の中で青くハイライトされた「#」で始まるタグ(キーワード)をクリックし、新たな会話を解除していくというものです。タグをクリックすると、そのタグを使って解除できるブロックが表示されるため、それを選ぶことで新たな会話が展開されます。
一度使ったタグは横線が引かれ、再び使うことはできません。別の会話を開く場合は、同じタグをまた見つけるか、その会話を解除できる他のタグを見つける必要があります。スクリーンショットの上段ブロックを例に上げると、ここでは「#幼稚園, #公園, #文房具店, #アメ」のいずれかを見つけ出すことで新たな会話が解放されます。
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画面上のリストは聞き込みをした人物ごとに分けられていますが、そこで解放した会話がその人物が話しているものであるとは限りません。そのため、「この会話をこの人物が話しているのはおかしい」と思ったら、実は別の人物の証言である場合も有り得ます。
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序盤の時点でも、犀華ちゃんが行方不明になった時間の細かい証言があったり、「父が行方不明ということにしてほしい」とお願いしていたり、「犀華ちゃんを誘拐したのは自分だ」と自首する元英語教師が居たりと、情報過多ともいえるほど複雑に絡み合っています。
この複雑さは清崎の記憶そのものを表しており、これを組み替えて思い出すように整理していくというゲームプレイは、SOMI氏が得意とするゲームならではの見事なストーリーテリングといえます。
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ゲームが進むと、錠のかかったブロックが登場します。これらは条件を達成しないと解除することができません。
赤色のものは、これまで見てきた文の中から証拠となる陳述を見つけて指摘することで解除可能。紫色のものは指定されたお題に沿った4桁の数字を並べることで解除できます。また、黄色のものは「ブロックを正しく時系列順に繋げることで得られるポイント」で利用できる鍵によって、解錠できます。
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これらをクリアするには、文章の内容をよく観察する必要があります。ちょっとめんどくさいかも……と思う方もいるかもしれませんが、本作はうまくコンパクトな規模感を築いており、どん詰まりでずーっと悩むようなことは起こりにくくなっています。すぐに解き方がわからなくても、他のところを解いているうちに自然とわかったり、鍵となるタグを見つけられたりするので、全体的にほどよい難易度です。
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ゲーム序盤はさまざまな話が交錯し、それぞれの人物の関係や陳述の真偽、犀華ちゃんの安否など分からないことだらけです。しかし、遠い昔の記憶を少しずつ思い出すかのように物語を整理していくと、最後にはすべてが綺麗に繋がります。このゲームならではのストーリー体験こそ、SOMI作品の醍醐味であると再認識しました。
物語の最後に待つ真実と、本作が抱えていたメッセージには強く感銘を受けました。日本語ローカライズの品質も極めて高く、海外産ゲームであることを忘れるほど自然に楽しめます。クリアまではさほど長くはないため、ちょっと時間のあるときに一気にプレイしてみてほしい作品です。
対応機種:PC(Steam)
記事におけるプレイ機種:PC
発売日:2024/01/18
記事執筆時の著者プレイ時間:3.5時間
価格:800円(1/25まで10%オフ 720円)