
海外企業eigoMANGAが販売中の『Vanguard Princess』(以下、「海外版」)について、原作『ヴァンガードプリンセス』に使用されたゲーム制作ツール「2D格闘ツクール2nd.」の利用規約違反、ならびに第三者による関連イラストの無断使用の疑いが浮上しました。
「ツクール」開発・発売元は“原則的に利用規約違反”との見解

『ヴァンガードプリンセス』とは、2009年に無料で公開されたスゲノトモアキ(SUGE9)氏による対戦格闘ゲームです。2012年にeigoMANGAより英語対応のバージョンがリリースされましたが、“原作者であるスゲノトモアキ氏に利益が本当に分配されていたのか”、“「2D格闘ツクール2nd.」を改造したうえで販売しているが、エンターブレインは許可していないのではないか”といった疑問や指摘の声が上がっていました。
当時、eigoMANGAはそれぞれの疑惑について釈明していましたが、2024年5月に同社が“業務用ゲームを複製・販売するに当たり、『ヴァンガードプリンセス』の権利者の連絡先に関する情報を募集”したことで、同社が利益を分配しているはずのスゲノ氏とコンタクトを取れない状況にある可能性が浮上しました。

後者について、エンターブレインは2013年に株式会社KADOKAWAと合併していますが、Game*Spark編集部の取材を通し、執筆時点で「ツクール」シリーズを開発・発売している同社グループのGotcha Gotcha Games(以下、GGG)は“個別事例のコメントは控える”としつつも、「原則的に、Maker(ツクール)製品の無断改変や他者の著作権を侵害するゲームの頒布は利用規約違反であり、そのような利用は認められません」と回答しています。
「2D格闘ツクール2nd.」においては、様々なアーケード向け格闘ゲームをリリースしている別企業exA-Arcadiaが、KADOKAWAと“独占的ライセンス契約”をした上で、同ツールの移植・改良をしていると説明しているため、同ライセンスの“独占”の定義によっては、eigoMANGAが仮に過去、エンターブレインの許可を得ていたとしても、規約違反をしていると言える状況です。

カバーアートやロード画面など、第三者のイラストを無断で改変・使用している疑い

“そもそも海外版が正しい形で販売されているのか”という疑惑については前述のとおりですが、Game*Spark編集部の調査により、ゲーム内外で使われているイラストに関しても無断で使用されたものである可能性が浮かび上がりました。

eigoMANGAの海外版では、ダウンロードコンテンツとしてゲーム向け要素のほか、独自のコミックを配信しており、これらには原作のスゲノ氏とは異なるタッチのイラストが多く採用されています。同コミックにスゲノ氏はクリエイターとしてクレジットされているものの、ライターやイラストレーターには第三者の名義が記載。これらのイラストは委託する形で描かれたことが考えられますが、その一部には出典元が明記されていないものも存在します。

例えばDLC「Vanguard Princess Online Deluxe」を導入すると、ゲーム内のBGMやアートが差し替えられますが、ロード画面に映る一枚絵は鶯神楽氏による二次創作同人誌の表紙と類似。また、DLCには他にもアートワーク集が収録されていますが、うち一枚はスゲノ氏による公式関連書籍「ヴァンガードプリンセス設定資料集」に寄稿された瑞姫玉蘭(瑞姫)氏のイラストを改変したものと思われるほか、海外版カバーアートも同イラストが元になったことがうかがえます。



他にもイラストレーターが特定できないイラストが存在しますが、少なくともこの2ケースは他とは出自が異なることに加え、ゲーム等にクレジットされておらず、両名のSNS等でも海外版について言及がないため、イラストが無断で改変・使用された可能性は否めません。Game*Spark編集部ではこれらイラストについて、関係各所にeigoMANGAによるイラスト使用の把握と許諾の有無を問い合わせています。
Game*Sparkでは『ヴァンガードプリンセス』に関して、過去記事「『ヴァンガードプリンセス』著作権は誰のもの?海外版と『R』版、2つの販売元が互いの動画に著作権侵害の申し立て―原作者の意思はわからず」、ならびに「無許可販売の疑い深まる…海外版『ヴァンガードプリンセス』パブリッシャーのeigoManga、著作権者を“今になって”捜索中」にて弊誌による調査結果などを掲載しています。