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『SILENT HILL 2』開発者インタビュー!伝説的サイコロジカルホラーは何が特別だったのか、リメイクではそれをどのように翻案しているのか

5人のキーマンに訊く、『SILENT HILL 2』のこと。

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『SILENT HILL 2』開発者インタビュー
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人気サイコロジカルホラーのリメイク作『SILENT HILL 2』がついに10月8日より発売されます。多くのゲーマーが名作の復活にソワソワする中、8月8日に本作の世界最速先行プレイイベント「『SILENT HILL 2』Tokyo Media Premiere」が開催されました。

今回は、このリメイク版を作り上げた5名のキーマンにインタビュー。開発者視点でのお話を交えつつ、本作のさらなる内容に迫ります。

インタビュイー(順番は画像左から)

  • Bloober Teamリードプロデューサー Maciej Głomb氏(以下、Głomb)

  • Bloober Teamクリエイティブディレクター Mateuz Lenart氏(以下、Lenart)

  • コナミデジタルエンタテインメント「SILENT HILL」シリーズプロデューサー 岡本基氏(以下、岡本)

  • コンセプトアーティスト 伊藤暢達氏(以下、伊藤)

  • コンポーザー 山岡晃氏(以下、山岡)

――完成が近づいている今、本作への思いを教えてください。

岡本『SILENT HILL 2』は長く愛されてきたタイトルであり、 たくさんのユーザーさんにさまざまな考察もしていただいています。本作では作り直しのほかにエンディングの追加なども行っていますが、オリジネーターである山岡さんと伊藤さんと一緒に作ることができたので、その考察や設定をより深められるものが作れたと思います。

――原作のサウンドデザインやサウンドトラックは素晴らしいものでしたが、本作ではどのように手を加えているのでしょうか。

山岡楽曲はすべて書き直しています。オリジナルのパートをパーツ単位で使っているところもあるのですが、ボリュームにしてトータル9時間ほどを書き直しました。原作がこんなに長く愛されていてすごく嬉しいのですが、自分としては新しいことに挑戦して、初めて遊ぶ人にも感動や興奮を味わってほしいと思っています。

――本作に登場するクリーチャーに原作との違いはありますか。

伊藤基本的にはバトルデザインに関する微妙な変更は行っていますが、まったく新しいクリーチャーが追加されているわけではありません。

ただ、とある人物にまつわるクリーチャーは原作を出した後に「こうすればよかったかもしれない」と思ったところを反映させています。どこが違うのかを見つけて考察していただくのも、今回の楽しみのひとつとして覚えておいてください。

――山岡さんと伊藤さんは改めて『SILENT HILL 2』という作品に向き合うことになったわけですが、どういった気分で臨みましたか。

山岡セルフカウンセリングをするような気分でした。原作開発当時の生き方を思い出しながら楽曲制作に臨みました。原作開発当時はベースギターが買えずにギターのチューニングを下げて低い音を出す……というくらいお金がなかったのですが、そんな状況でも良いものを作ろうとしていた……そんなことをなかなか思い出せず、自問自答の毎日でした。

原作楽曲をそのまま使うのはある意味で“簡単”ではあるのですが、やはり大好きな人にも初めての人にも受け入れてもらいたいです。やはり大好きな人にも初めての人にも受け入れてもらいたいです。

伊藤2019年頃に岡本さんからDMで「『SILENT HILL 2』のリメイクをするから、参加してくれないか」という打診がありました。しかし正直なところ、そのときはオリジナルを弄る必要はまったく無いと思っていたので、断ることも考えました。

ただ、参加しないで違う方向に行ってしまうよりは、参加して原作の精神を引き継いでもらうために尽力しようと決意しました。

――Bloober Teamの皆さんは、リメイクとして注目してほしい部分はありますか。

Lenart我々Bloober Teamは原作に対して非常に深い愛情と思い入れがあります。本作ではゲームプレイ全体を見つめ直して、ゲーム体験としてうまく成立するようにコンバットデザインから探索まで一体感のあるものを目指して作りました。

Głomb今回のイベントでは開発者側ではない皆様に初めて触っていただきましたが、非常にさまざまな知見が得られました。

――本作の開発スタジオにBloober Teamを選んだ理由は何だったのでしょうか。

岡本『SILENT HILL』というシリーズをリブートするにあたって世界中のスタジオが候補に上がりましたが、やはり本シリーズへの愛情が強いチームを選びたいという思いがありました。その中で、Bloober Teamを訪問したところ、愛情の強さを確信できたため、今回選ばせていただきました。

――キャラクターの表情の表現力が現行機では最高峰レベルに凄いと感じたのですが、Bloober Teamは『Layers of Fear』『ブレア・ウィッチ』など一人称視点のゲームが多いですよね。このクオリティはどのように実現したのでしょうか。

岡本確かにBloober Teamさんは三人称視点のゲームはあまり多くありませんが、パートナー会社さんを含めてしっかりやってくれるのではないかという信頼があったため、おまかせしました。

――キャラクターのひとりであるアンジェラは原作からかなり顔つきが変化しましたが、この変更にはどういった意図がありましたか。

岡本今回キャラクターをリアルに表現していくにあたって、ボイスを演じていただいた俳優さんの顔をモデルにしています。俳優さんたちは演技力が強いため、顔をキャプチャーしたものにすることはリアリティのあるキャラクターを描くためには不可欠でした。

特にアンジェラは原作と顔つきが違うかと思いますが、我々としては彼女の魅力を表現するうえで、似ているかどうかよりも演技力を重視しました。

Lenart『SILENT HILL 2』は非常に感情的・情緒的な作品であることを踏まえると、今作のキャラクターの表情は“完璧”以外許されないくらいの気持ちで制作しました。特に表情の動きはキャラクターの表現を最大限伝える上で手を抜けない部分なので、俳優はそのキャラを表現する上で最適な方を選定しています。

――原作は「間延びしている」と感じる部分が個人的にあったのですが、リメイク版ではそのあたりのテンポが良くなっていたように感じました。

Lenart難しい判断ではあったのですが、序盤は特にさまざまな検討を重ねました。アクションパートを増やして盛り上がりを増やす案も上がっていたのですが、最終的には原作のテイストに極力近づけつつ、現代のゲームとして問題ないくらいのプレイ感になるように、慎重に調整しました。

――原作が人気なだけに、変えない部分と変える部分のバランスは難しかったと思います。

岡本プロジェクト初期時点ではクリーチャーやサウンドについて全部変えて新たな方向性を目指そうという議論はありました。山岡さんと伊藤さんはすごくクリエイティビティのある方なので、完全新作のようなイメージで作りたいと考えられていたのです。

Lenart反対に、原作から一切変えないという案も出ていたのですが……我々Bloober Teamとしては、現在の市場で通用するものを作りたいという思いもあったので、いろいろと模索しました。

――原作未プレイユーザーに対して、配慮した部分はあるのでしょうか。

岡本原作から引き継ぎではありますが、難易度の設定があります。今回も戦闘だけでなく謎解きの難易度も調整できるので、ユーザーさんごとに合わせていただければと思います。また、日本語音声にも対応したため、字幕を読むことが苦手な方でも楽しんでいただけると思います。

――このリメイク作は、今後のシリーズにとってどういった存在となるのでしょうか。

岡本『SILENT HILL 2』は、やはり皆さんにとっての「SILENT HILL」シリーズ体験のスタンダードになっていると思います。そこで、このリメイク作を自信を持ってお届けすることにより、ファンの皆様に「今のKONAMIはちゃんと自信を持って作れますよ」ということを訴えていきたいと思っています。

――サバイバルホラージャンルには名作が数々ありますが、中でも『SILENT HILL 2』は特別な作品として見ている方も多いと思います。リメイクを作っている皆さんの視点では、『SILENT HILL 2』という作品の特別なところはどこにあると思いますか。

Lenartやはり「物語」です。本作の物語はプレイヤー自身の心にも刻まれるような作品がたくさん盛り込まれているので、そこは外せません。もう一点は、作品全体の雰囲気だと思います。2001年当時様々な作品があった中で、本作の雰囲気は独特で、他に類を見なかったと思います。

Głomb私は「キャラクター」ですね。ゲームに限らずどの媒体でも、時間が経つと物語への印象は徐々に薄れてしまうと思うのですが、キャラクターの印象は濃ければ濃いほど心にも刻まれて忘れられない存在となります。特に『SILENT HILL 2』のキャラクターは設定がすごく作り込まれていて、その意義もあります。

岡本私も「物語」だと思いますね。エンディングが安易にハッピーではない苦いものであるところは、本作を特別にしている部分だと感じます。

山岡『SILENT HILL 2』は単なるゲームではなく、ひとつの体験だと思っています。「この仕組みが面白かった」「このグラフィックが良かった」というだけでなく、独特の体験を味わったという感覚にさせる作品だと思います。

開発当時、チームの中ではホラーゲームを作るという意識よりは、ジェイムスとメアリーの夫婦愛を描くことを大きな目標としていました。ホラーとしてのお作法やゲームとしての遊びうんぬんよりも、なにかひとつのものを体験させられるような作品にできたことが、ここまで愛される作品になった理由なのではないかなと思います。

伊藤開発当時、デザイナーが僕を含めて数人しかいない状態でした。開発期間も決まっていて、予算も限られている状況だったんです。

そんな中、バトルデザインよりも、霧の街などのロケーションから象徴性のあるクリーチャー、物語の展開などプレイヤーが体験する道のりや物語に特化したホラーにしようと決めました。当時はまさか、25年も愛される作品になるとは思っていませんでしたね……。

――ありがとうございました!


Bloober Teamの開発者から当時開発に携わっていた方まで、豪華なメンバーにお話を伺うことができました。リメイクするにあたって意識したことから、『SILENT HILL 2』という作品は何だったのか?というところまで、本作への理解が深まるような時間になったと感じます。

『SILENT HILL 2』は、PC(Steam)/PS5向けに10月8日発売です。

※画面は開発中のものです。

©Konami Digital Entertainment


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《みお》

超雑食の若年ゲーマー みお

2021年3月よりフリーでゲームライターをしています。現在はGame*SparkとIGN JAPANで活動し、稀にINSIDEにてニュース記事を執筆しています。お仕事募集中。ゲームの趣味は雑食で、気になったものはクラシックゲームから新しいゲームまで何でも手を出します。主食はシューター、ADV、任天堂作品など。ジャンルやフランチャイズの歴史を辿るのも好きです。ゲーム以外では日本語のロックやアメコミ映画・コメディ映画、髪の長いお兄さんが好きです。

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