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皆さん、『ARMORED CORE VI FIRES OF RUBICON(以下、ACVI)』の惑星ルビコンでの生活はいかがでしょうか。 発売から1年半以上過ぎ、そろそろDLCコンテンツや続編を待ち望む人たちも多いことでしょ う。
そんな皆さんに新たな仕事を贈ります。それが『TRPG ARMORED CORE VI FIRES OF RUBICON (以下、TRPG ACVI)』です。今回、筆者は先行して仕事を斡旋してもらったので、皆様に現場の雰囲気もといプレイレポと『TRPG ACVI』の著者であるグループSNEの加藤ヒロノリ様へのインタビューをお届けします。私に意味を与えてもらおう。
原作らしさは残しつつ、1プレイは軽く
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まずはプレイレポートからです。今回は体験会ということでルールブックに記載されている サンプルAC6体から1体を選択して遊ぶことに。実際のルールブックには倍の12体がサンプルとして収録されているそう。
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また1からアセンブルを組むことも勿論できます。『TRPG ACVI』では『ACVI』発売時に実装されたパーツ全てがデータとして載っているためカスタマイズ性は無限大です。ただ、ゲーム開始時から全てのパーツが使えるわけではなく、ある程度ミッションをこなすことで使用できるようになっています。そのあたりも『ACVI』らしい感じに。
筆者は車椅子ことEL-TL-11 FORTALEZAをよく使っていたので、そのパーツが使われている高機動タンク型をチョイス。そして同じく体験会に来ていた他2名と協力して遊ぶことになりました。このあたりは原作と異なる点と言えます。
『TRPG AC6』はゲームを進行するGMを除きPL2~3人でのプレイがバランスよく遊べるとのことです。もっとも、『TRPG ACVI』はPL1人から4人まで遊べるように設計されています。プレイヤーPL1~2人で遊ぶ場合は決められた行動を行う僚機がサポートとして付き敵の体力も減少。逆にPL4人では敵の体力が増加する形となっています。
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そして今回遊んだミッション(シナリオ)は『ACVI』では一番最初のミッションとなる「密航」です。どういうことかというと『TRPG ACVI』では『ACVI』におけるチャプター1からチャプター3までのほぼ全てのミッションがデータとしてすぐ遊べるように記載されています。
一方、先程も言った通り『TRPG ACVI』は複数人で遊ぶことを前提としています。そのためPL1人は原作通り「621」となり、他2人はなんらかの形で協力することになった僚機という形になります。このあたりは『TRPG ACVI』、そしてTRPGならではのオリジナル要素と言えるでしょう。
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実際のプレイの流れは以下のようになります。
52枚あるトランプのカードを2枚引き、速い方の(同じ数の場合、決められたスー ト)を1枚手元に残す。ただしAを引いた場合はそのカードも残す
ターン開始時に決められた数のサイコロを振る(この作品では、6面サイコロのみ使用。サイコロの数は装備しているパーツに依存する)。これが行動全てのコストになる。また、保有できるサイコロの数もパーツで決められているため、決められた数以上のサイコロは保持できず破棄される(どのサイコロを破棄するかはPLが決定できる)
トランプのカードの数字が大きい人(同じ数字の場合は決められたスートの強弱で行動順が決定)からターンが来る
各PCの行動順の開始時に再び一定数のサイコロを振り、コストとして保有した後行動する。主に
・マップを移動する
・敵に攻撃する
・イベントをこなす
・スキルを使う
・リペアキットなどを使って回復や弾を補充する
などが行える。攻撃する場合はレンジ(何マスまで攻撃できるか)や攻撃力、支払うコストがそれぞれ武装によって異なるため適切なものを使って敵を倒していく。なお武器には『AC6』と同様弾数が近接武器以外に定められているため弾がないと当然攻撃できない。敵から攻撃された場合、回避コストや特殊なスキルを使って攻撃を避けたりする。 回避できなかった場合、ランダムでCORE、ARM(L)、ARM(R)、LEGSからダメージを受ける。受けたダメージによってはスタッガーし一定時間行動不能になったり、場合によっては完全に破壊され大きなペナルティを得る。
またCOREが破壊されると大破となり、大破が3回起きるとミッション失敗。あとは①から⑤を繰り返していき、目的を達成するとミッションクリア。ただし最初に提示された目的を達成したらすぐミッションクリアになるとは限らない(追加の目的が増える ことが大体)。
最終的にミッションをクリアすると報酬が得られます。ただし弾薬代などリソースを多く使用したりダメージを多く受ければ受けるほど支出もあるので、立ち回りは非常に大事になってきます。なぜなら『TRPG ACVI』は今まで得た報酬の額に応じて装備できるパーツが増えたり、強力な効果を持つスキル(『ACVI』で言うOS TUNING)が追加で増えていくためです。
そうして実際に遊んだ感想なのですが、GMとPL共に慣れてくると非常にスピーディーに遊ぶことができるシステムだなと思いました。今回一緒にプレイした中にはTRPGそのものが初めてという方もいましたが、私含め2~3ターンくらい遊んだあとは1ターン5分もかからずに進行していきました。
最終的にはミッション「密航」のラストに待ち受けている惑星封鎖機構大型武装ヘリもノーダメージで倒すことができました。さらに、大きく時間が余ったため「移設型砲台破壊」と「テスターAC撃破」のミッションまで遊びました。皆が非電源のゲームに慣れていない限りはなかなか「重い」システムは遊びづらいのがコンピュータゲームと比べての非電源のゲームの欠点ですが、本作はさくっと遊べるいいシステムだなと筆者は感じました。
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なお、ミッションデータは『ACVI』チャプター3までの記載になっていますが敵のデータは全て記載済み。『ACVI』チャプター4以降の敵やボスも全てデータとして載っているので、自身でミッションデータを作成すれば遊べるようになっています。そのためのヒントも記載されています。
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さらに、「もし621がレッドガン部隊に所属することになったら」とか「ヴェスパー部隊に所属してラスティとしのぎを削る」みたいなシナリオを作りたいという人向けのヒントも掲載されています。どんなシナリオでもミッションでも作り遊ぶことができるようになっているのも『TRPG ACVI』ならではの特徴と言えるでしょう。
初心者GMでも遊べるように
ここからは『TRPG ACVI』を制作した加藤ヒロノリ氏のインタビューをお届けします。加藤ヒロノリ氏は『DARK SOULS』『ELDEN RING』のTRPG化も手掛けています。
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ー『DARK SOULS』『ELDEN RING』と続き今回で3つ目になりますが、『TRPG ACVI』は最初か らこうしていこうと考えていたことはありますか。
加藤ヒロノリ氏(以下、加藤):そうですね、『DARK SOULS』『ELDEN RING』のTRPG版ではスタミナをダイスで管理するバトルのシステムでした。これが遊んでくださったユーザーさんにも好評でしたので、まずはそれをベースに考えました。『ACⅥ』にもスタミナに似たENゲージはあるし、アクションゲームと言うところも同じですしね。
ただ、全く同じにするのもつまらないと思ったので少しずつ変えていった結果、なんだかんだでかなり違った味になったんじゃないかなと感じています。たとえば『ELDEN RING TRPG』では、手番時にはサイコロをいくつ振るか考えてから振る形だったのですが、『TRPG ACVI』は先に振れるだけのサイコロを振ります。こうすることによってできることとできないことが明確になり、自分の手番での思考時間を圧縮できるようになったのでその点は良かったと思います。
ープレイしてみてGMがいなくても遊べる、いわゆるGMレス化も可能だなと思いました。
加藤:できなくはないと思います。ボードゲームチックに遊べるかなと。それと僕は口プロレスでゲームが進むのはあまり好きでないので、そういう判断なくGM初心者でも遊べるように心がけています。本作もそうですがTRPGは知らないけど『DARK SOULS』『ELDEN RING』『ACVI』は知っているから遊んでみようという人が、IPものだからこそ一定数いるんじゃないかなと思いまして、そんなGM初心者でも書いてある通りにやれば悩まずに遊べるんじゃないかなと。
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ーネット上で本作のキャラクターシートが公開された時、『バトルテック』っぽいと言われたりしていましたが影響を受けたりはしているのでしょうか。
加藤:デザイナーズノートにも書かせていただきましたが、僕は『バトルテック』遊んだことないんですよ。友達が持っていたので軽く眺めた程度でルールブックも持ってません。また自社の『エンブリオマシン』というロボットもののTRPGもあるのですがそれも一切触っていません。なので影響らしい影響は受けてないんじゃないかと思います。
また、『TRPG ACVI』は、今でこそマップ戦闘がメインになっていますが、最初は4つのエリアだけで遊ぶスタイルだったんです。「旧宇宙港襲撃」のミッションデータをシナリオにしているときに「大規模マップを作ったら面白いのでは」と試してみたんですね。色々と試行錯誤はありましたが、結果的に面白い感じにできた。そこで、改めて振り返ってみると、「こっちのほうがアーマード・コアっぽいよね?」ということになって、すでにできあがっていたシナリオを8割方作り直しました。このへんの詳細についてはデザイナーズノートで書かせてもらっているので、またご覧戴ければ。
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ー『ACVI』をTRPG化するにあたって、同作はロボットがメインなためパーツの入れ替えをして楽しむと思うのですが、そのあたりで気をつかった点などはありますでしょうか。
加藤:原作では、パーツ1つ1つの細かなパラメータが絡み合っているのはご存知かと思います。なので最初は原作通り細かくデータを入れてテストプレイしてみました。その結果、これらをアナログでやるのは大変すぎて、よほどのマニアでない限りは、つらいだろうなと思いました。ヒューマンエラーも多くなりそうですしね。次にすでに組まれているACを30体くらい用意し、その中から遊んでみる形式を試しました。 それはそれで、手軽になって面白かったのですが、『アーマード・コア』らしいかと言われたら疑問が残り、パーツ組み換え自体は必要だと感じました。
僕は面倒臭がりなので、ある程度要素を引き算した結果が今の形になりました。今のものを遊んでいただいて『アーマード・コア』らしいと言ってもらえるのであれば、すごく嬉しいですね。
ー今回でフロム・ソフトウェア様の作品をTRPG化したのは3作品目になりますが、今回の手応えはどうでしたか。
加藤:僕も作っている内に進化していますし、スタミナダイスのシステムも進化しています。もちろんなにかしらのTRPG化しやすい新作がフロム様から発売されたら、またチャレンジさせていただけるとうれしいですが、そういうもの以外であれば『DARK SOULS TRPG』を今のスタミナダイスのシステムにしてアレンジしなおすのも面白そうですよね(笑)
ー『TRPG AC6』シナリオのデータは『ACVI』のチャプター3までですが、装備は全てデータとして記載されていると聞きました。なのでチャプター3以降のシナリオは自分で作って遊んでほしいと。
加藤:はい。遊んでいる人で作って貰えたらと思います。敵データもラスボスまで入っているので。そういう意味で『ELDEN RING TRPG』のときは、世界観的にフリーの冒険者とかが遊びやすそうな雰囲気ではなかったことに対して、『TRPG ACVI』は企業なども設定されていますし、これを使ったシナリオなどをGMが考えやすいんじゃないかなと感じているので、本書ではあくまで「サンプルシナリオ」の立ち位置で、いくつかのパターンを紹介し、あとは皆さんで作っていただければいいんじゃないかと。
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ー最後に読者の皆様に一言お願いします。
加藤:『ACVI』が好きな方は是非、一度手に取って遊んでみてください! TRPG版は、アクションが苦手な方でも遊ぶことができるのが、ある意味で最大の利点かもしれません。GMにも挑戦してみてください。サンプルシナリオであれば、読み進めるだけでも楽しく遊ぶことができますので! サンプルシナリオでコツを掴んだら、次はオリジナルにも挑戦してみてください! そのための準備はこの本に用意してあります。
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以上が『TRPG ACVI』のプレイレポ、インタビューの内容です。 個人的には「TRPG」のG、ゲーム要素が本当にシンプルかつ濃密に込められているものだと感じましたし、一方でシナリオを自分で作って色んなことができるという点も上手く用意されており、TRPGらしい色んな遊び方が出来る良いタイトルに思えました。 今回の記事で興味を持った方はぜひ本書を購入し、惑星ルビコン3での生活を筆者と共に楽しみましょう。