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体が衰弱し外出する事ができなくなった癌患者の女性がVRヘッドセット「Oculus Rift」で散歩を実現したというニュースがThe Rift Arcadeにて伝えられています。
2013年末、癌患者のRoberta Firstenbergさんは数ヶ月にわたる放射線療法及び化学療法も虚しく、もはや手の施しようがないと宣告されました。徐々に体が衰弱し、大好きな庭に出る事もできなくなったRobertaさん。そんな彼女を介護する孫娘のPriscillaさん(ゲームアーティストであり、ステルスアクション『Republique』の開発にも携わった)はあるアイデアを思いつきました。
そのアイデアとはVRヘッドセットのOculus Riftを使用して祖母のRobertaさんにもう一度外の世界を体験させてあげるというもの。しかしながら祖母の余命は数ヶ月、すぐに注文しても到着が間に合わない可能性がありました。彼女はOculus VRにメールでこれまでの経緯を伝えたところ、翌日に支援を申し出る返信があったとの事です(新品は用意できなかったため開発者向けの貸与品を提供)。
その後すぐにOculus Riftが到着し、Robertaさんはまず仮想空間の別荘が登場するトスカーナデモを体験。彼女は庭で羽ばたく蝶に驚き、階段を昇り降りできる事を喜んだそうです。この時の様子を収めた映像はYouTubeにアップロードされています。
動画のアップロード後、コメント欄でOculus Rift版Googleストリートビューの存在を知ったPriscillaさんはRobertaさんにその事を話しました。するとRobertaさんがまだ元気だった頃にストリートビュー撮影用の車に出会っていた事が明らかとなったのです。Priscillaさんが早速ストリートビューでその場所をチェックしてみると、カメラに向かって手を振るRobertaさんの姿がしっかりと収められていました。
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RobertaさんはOculus Riftでその場所を見回して微笑み、また彼女とともに映っている飼い犬の姿を見て涙しました(飼い犬はちょうど数ヶ月前に亡くなっていたそうです)。その後、Robertaさんは彼女が行きたかった場所全てをストリートビューで堪能したようです。
Oculus Rift初体験から4週間後、Robertaさんは他界しました。Priscillaさんはその数日前からRobertaさんのために妖精や蝶、滝や森が登場するVRソフトを制作していましたが、それを彼女に見せる事は実現しなかったようです。しかしながらRobertaさんはVR技術と孫娘の愛情によって人生の最期に素晴らしい思い出ができたのではないでしょうか。