
2016年3月24日に配信されたスクウェア・エニックスのiOS/Android/PlayStation Vita向けソフト『ロマンシング サガ2(以下:ロマサガ2)』。本作は、オリジナル版に新たな要素を追加し、不具合の修正を施したiアプリ/EZアプリ版『ロマサガ2』をリマスターしたものです。姉妹サイトであるインサイドでは、PlayStation Vita版のレビューをお届けしましたが、今回はiOS向け『ロマサガ2』をクリアした筆者が、1993年に発売されたオリジナル版と比較しながら、モバイル版の長所・短所などをレビューします。
■『ロマサガ2』のゲーム内容

本作は、バレンヌ帝国の皇帝である主人公が、かつては救世主であったはずの七英雄と戦いながら、数々の事件を解決しつつ、帝国の領土を拡大していくフリーシナリオRPGです。この「フリーシナリオ」というのは、世界に散らばる各イベントを好きな順番でプレイしていくシステム。明確なストーリーラインが存在しないうえ、善悪では判断できない重要な選択を迫られる時もあるので、プレイヤーによって異なる体験が待ち受けています。

また本作は、各武器・術を使い続ける事によって、その技能が強化されていく熟練度システムを採用しています。技能を強化すると、戦闘中に一定の確率で技を閃いたり、術を覚える事が出来たりするので、常に「どの技能を強化すべきか」という点を考える必要があり、キャラクターのカスタマイズを存分に楽しめます。忘れてはならないのが、各キャラクターに割り当てられたLP(ライフポイント)の存在。LPが0になるまでは敵に殺されても復活しますが、この数値が尽きると、そのキャラクターはもう二度と復活できません。まさに、シビアかつ歯応えあるシステムなのです。

イベントをクリアして、数十年~数百年の年月が過ぎると、ランダムで選ばれた4人のキャラクターの中から次期皇帝を決める事になります。次期皇帝は、前皇帝の技能やHPは引き継がれますが、パーティメンバーは初期化されてしまいます。前皇帝のパーティメンバーに愛着を感じている人もいるかもしれませんが、「今度はどのキャラクターを仲間に入れて、どの武器・術を使っていこうか」といった、新たにパーティメンバーを構成していく楽しみが生まれるのです。

帝国の拠点であるアバロンの街には、各種機能を備えた施設が建てられます。帝国大学を開校して軍師を仲間にしたり、術法研究所を設立して、キャラクターに術を覚えさせたり、新市街を築いて、世界中の仲間を集める事ができます。これらの施設を建てるには大量の資金が必要で、ダンジョンを探索して宝箱を見つけるか、戦闘を繰り返してコツコツ収入を得る事になります。それを乗り越えて施設を建てた時は、非常に達成感があるのです。このように、『ロマサガ2』には独自の要素が数多く存在しています。
■オリジナル版との違い

ここでは、オリジナル版『ロマサガ2』と比較して、新たな追加された要素や変更点などを解説します。
1.背景グラフィックの刷新
本作は、キャラクターグラフィックに変更を加えずに、あえて背景グラフィックのみを刷新しています。これによってオリジナル版の雰囲気を保ちながら、フィールドがより立体的に見えるように。また、アバロンの街をはじめ、一部のマップの構造も変更されています。

2.強くてニューゲームの追加
本作では、新たに「強くてニューゲーム」が追加されました。一部アイテム・技道場の技・術法・お金・スキルレベルなどを引き継ぐ事ができるうえ、従来のRPGのようにゲームをクリアしなくても、いつでも強くてニューゲームを行えます。ゲームの途中で詰んでしまった時に利用したり、一度クリアした人がフリーシナリオのみを楽しんだりと、プレイスタイルの幅が広がったように思えました。

3.不具合の修正&ゲームバランスの調整
本作では、無限にお金が入手できる「クラウン無限増殖」をはじめとした、オリジナル版の不具合が多数修正されました。また、アイテムの能力や技能の性能、一部の陣形仕様などのゲームバランスにも調整が加えられています。

4.新ダンジョン「追憶の迷宮」
追加ダンジョン「追憶の迷宮」には、地形が異なる4種類のマップが存在します。このダンジョンは、最深部に進むにつれて敵が強化されるようになっており、宝箱の中身もランダムで変化するので、キャラクターの強化・資金集めを行う場所として最適です。また、ここには、ラスボスより厄介なボスモンスターがある場所で待ち受けています。敵の行動を止めるクイックタイムが通用しないので、プレイヤーは敵の技を回避する「見切り」などの戦闘要素をフル活用して戦わなければなりません。加えて、各ダンジョンには、新キャラクターと出会ったり、特殊な効果を備えたアイテムを入手したりと、嬉しいサプライズもありました。

5.「忍者」&「陰陽師」が追加
新たなキャラクター「忍者」と「陰陽師」が追加されました。忍者は、腕力と素早さの能力値が高い、体術を得意とする女キャラクター。陰陽師は、精神耐性を持ち、冥の術を得意とする男キャラクター。どちらのキャラクターも個性的なので、一度は仲間にしたくなります。

6.金の成る木「アバロンの園」
アバロンの園は、戦闘回数を重ねるごとに帝国に収入をもたらす施設。これと追憶の迷宮は、新たな金策として大いに役立ってくれます。ちなみに、アバロンの園は、街の南西から立ち寄る事ができます。

- その他の変更点
新イベント
ある条件を満たすと、最終皇帝時にイベントが起きるようになりました
新アイテム
獲得技術点を1.5倍にさせるスキルリングをはじめとした、新アイテムが多数追加されました。
新陣形
新たに陣形が追加されました。あるイベントの報酬として入手できます。
体重計・理力計
キャラクターの素早さを計測する体重計と、術の威力を計測する理力計が追加されました。
帝国記
ステータス画面から各イベントの履歴が読めるようになりました。
敵キャラクターのアニメーション
戦闘時、七英雄をはじめとした一部の敵キャラクターが動くようになりました。
オートセーブ
プレイ状況を自動的にセーブする機能が追加されました。
ダッシュ時のモザイク削除
敵がいるフィールドでダッシュすると、周囲の視界が遮られる演出がなくなりました。
移動速度のデフォルトがダッシュ状態に
移動速度のデフォルトがダッシュ状態になりました。オプションで変更可能です。
■モバイル版の使用感は……

iOS版『ロマサガ2』を一通りプレイして、やはり気になったのがタッチパネルによる操作です。確かに、タッチ操作でも慣れればプレイに支障はないのですが、筆者による過失でフリック入力をしたつもりが、タッチ入力をしてしまう場面が何度もありました。雑魚相手でも全滅のリスクがある『ロマサガ2』の戦闘において、この誤動作は何としても防ぎたいところ。やはり、ここは物理コントローラーで本作をプレイしたいものです。
iOS版のメリットとしては、PlayStation Vita版と異なり、ほとんど読み込みがない点です。また、本作には、オリジナル版と違ってリセットコマンドがないのですが、iOSのアプリリセット機能を使えば、その場でスムーズに再起動できます。戦闘で全滅した際に多用しました。
以上の点を踏まえて、モバイル版であるiOS向け『ロマサガ2』は、メリットとデメリットが等しく存在しており、最終的には、プレイヤーのスタイルによって、読み込みがないモバイル版、もしくはコントローラー操作のPlayStation Vita版を選ぶ事になるのではないでしょうか。読み込みが気になる筆者としてはモバイル版がベターだと思いました。

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背景グラフィックを刷新し、新要素の追加やゲームバランスの調整をはじめ、至る所に変更が加えられた『ロマサガ2』は、オリジナル版を何度もクリアしたファンでも、熱中できるクオリティに仕上がっています。なお、「ロマンシング サガ2公式Twitterアカウント」では、本作のアップデートや今後のサガシリーズの展開について、積極的に情報発信をしているので、ファンは注目しておきましょう。あぁ、次は『ロマサガ3』をプレイしたいなぁ……。