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美術技法と小説から着想を得た“明暗”を描くストーリーテリング…フランス産JRPGが生まれるまでを訊いてみた『Clair Obscur: Expedition 33』イベントレポ

難しいゲームをやさしくするのが難しい!

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美術技法と小説から着想を得た“明暗”を描くストーリーテリング…フランス産JRPGが生まれるまでを訊いてみた『Clair Obscur: Expedition 33』イベントレポ
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2025年2月25日、渋谷サクラステージで『Clair Obscur: Expedition 33』のイベントが行われました。

本作はJRPGに色濃く影響を受けたフランス産のRPGです。ペイントレスという存在に消され続けている人類が最後の希望を持って反逆するという物語で、Sandfall Interactiveが開発、Kepler Interactiveが販売を担当しています(日本での販売担当はセガ)。

コマンドバトルとリアルタイム制の融合……南仏の開発者たちが作るRPGをプレゼンしてもらった

イベントが始まり、Sandfall InteractiveのCEOにして本作のクリエイティブ・ディレクターのギヨーム・ブロッシュ氏(GUILLAUME BROCHE)と、同じくSandfall InteractiveのCOOにして本作のプロダクション・ディレクターを務めるフランソア・ムーリス氏(FRANÇOIS MEURISSE)が登壇しました。

まずはスタジオの紹介から。南仏のモンペリエにオフィスを構えるSandfall Interactiveは30人ほどの規模で、「ザ・メイナー」というコードネームのあるオフィスに居を構えるスタジオです(どうやらゲーム内にもこっそり出てくるようです)。

JRPGに影響を受けたと公言している通り、彼らは元々日本が大好きで、何度も来たことがあるとか。本作は全編日本語字幕がしっかりついているので、安心して遊ぶことができます。

さて、ゲームの紹介へ。本作『Clair Obscur: Expedition 33』には3つの柱があります。それはストーリー、ゲームプレイ、世界観。やはり往年のRPGを参考にしているためか「ストーリー部分には強い自信がある」とのことです。

本作の世界にはペイントレスという異界から来た存在がいて、その存在は毎年モノリスに数字を描いていき、徐々にカウントダウンをしています。なんと、描かれた数字より老いた人間は消え去ってしまうという残酷な力が働いており、人類はそれにひどく悩まされています。

主人公は探検隊33を率いるギュスターヴ。33の数字が描かれる前に、ペイントレスを打倒するため、冒険に旅立ちます。彼らは以前の探索隊が遺した軌跡を追いかけながら、一歩一歩ペイントレスに近づいていく……といったストーリーです。

本作はベル・エポック時代のフランスをイメージし、同国の伝説的な動物もたくさん出てくるという、とてもユニークな世界観を有しています。

そんな独特な舞台とキャラクターたちを立たせるために選び抜かれた声優陣は、これまたとても豪華! 『ファイナルファンタジーXVI』でクライヴを演じたベン・スターや、『ロード・オブ・ザ・リング』のゴラムでお馴染みのアンディ・サーキスまで出演しています。

ゲームプレイに関しても、伝統的なコマンドバトルRPGに、リアクティブシステムというリアルタイム制の仕掛けを盛り込んでいます。基本的にはじっくりとコマンドを選んで戦うのですが、敵の攻撃に合わせてパリィや回避をしたり、パーティーのスキル使用時にQTEが発生したりという仕掛けがあります。

「アクションがとんでもなく上手ければ、ノーダメージクリアも可能かもしれない!」と豪語しており「新しいRPGのツイストを楽しんでほしい」とのことでした。

また、キャラクターカスタマイズも幅広く「どんな形のビルドでも組める」とのことです。たとえば魔術師のルネというキャラクターですが、炎属性特化や氷属性特化はもちろんのこと、物理攻撃特化にもできます。JRPGにもCRPGにもないような自由度の高さを目指し制作したと話しており、これは相当な期待が持てそうです。

またワールドマップについても「グラフィッククオリティを落とさず、シームレスに移行できるように見せる工夫もしている」とのことでした。

音楽に関しても、ロリアン・テスタールという作曲家が5年以上制作しており、非常に幅広い曲を用意しています。Spotifyでも聴けるので、そちらでも楽しんでみたいですね。

美術技法と小説を参考にした……ストーリーテリングからバトルデザインまでを開発者に聞く

続いて、おふたりにインタビューさせていただくことも叶いました。そちらの模様もお届けします。

左からフランソア・ムーリスさん、ギョーム・ブロッシュさん

――本作はJRPGから着想を得たと仰っていましたが、具体的にどの作品なのでしょうか?

ギヨーム:主に『ファイナル・ファンタジー』シリーズの8・9・10です。ワールドマップの作りは7・8・9ですが。

他には、JRPGではありませんが『SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE』にも影響を受けました。特に回避の面においてですね。当然『ダークソウル』シリーズも好きです。寄り道の過程で中ボスとの壮大な戦闘が連続するところなどは、かなり色濃く影響されていると思います。

――ではストーリーについてお聞かせください。『Clair Obscur: Expedition 33』というタイトルはどういう意味を持っているのでしょうか?

ギヨーム:「クレール・オブスキュール」というのは、美術技法のことです。1800年代から使われてきました。

クレール・オブスキュール……強いコントラストを用いて明るい部分と暗い部分を際立たせ、立体感や劇的な効果を生み出す美術技法

我々はこの技法の「明暗」という点に注目し、本作のテーマと沿うものでしたので、採用しました。一見綺麗な世界なのに、ダークなストーリーが隠れているという点において、ゲームのタイトルにぴったりだったのです。もちろん、この時代の絵画もリスペクトしています。

――先に旅立った遠征隊の記録を追いかけるという設定は、ゲームプレイにおいてもストーリーテリングにおいてもかなり効果的に機能しているように感じられました。こちらのアイデアはどういったところから浮かんだのでしょうか?

ギヨーム:フランスの小説la horde du contreventが発想の根本にあります。この小説は、風がどこから吹いているのか気になった人々がそれを探しに行くという筋書きです。他には、登山においても、先を往く人の軌跡を辿っていくことがありますよね。その点も面白いので、本作のストーリーはそういったアイデアを元に作成しました。

フランソア:『la horde du contrevent』は感動的なストーリーですが、書き方が独特なので翻訳されていないんですよね。

――本作のストーリーでは、ペイントレスが毎年数字を描き、その年齢の人を消していくということをしていますが、つまりその数字よりも年上の人は一切存在しないということでしょうか?

ギヨーム:その通りです。ゲーム開始時点で、33歳より上の人間はいません。しかし、とあるキャラクターだけは生き残っており、主人公たちの前に現れます。彼が何故生きているのか? そこが物語のキーなんです。

――本作の構想はいつからありましたか?

ギヨーム:リアクティブシステムとコマンドバトルを思いついたのが6年ほど前で、そのあとに物語を付けていきました。ペイントレスらキャラクターたちを考えたのが4年前だったと思います。

――ゲーム全体はどれくらいのボリュームなのでしょうか?

ギヨーム:メインストーリーだけだと30時間ほどです。やりこみ要素を遊びきるとその倍はかかるでしょうか。サイドクエストにもカットシーンを用意したので、できれば隅々まで観てほしいですね。

フランソア:周回プレイもしたいという人のためにNEWGAME+も用意しています。装備も引き継げるので、違うビルドも試してみてほしいですね。

――バトルについてもお聞かせください。個人的にリアクティブ型のコマンドバトルに強く惹かれ、敵が早く攻撃する、ゆっくり攻撃する……などと、攻撃の予兆がテキストで表示される点が素晴らしいと思いました。この仕様になるまでにどんな工夫がなされたかについて教えてください。

ギヨーム:自分は『ダークソウル』シリーズの大ファンなのですが、本作を一人で作っていたとき、あまりに難しくしすぎてしまったんです。はじめて外部にテストプレイをお願いしたところ、誰一人ボスを倒せなかった(笑)。そこでようやく「やりすぎたかも!?」と思いましたね(笑)。

なのでボスを弱くする方法として、テキストを出すということを思いつきました。既存のパリィ主体のアクションゲームでは、敵が攻撃の直前に光るものもありますが、あれは写実的じゃなくなってしまうので採用しませんでした。

実は敵キャラクターの攻撃の直前にほんのちょっとだけスローモーションが入ったりもしていて、細かく調整しているんです。そういったものの積み重ねだと思います。

――本作の日本発売までの経緯を教えていただければと思います。

ギヨーム:本作のパブリッシャーはKepler Interactiveなのですが、彼らがセガとの間に入ってくれたので、日本のパッケージ版をセガから出すことが叶いました。自分たちは日本語も大好きなので、カタカナのパッケージを見たときは感動して涙が出てきました。

また、今回のイベントはIndie Freaksも手伝ってくれたのですが、そもそもKepler Interactiveのマーケット部門にIndie Freaksが関わっているので、その流れで来てくれたという経緯もあります。

――日本語ボイスを実装する予定はありますか?

ギヨーム:準備はしていませんが、反響次第では考えています。

――本作の英語声優は非常に豪華でしたが、彼らを選んだ理由をお聞かせください。

ギヨーム:非常に慎重に選びました。説得力と、人間味を持たせることができる俳優さんを選ばせていただきました。我々開発陣が声優さんたちひとりひとりにオファーを出していったのですが、結局交渉には何か月もかかりました。しかしそのおかげで、我々のストーリーを好んでもらえる人たちと仕事ができ、心を通わせることができました。

フランソア: Kepler Interactiveが我々の作品を愛してくれたおかげで、もっと大物を付けるべきだと後押ししてくれたのも重要です。感謝しています。

――これから遊ぶ日本のゲーマーにどういった点に注目してもらいたいでしょうか?

ギヨーム:ターンベースのRPGというと、最近だと敬遠されがちかもしれませんが、我々はそこにアクションを盛り込んだので、もう遊ぶのをやめてしまったという人でも楽しめると思っています。

フランソア:ワールドマップの作り込みと世界の広がりも感じていただければ幸いです。ペイントレスとモノリスにじわじわと近づいていく感じを味わってください。

――ありがとうございました。


ゲーム制作への想いが伝わるインタビューとなりました。美術技法や小説からの引用となかなかアンテナ感度の高いギヨームさんですが、思わず激ムズにしてしまった点はちょっとドジっ子ですね!

『Clair Obscur: Expedition 33』は、PS5/Xbox Series X|S/PC(Windows/Steam/Epic Gamesストア)向けに2024年4月24日の発売予定です。


Clair Obscur: Expedition 33 - PS5
¥6,294
(価格・在庫状況は記事公開時点のものです)
Clair Obscur: Expedition 33 (Original Soundtrack) Gustave Edition
¥600
(価格・在庫状況は記事公開時点のものです)
ライター:各務都心,編集:TAKAJO

ライター/ 各務都心

マーダーミステリー『探偵シド・アップダイク』シリーズを制作しているシナリオライター。思い出の一本は『風のクロノア door to phantomile』。

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編集/いつも腹ペコです TAKAJO

Game*Spark編集部員。好きな映画は「ダイ・ハード」、好きなアメコミヒーローは「ナイトウィング」です。

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