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野田力氏(左)。右はインタビュアーとして登壇したミリブロさん
10月5日にユービーアイソフトより発売されたCI Games開発の『スナイパー ゴーストウォリアー3(Sniper Ghost Warrior 3)』。本作の発売を記念したメディア合同のサバイバルゲームイベントが、千葉県にある屋内サバイバルゲームフィールドの「AIRSOFT ZONE DELTA(エアソフトゾーン デルタ)」にて開催されました。
前半ではゲームの様子をお伝えしましたが、この後編では、元フランス外人部隊の衛生兵・野田力氏のトークショー兼メディア合同インタビューの内容をお伝えします。戦場でのスナイパーにまつわるエピソードや入隊の経緯、治療方法の一例など興味深い内容となっています。また読者プレゼントも告知するのでぜひ最後までご覧下さい。
――ゲームや映画などで衛生兵という兵科はよく出てきますが、実際にはどのようなことをするのでしょうか。
野田氏:僕の場合は戦闘中隊の衛生兵なので、バリバリ最前線へ出ます。 負傷者が出ない限りは僕も歩兵なので戦闘員というわけです。負傷者が出た場合は、まずは敵を殲滅か牽制し、相手がこっちを攻撃できない状況を作り上げたら助けに向かいます。他の戦闘員たちが警戒したり戦闘したりしているうちに治療を施して遮蔽物まで運びます(もしくは遮蔽物まで運んでから治療、その時の状況によって順番は変わる)。原則、遮蔽物に入ってから治療する方がいいんですけどね。それが私の役割です。その後は、後方の支援中隊のもとへ運び、さらなる医療行為を行います。あくまでも最前線の衛生兵であるため、応急処置で決定的な治療ではありません。
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――では結構エグいものも……?
野田氏:そうですね、いい経験になったと思います。
――実際アフガニスタンへ派遣された際、スナイパーの戦友もいらっしゃったかと思いますが、どんなエピソードがありますか?
野田氏:小隊に2人、厳密に言えばスナイパーではないのですが、スナイパーライフルを使って射撃する、アメリカで言えばマークスマンにあたる人がいます。その内の1人から聞いた話があります。
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「ある村に入っていこう」という時にテロリストがたくさんいました。2人が配置を決め、しゃがむなり、土の塀に銃を載っけるなりで構えている時に、敵のスナイパーを見つけたそうです。正確な距離はわからないのですが、おそらく400mほど。2人で狙撃を始めるのですが、なかなか当たらず、そうしているうちに向こうも気づいて撃ってきて、2対1の撃ち合いになったんですよ。結構、長い間撃ち合っていたみたいなのですが、お互いなかなか当たらず、どっちかが消えて終わったという、ちょっと恥ずかしい意地の張り合いみたいなのがあったそうです。途中ゲーム感覚になったのではないかとは思いますが、恐怖とかはなかったみたいですね。
――その時は支援などはなかったのですか?
野田氏:後方の丘のあたりに、2kmほど飛ぶ「ミラン」という対戦車ミサイルや、12.7mm弾を使う「PGM ヘカートII」という狙撃銃がありました。狙撃銃のほうは何をしていたのか不明ですが、ミランに関しては、何よりも民間人の死傷者を出さないっていうのが当時の我々の優先だったので、撃たなかったのかなと。単純に見つけられなかったのかもしませんけれどね。
――スナイパーには「一撃必殺」のようなイメージがゲームなどであるのですが、意外とそういうわけでもないのでしょうか。
野田氏:マークスマンなので上手いはずなのですが、戦場に行くとそういうことも起きるのかなって思いますね。本当のスナイパー小隊のほうは一撃必殺かもしれませんが。
――野田さんはいつ殺されるかもわからない最前線に行かれている時、怖くはなかったのですか?
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野田氏:それが、怖くなかったんですよ。おそらく実感がなかったんでしょうね。弾とかがヒューンとかピューンって飛んでいったり、恐らく50~80メートルぐらいですが、ロケットが着弾したことがあったんですよ。でも、怖いとかではなくて、とりあえず伏せようみたいな。中隊のみんなも全員伏せて、ちょっとした岩があるところへまるで虫のようにガタガタガタと、這っていったのですが。面白いですね。
――面白い!?
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野田氏:その光景を見ていると。自分も伏せながらみんな同時に伏せるんですよね。「あー、あの人も伏せているわ」みたいな(笑)。そんな光景は面白いです。みんなシンクロして同じ動きをするので。
――外人部隊にはいろいろな国籍の方がいると思いますが、とっさに叫んだりする時には何語が出るのでしょうか?
野田氏:フランス語が出ます。山岳任務の時に、「ゴォー」って羽田空港とかの滑走路近くにいるような音がして、最初「あれ、ジェット機か?」と思ったらすぐに頭の中で「あ、ロケットだ」ってわかって。RPGってあるじゃないですか、よく映画でも「アールピージー!」って叫んでいますが、その時はフランス語で「エルページェー!」と出ましたね。他の人も言っているし、伏せてドーンと鳴って「あっ、誰か死んだんじゃないかな、怪我したんじゃないかな」って思って、医療用のバックパックを背負って「行こうかな」と思ったら、平然と撃ち返しているんですよ。「あぁ、大丈夫か」と思って行かなかったんですけれど。
――冷静ですね。
野田氏:後でわかったのが、RPGではなくフランス軍が「シコム」と呼んでいる中国製のロケットで、3000m先から飛んできました。
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――場所は分かっていたのですか?
野田氏:なにかが「チカッチカッ」と光っているのが見えたんですよね。その後は迫撃砲で攻撃して、初弾が少しずれていたのですが、山にいる隊長が「○○度」と指示し、2発目でやっつけました。
――やっぱり1発目で調整するんですか?ある程度のあたりをつけてこの辺で……といったように。
野田氏:外れたらもちろん修正します。一発で当たれば一番いいですけれど。その後少ししてから攻撃ヘリがやってきました。最初から来てくれたらよかったんですけど、そうもいかないですね
――他に、スナイパー絡みでエピソードはありますか?
野田氏:本当に断片的なお話ですが、先ほどお話しした12.7mm弾を使うPGMという対物狙撃銃を使っていた兵士から聞いた話があって。ある時、テロリストを撃ったら上半身に当たって、「グシャッ」となりながら逆さにひっくり返ったとか…。
――何kmぐらい先だったのでしょうか。
野田氏:正確にはわかりませんが、大体あのような人たちが配置されるのは、1kmぐらい離れたところですね。
――衝撃的な話ですね。
野田氏: 銃弾が当たった時の人体への影響もその時々で、よく「入っていく穴は小さく、出ていく穴が大きい」と言うじゃないですか。これは本当に教科書上の話で、自分が見た中では「小さい穴で、小さい穴」というのもありました。
――「スポーン」っと貫通した感じでしょうか。
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野田氏:そう。「スポーン」っと。アフガン兵の人が腕を撃たれたんですよ。その時は、入った穴も出ていく穴も小さくて。動脈も神経も避けて、骨と骨の間を抜けていましたね。重症といえば重症なのですが「命には関わらない」っていうことで、同僚の衛生兵が「メダルをもらうには最高の怪我だ」って言っていましたね。ちなみに、撃たれた直後の怪我の写真が家にあります。
――銃弾の種類にもよるのでしょうか?
野田氏:そうですね。そのときは、AKもしくはPKM機関銃の7.62mmでした。足を撃たれた戦友も「小さい穴で、小さい穴」 でしたね。もしかしたら、体の中はごっそりいっているかもしれないですけれど。「入った穴は小さく、出ていく穴は大きい」というのは、言い切れるものではないですね。統計的にはそうなのでしょうけど。
どこから弾が入ったのか、わからない場合もありますからね。わかったところで処置は一緒ですが。アフガンのスナイパー関連はこれくらいですかね。今もまだ繋がりがあるので、聞けばどんどん出てくるかもしれません。
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