この研究を行ったのはDayi Lin氏、Cor-Paul Bezemer氏、Ying Zou氏、Ahmed E. Hassan氏ら4名。研究の趣旨としては、Steamでのレビューがモバイルタイトルのものと同様の傾向にあることから、同じ様にリサーチや考察が可能であるのか、そして新たなモバイルアプリに関するリサーチの方向性開拓の可能性調査とのこと。
研究は2016年3月より行われ、当時Steamに存在していたタイトル8,025本の内、25件以上のレビューが付いていた6,224本と、総計10,954,956件のレビューについて実施されました。平均的なSteamレビューは、14歳程度の読解力で書かれた30単語程度の内容であり、早期アクセスゲームでは長い傾向が、逆に基本無料タイトルでは短くなる傾向であるとのこと。
また、早期アクセスタイトルやインディータイトルについては、レビュー内容に「機能の要望」や「ゲーム内容への提案」が多く含まれており、Lin氏らはこれをインディーゲームに対するプレイヤーコミュニティの積極性がもたらしたものでは無いかとしています。
同研究ではSteamのレビューの内、42%がデベロッパーにとって価値のあるフィードバックであると共に、否定的なレビューの多くに価値があると推察。「プレイヤーはバグよりもゲームデザインに不満を抱いている」と延べ、全体のレビューにおけるバグへの言及が僅か8%であったことに対し、34%のユーザーがゲームの問題点へと言及していたとしました。この割合は否定的なレビューの場合更に増加し、バグへの言及は17%、ゲームデザインへの言及は過半数を超える57%にも至っています。
なお、バグについてはフリーズやクラッシュを理由とした否定的なレビューに対し、奇妙な現象などは肯定的なレビューでの言及が見られたとのことです。レビューまでのプレイ時間については、殆どの場合13時間前後であったものの、否定的なレビューでは7時間以内、基本無料タイトルでは1時間以内でのレビューが目立ちます。また、インディータイトルではプレイヤーが満足するための時間は非インディーのタイトルよりも短くなっているとしています。
他にもジャンルごとのレビュー傾向の違いなどにも触れたこの研究。プレイ時間の表示がユニークな洞察を提供するとして、アプリストアなどへの導入を提言すると共に、Steamのレビューでは、モバイルアプリのリサーチからは度々漏れてしまう重要な点が明らかにされているため、モバイルアプリのレビューの再考が必要であろうと結論づけています。
本研究によれば、ユーザーのゲーム改善の要望の捌け口にもなっている点が見られる否定的レビュー。デベロッパーにとっては耳が痛いものや、いわゆる“無茶振り”もあるものの、それでもそのレビュー群と向き合っていくことも重要なのかも知れません。
論文はこちらのサイトより閲覧可能です。
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