これからも我々を日々驚かせ楽しませてくれるであろうVR周辺の文化ですが、明るい側面ばかりではありません。米リサーチ会社が公開した調査結果によると、2人に1人の女性がVR内でセクハラの被害に遭っているらしいのです。本当だとしたら恐ろしいですね。……と、いうことで、今回はVR文化の最前線と言えるであろう『VRChat』内で、ハラスメントの実態について数日間にわたりあの手この手を使って実地調査をしてまいりました!
と、いうことで女性名かつ「JP」付きという、筆者が考えうる「ハラスメントされやすそうな条件」をそろえたアカウントを作成し、フリーウェアのボイスチェンジャーも用意。軽く「女声をそれらしく出すには」的なウェブページに目を通した上で『VRChat』に潜ってみました。それは釣りというのでは?と聡明な読者の皆様はお考えになられるかもしれませんが、これは社会的意義のあるれっきとした調査です!
Unity-chanのアバターに着替えました。『VRChat』内では最初から選べるもっとも典型的なアバターのうちの一つです。典型的故にあまり目立たないのでこのような調査には不向きかとも思いましたが、新人だとするなら逆にリアルかな?という狙いもあります。
まずは、アジア人が多く、そのアジア人と交流を持ちたいと考える非アジア系の人が多いという場所の噂を得たので「Japan Shrine」のマップに行ってみます。そして最初にわかったのは、ここ最近、爆発的に韓国人プレイヤーが増えているということでした。親切で日本語が流暢な韓国人プレイヤー男性に話をしてみると、「韓国で有名なYouTuberが『VRChat』をプレイし、韓国人という理由だけで非アジア系の人にすごいモテている様子が公開されたので『これはモテるのでは?』と考えた韓国人の間で今すごく流行っている」と冗談めかして語ってくれました。
『VRChat』のプレイヤーにはアニメ的なコンテンツに関心のある諸外国人の方が数多くいらっしゃいますし、パブリックで会話をしているとそういう方に「日本語を教えてくれ」などといきなりせがまれることもよくありました。なので体感として「アジア人が人気がある」というのはある程度事実だと思います。
韓国や日本をはじめとしたアジア圏の男性は基本的に初対面の女性にはジェントルな印象を持ちました。むしろ英語圏の方のほうがいきなり「オチンチンハスキデスカ?」などと話しかけてくる場合が多かったです。しかしこれは男性アバターかつ非ボイスチェンジャー環境で話していても起こった現象ですので、おそらく「下ネタで話しかければ面白がってもらえるのでは?」というようなコミュニケーションなのだと思われます。とはいえ不快に感じられるかたもおられるでしょうから『VRChat』をプレイなさるときは「いきなり下ネタをかまされるリスクがある」ということを覚えておくことをオススメします。
オチンチン関係の下ネタはログインするたび、ほぼ100%(しかも毎回別人から)投げかけられました。また一部の英語圏プレイヤーはこちらが非英語話者だと見るやいなや「わからないだろう」と英語での罵倒をしてくることがありました。とはいえそれは筆者が「ちょっとぐらいは英語の罵倒語を知っている」からわかるのであって、他の言語で同様の罵倒をされてないと言い切ることはできませんが。
続いて「Japan Town」のコンビニ内にて日本人プレイヤーのみなさんに話を聞くことができました。彼らがいうには「パンツの覗き見などは、女性アバターでプレイしている男性に対してやることのほうが多いと思う」とのことでした。筆者もたしかに女性アバターの男性同士が楽しそうに触れ合っているさまはよく目撃しました。
また「セクハラはもちろんあるが前よりはずいぶん減った。大音量で音楽を流すなどの荒らしや、不気味なアバターで人を追いかけ回すプレイヤーも中にはいる。この間もクモのアバターで歩いている人がいて物議を醸した」という証言も。筆者もたしかにそういうプレイヤーと何度か出会いましたが、『VRChat』にはブロック機能があるので、適切に対処すれば嫌な思いをするのは一瞬で済みます。
何日か潜っていると「あの人ボイスチェンジャーだよ」などとカタコトで外国人に指摘されることも増えてきましたので、友人の女性『VRChat』プレイヤーに協力してもらうことにしました。セクハラされるリスクがある、嫌がらせを受ける可能性があるという調査であることはもちろん事前に説明し、大丈夫だという了承も得ました。
しばらく韓国人や中国人、ドイツ人などの諸外国人の方とコミュニケーションをとりましたが終始会話は和やか。ナイフを取り出して刺してくるなどのちょっとしたじゃれ合いはありましたが、筆者としては一時期よりずいぶんと穏やかになった印象を持ちました。
道中、『サイレントヒル4』を彷彿とさせるちょっと怖い顔デカアバターにであったり、大音量を流す荒らしや絶叫する人などに出会うこともありましたが、ずいぶんと頻度は減った印象です。アジア人があまりいないであろうマップにも行ってみましたが、荒らしはまだいるにせよ、個人的な嫌がらせを受けることはほとんどありませんでした。途中で一度、ちょっと怖い感じのアバターに追いかけ回されるということがあったぐらいです。それと、一時は本当にたくさんいたウガンダナックルズのアバターがずいぶんと減ったようにも感じました。
なぜだかはわからないですが、かわいい鳥で有名な「エナガ」を模したアバターのプレイヤーを非常によくみかけました。いったいどういうミームなのかはわからなかったですが、こういうよくわからない流行があるところも非常に『VRChat』らしくて楽しいところです。
……と、いうことで、数日間潜ってみた筆者としましては、まだ荒らしやセクハラなどはあるにはあるが、一時期の(ナックルズ全盛期の)激しかったころよりは、むしろずいぶんとマトモになったという印象を受けましたし、日本マップにおいては韓国人をはじめとするアジア人プレイヤーの増加も治安が良いことに関係あるのかなとも感じました(前述の通りハラスメントをしてくるプレイヤーは体感的にはほぼ英語圏のプレイヤーで、日中韓をはじめとするアジア人プレイヤーは基本的にジェントルかつ柔和でした)。
まだまだ完全に安全とは言い難いですし(「完全に安全」なんていうことはインターネット上においてはムリだと思いますが)、著作権的な問題も残る『VRChat』。課題はありつつも、通報機能の実装などによりちょっとずつ良い方向には向かっているのかなと思われます。リスクはもちろんゼロにはなりませんが、海外交流は楽しいですし、心温まる出来事もたくさん起こります。みなさんも旅行に行くつもりで、恐る恐る覗いてみてはいかがでしょうか!
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