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アクションフィギュアやスタチューなど様々な形で世に出されているゲーマー向け立体物。ゲーム系プラモデルは、『アーマード・コア』や『メタルギア ソリッド』などの立体物の他にも、『エースコンバット』のコラボモデルなど多数存在します。
しかしながら場合によっては、組み立てや塗装が必要なことからグッズとして手を出しにくく、難易度もパーツ数だけではわかりません。そこでこの特集は、あまりプラモデルに馴染みの無いユーザー向けに、組み立て難易度や可動範囲などに注目し、プラモデルをレビューします。
今回は、『エースコンバット3 エレクトロスフィア』の新国際連合共同体(NUN)の治安維持対策機構UPEOにおける特別航空部隊SARFカラーを再現した、ハセガワとバンダイナムコエンターテインメントのコラボプラモデル「ユーロファイタータイフーン 単座型 “エースコンバット ユーピオ”」です。
2017年2月に発売された本コラボプラモデルは、『エースコンバット3』に登場するコフィン搭載改修が行われた“EF2000E タイフーンII”を完全に再現したものではなく、『エースコンバット6』のDLC第4弾で配信された『スペシャルカラー機体 Typhoon -UPEO EMBLEM-』をベースにしたものです。しかしながら、組説の解説は『エースコンバット3』の世界観と登場人物の解説が新たに書き下ろされているため、『3』を対象としたものであるようです。
なお『エースコンバット』シリーズは、PC/PS4/Xbox One向けにシリーズ最新作『エースコンバット7 スカイズ・アンノウン』が2018年の発売を控えており、2017年のGamescomで公開された公式プレイ映像では、EFタイフーンで戦闘する姿が映されていました。また『エースコンバット3』は、2019年で発売から20周年を迎えます。
ハセガワの『エースコンバット』コラボプラモデルは、本キット以外にも『エースコンバット アサルト・ホライゾン』のDLCで登場したクリエイターワークスシリーズの1/72 「エースコンバット 震電 II」や、『エースコンバットZERO』のF-15Cガルム隊カラー(サイファーとピクシーの両機)や、『エースコンバット5』のラーズグリーズ隊とウォードッグ隊カラー、そして『エースコンバット04』のF-22メビウス1とSu-33 フランカーD黄色の13のコラボプラモデルが発売されていました。
他にも『エースコンバット』関連の架空機では「震電II」の他にも、過去にバンダイから多色成形+スナップフィットの「EXモデル 1/100 ファルケン」が発売されていました。また2017年にコトブキヤからは、『エースコンバット インフィニティ』版の1/144 XFA-27が発表されています。
本日より一般公開がはじまった静岡ホビーショーにて、コトブキヤさんのXFA-27完成見本が展示されています。 シェイプはもちろんモールドもシャープなので、是非現物をご確認ください! [kanno] pic.twitter.com/HOcNDJUdmO
— ACE COMBAT (@PROJECT_ACES) 2018年5月12日
■全てが1色のパーツで構成されたスケールモデル―全塗装の順番を考える
「ユーロファイタータイフーン 単座型 “エースコンバット ユーピオ”」は、2012年に発売された1/72 「ユーロファイター タイフーン 単座型」に専用の塗装指示と『エースコンバット3』のデカールと専用のディスプレイアームが付属したモデルです。ランナーは全て灰色で構成されており、細部を含め全体的な塗装が必要になります。このキットの最大の特徴は、武装セットである1/72「ヨーロッパ エアクラフト ウェポンセット」が同梱されているため他に買い足す必要がない点です(AIM-9などアメリカ系ミサイル搭載の場合には別途購入する必要あり)。
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一般的なバンダイやコトブキヤのプラモデルと違う点は、全てが灰色に染まったランナーでしょうか。ミリタリースケールモデルは、多色成形とスナップフィットの導入が遅く、艦艇を中心としたフジミの「艦NEXT」や海外アカデミーの「MCP(Multi Color Parts)」シリーズ、ハセガワやモンモデルの一部艦船模型などに留まっています。このことから制作には塗料と接着剤が必要になるため、1つ1つ説明しましょう。
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通常プラモデルの組み立ては、組み立て説明書の順を追えば間違えはありません。しかしながら単色のみランナーで構成されたプラモデルでは、塗装手順を考えるとある程度組説の順番を無視して組み立てたほうがより簡潔に済む場合があります。そのため、塗装/組み立て順を少しアレンジし、コックピット→パイロット塗装+シートに取り付け→胴体とカナード+両翼取り付け→キャノピー取り付け→細部塗装と、小さいものから大きい順に組みたてます。
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初めに組み立てるのは、機体の胴体とコックピット周辺です。コックピットは座席とその周辺が分割されていることに加え、塗装指示がなされています。そのためコックピット内部は、Mr.カラー317(グレーFS36231)とつや消しブラックです。続けて座席を組み立て接着します。指定では、座席とパイロットの装着は後ですが、キャノピーのマスキングを含めた全体塗装を行う関係から先に取り付けます。パイロットの指定色はC55カーキですが、ユーロファイタータイフーンの公式サイトで掲載されているパイロットの写真を見てみると緑に近いスーツを着ているので、今回はアクリジョンのN80カーキグリーンで塗装しました。
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機体内部とディスプレイの塗装/デカール貼り付けを終えたら組み立てに入ります。HUDの外枠はC317で、内部にはC138クリアグリーンを塗装。HUDのC138クリアグリーン塗装は組説にありませんが、塗ると外部から見たHUD表現に近づくため、小さくとも大きなティテールアップ表現です。
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また小さなHUDパーツは、セメダインの「ハイグレード模型用」接着剤を使いました。この接着剤は硬化時間が長いという難点を持っていますが、水性で安全性が高く、乾燥後も接着面が白化しないという大きな利点をもっています(通常、模型用の接着剤はプラスチックを溶かして接着する方式。そのため、汚れが目立ちやすいクリアパーツとの相性はあまり良くない)。
ここで、機体の塗装を進めるために塗料の調合を行いましょう。指定では、“機体色”を「C1光沢ホワイト」70%+「C336 ヘンブ BS4800/10B21」30%で、“翼端等”を「C336 ヘンブ BS4800/10B21」60%+「C19 サンディブラウン」40%の割合で調合します。
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調合はデジタル計量機などを用いて正確に行っても良いですが、指定色や設定色に近づけるように目分量で「だいたいこれぐらい」を目標に色を合わせても大丈夫です(組説の指定色がそもそも設定/実機と微妙に異なる場合もあるため)。塗料を調合すると『エースコンバット3』 ゲーム説明書のカラーに近いことがわかりました。そのため空き瓶を用いてカラーを作り出しました。
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模型用の接着剤はプラスチックを溶かして固める方法であるため、接着剤によってはみ出た部分を紙やすりなどで削ると一体となった表面が現れてくる。
他にも垂直尾翼近くの凹モールドが消えかかっていたため、スジ彫りツールを使い彫り直して強調した
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次に胴体の組み立てです。胴体にはミサイルや増槽をささえるランチャー取り付け穴が開かれていないため、1.0mmと1.2mmのドリルとピンバイスを用いて開口します。開口したら胴体の接着する前に、まず翼端を塗装しましょう。なぜなら先に翼端を塗装すれば、胴体塗装時にマスキングテープを貼る範囲を小さくすることで、全体的な使用量を少なく出来るからです。
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また塗装には、入門用エアブラシの「プロスプレー ベーシック」を使いました。通常エアブラシによる塗装には、エアブラシ本体とコンプレッサーが必須と言われています。しかしながら、部屋や住居環境によっては塗料の粉末を外気へと排出する塗装ブースを整備するのは難しく、費用も大きくかかります。「プロスプレー ベーシック」は、価格も手軽で性質がエアブラシに近くエア缶によって屋外でも塗装出来ることが大きなポイントです(他にも、スプレーツールには缶スプレーにさらに近いガイアノーツの「イージーペインター」がある)。
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続いて外で塗装します。プロスプレー/缶スプレーの塗装時には、ダンボールを用いた簡易的な塗装ブースを作り、塗装面に風が当たらないようにしています(風による噴射膜拡散防止に加え、風によって塗装面に気泡が出来ないようにする目的もある)。ここでは胴体翼端と、垂直尾翼を塗りました。また着陸装置部分は、白塗装を行う関係から先にマスキングしてあります。塗装時には、ラッカー塗料の粒子を吸い込まないようにミネシマの「塗装用防毒マスク(有機ガス用)」を使用しました。
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塗装し、塗料が乾いたらマスキングに入ります。前回レビューでご紹介したコトブキヤ 1/100「メタルギアREX」の要領で、必要な部分だけを保護します。マスキングを終えたら胴体を取り付け、キャノピーを「ハイグレード模型用」で接着し、キャノピーのマスキングも行います。キャノピーのマスキングにはテープだけでなく、乾くと薄い被膜として使用できる液状の「マスキングゾル改」を併用しました。これを使えば大部分をテープで、角などテープを貼りにくい場所をマスキングゾルで塗ればお互いの長所を引き出して、保護することができるからです。胴体色を塗り終えて乾燥したらマスキング部分を取り外して機首を取り付けます。
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