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SomaSimとKasedo Gamesは、ビル経営2Dシミュレーションゲーム『Project Highrise』の新DLC「Brilliant Berlin」を配信しました。それと同時に、待望の日本語表記もサポート。今作はリリースから2年近く経過しており、DLCやModの拡大が順調に進んでいます。今回は晴れて日本語化されたということで、ゲーム本編のプレイレポートをお送りします。
ビル経営者となって整備・拡張!そして企業を誘致しよう
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『Project Highrise』は2Dサイドビューで描かれるビルを運営する経営シミュレーションゲーム。『The Tower』シリーズをご存知の方はすぐにピンと来るのではないでしょうか。『Project Highrise』も同じように、企業や入居者を誘致して得た賃料を使って、ビルの拡張や設備投資を進めていき、より高度な企業や設備を誘致可能にしていくというシステムになっています。ゲーム内にはチュートリアルが実装されており、こちらもすべて日本語化済みなので問題なく基本操作を習得できます。
ゲームのメインは「インフラ管理」
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『Project Highrise』のプレイは「ビルのインフラ管理」がメインとなり、電気・ガス・水道といった能力が不足していないか常に気を配りながら、ビルを拡張していくことになります。企業や入居者を誘致すれば、それに応じて要求されるインフラが増大するので、事前に「ビルの能力」を把握していなければなりません。要求に対して能力が不足すると、彼らはあっという間に退去してしまいます。そうなると、せっかく負担しているインフラ維持費に対して賃料を得られず赤字に陥ってしまう……というわけです。
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基本的な生活インフラ以外にも、彼らは様々なサービスを要求してきます。業務に必要なコピーサービス、清掃員、パソコン修理サービス、飲料水の宅配などなど……より高度な企業や店舗を誘致しようとするならば、より複雑で高コストなサービスを用意しなければなりません。
ビルをメンテナンスするタイプの設備や従業員は、基本的に地下へ配置されますが、彼らもまた「ビルの入居者」です。24時間体制で務める従業員もいれば、作業途中でもお昼を食べに飲食店へ走り出す従業員もいます。『Project Highrise』では、入居者達が出勤してから帰宅するまで、ひとりひとりしっかりと描画されますので、入居者達の生活の流れを眺めて楽しむこともできます。
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企業や店舗はインフラの他にも「騒音」「臭気」といった環境を重視する場合があり、高度な物件(本社クラスの事務所を誘致するなど)であるほど、これらの要求は難しくなっていきます。このようにして、はじめに思い描いていたビルの形と、入居者達の要求との間でミスマッチが発生していき、運営・拡大に頭を悩ませることになります。ビル管理者としての手腕を問われる場面です。
シミュレーションとしては「ライト」な部類
ここまではゲームの基本的な部分を紹介しましたが、『The Tower』を知る読者であれば読めば読むほど「いったいなにが違うのか」と感じるのではないでしょうか。そこで、ゲームプレイの比重に視点を絞って両作の違いを探っていきましょう。
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まず「インフラ管理と環境配慮以外の部分」については、シンプルな判定がなされています。企業を誘致すれば、その瞬間から一定数の入居者が増え、毎日の家賃収入へダイレクトに加算されます。収支計算については「0時の瞬間にすべて行われる」システムとなっており、各企業や店舗の業務がどれだけうまく果たされているかなどは考慮されません。
100ドルの賃料の企業は、退去しない限り毎日100ドルきっちり払ってくれますし、毎日100ドル負担しなければならないインフラは、どれだけ使用率が変動しても100ドルの負担から変わることはありません。つまり「お金を貯めたい」と思ったのならば、1日の収支がプラスだと確定した段階でただ何日も放置すればよいということになります。
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また『The Tower』との大きな違いは「トラフィック管理の比重が小さい=入居者の導線をあまり考慮しない」という点が挙げられます。エレベーターは入居者が各階層を移動する手段として機能しますが、なんと渋滞が発生しないのです。エレベーターの台数がどれだけあるとか、何階から何階まで運べる設定にするだとか、そういったものは存在しません。ほとんど入居者はエレベーターで瞬間移動しているような形で処理される為、極端な例として1台まっすぐエレベーターが通っていれば問題ないということになります。
『The Tower』のように、常に頭を悩ませるタイプのシミュレーションを求めるプレイヤーにとっては、やや「ライト」だと感じるはずです。肩の力を抜いて臨むゲームではないでしょうか。以上の構造から、「ゲームとして楽しむ」ならば制限付きの課題をクリアするシナリオモード、「箱庭として楽しむ」ならば無制限モードで遊ぶのが良いでしょう。
『Project Highrise』ならではの特徴とは
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『The Tower』と比較すると、シミュレーションとしてシンプルな構造ではあるものの、後発の同系ジャンルとしての強みがあります。それは「建築の自由度が高い」こと、「空間の装飾が豊富である」ことです。一度のゲームの中で、完全にふたつ以上へ分かれたビルを建築してしまうことも可能で、中には「広場」という公共部分向けの部品も存在します。
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広く確保したロビーや、余ってしまった空間への装飾もかなりの種類が用意されていて、これらはゲーム中にコストゼロでいつでも設置・撤去が行えます。小さなイスや植物、照明や壁紙といったものを細かく配置できるので、うまく活用できなかった空間にも「らしさ」を与えられます。DLCやMODでも追加されるので、このあたりは現代のゲームとしての魅力とも言えるでしょう。
また『Project Highrise』は、ゲーム中にプレイヤーがその場で対応しなければならないランダムイベント(泥棒・火災・VIP接待など)がありません。放置してお金を稼げる原因となっており、瞬間的なプレイヤースキルは問われないものとなっています。
どのような「経営シム」好きにフィットするのか
筆者としては、同系統のマネジメントシミュレーションと比べてみると……『SimCity』よりは『Cities: Skylines』に近く、更に言えば『Cities: Skylines』よりは『Planet Coaster』に近いのではないか、と感じました。経営に四苦八苦するというよりは、より自由に運営するといった印象です。また、住民の自然発生を狙うというより「好きなものを好きなところへ配置する」というポイントについても同様ですね。
もし『Factorio』や『Simutrans』のようにガチガチのシミュレーションで眼が痛くなってしまったら……『Project Highrise』でキレイでリッチなビルを作ってみるのもいいかもしれません。
『Project Highrise』PC版はSteamにて1,980円にて発売中。Android/iOS向けにも販売されています。