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1987年に発売されたファミコンソフト『デジタル・デビル物語 女神転生』に端を発し、独自の進化・発展を遂げてきた『女神転生』シリーズ。1992年には『真・女神転生』が始まり、現在『真・女神転生V』が開発中と、ゲーム業界の最前線を走り続けています。
この『女神転生』シリーズから始まった流れは、『真・女神転生』のみならず、数多くの作品を生み出すことにも成功。携帯ゲーム機を中心に広がった『女神転生外伝 ラストバイブル』や、シミュレーションRPGという新たな方向性を切り開いた『魔神転生』、“もう一人の自分”と向き合うジュブナイルRPG『ペルソナ』、過酷な環境で生き残りを模索する『女神異聞録デビルサバイバー』、主人公が悪魔へと変ずる『DIGITAL DEVIL SAGA アバタール・チューナー』、少年少女の活躍を描く『デビルチルドレン』などは、いずれもシリーズ展開を実現するほどの盛り上がりを見せます。
特に『ペルソナ』シリーズは、2D対戦格闘やリズムアクション、ナンバリング作の主要メンバー同士がパーティを組む『ペルソナQ』シリーズなど、更なる展開へと繋がる勢いを見せるほど。また、シリーズ作のみならず、『真・女神転生if...』や『真・女神転生 NINE』といった単体作品も、当時大きな注目を集めました。後にパワーアップ版が出た『真・女神転生 STRANGE JOURNEY』や、スマホ向けの展開となる『D×2 真・女神転生 リベレーション』といった作品も、この大きな流れを語る上で外せません。
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そしてもう一つ、独特の展開を遂げて多くのゲームファンから人気を得たのが、『デビルサマナー』シリーズです。この『デビルサマナー』シリーズは、『真・女神転生デビルサマナー』が1995年に登場。その後、2作目となる『デビルサマナー ソウルハッカーズ』がリリースされたことで、シリーズ展開が決定しました。
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この『デビルサマナー ソウルハッカーズ』は、まずセガサターン版が1997年11月にお披露目。そして、今からちょうど20年前となる1999年4月8日に、新要素を加えたPS版が発売を迎えました。今回は、この20周年を祝い、『デビルサマナー ソウルハッカーズ』の魅力や、『デビルサマナー』シリーズの流れを振り返ってみたいと思います。
また、『デビルサマナー ソウルハッカーズ』に関するコメントを、事前に読者の方々から募らせていただきました。その生の声もこちらで紹介しますので、合わせてご覧ください。
◆もうひとつの『真・女神転生』を描く、『デビルサマナー』シリーズ
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『デビルサマナー』シリーズ一作目のタイトルは、『真・女神転生デビルサマナー』。シリーズ作品に限ると、『真・女神転生』をタイトルに冠するのは、本家の『真・女神転生』と『真・女神転生 デビルチルドレン』、そして『真・女神転生デビルサマナー』のみです。
『真・女神転生』シリーズでは、東京が崩壊するなど、現代とは一変した状況が舞台となっていますが、『真・女神転生デビルサマナー』と『デビルサマナー ソウルハッカーズ』では大きな異変が起こることなく、現代日本に近しい世界観がベースとなります。
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悪魔や天使が登場し、時に手強い敵として立ちはだかり、時には頼もしい味方として加わる『真・女神転生』シリーズの魅力は、『デビルサマナー』シリーズも踏襲。その上で、異なる舞台で独自の物語を展開しているので、もうひとつの『真・女神転生』を描いているとも言えるでしょう。
『真・女神転生』シリーズファンにとって刺激的な派生作になった『真・女神転生デビルサマナー』は好評を博し、メインキャラを一新しながらも現代日本を舞台とした『デビルサマナー ソウルハッカーズ』にその魅力が受け継がれます。
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その後も『デビルサマナー』シリーズは続きますが、ここで更に一変。シリーズ3作目として登場した『デビルサマナー 葛葉ライドウ 対 超力兵団』では、時代を大正に移し、戦闘もコマンド型RPGからアクション要素のあるバトルへと変更。時代背景に合わせて「COMP」も登場せず、主人公自身の能力で悪魔を喚び出し、使役します。
同一シリーズ内でも、大きな変革を躊躇うことなく行う『デビルサマナー』シリーズ。その革新的な姿勢に、ゲームファンが惹かれるのも無理のない話です。この刺激的な展開は、続編『デビルサマナー 葛葉ライドウ 対 アバドン王』も生み出しました。ですが残念なことに、『デビルサマナー』シリーズの展開自体は、こちらが現時点における最後の作品となっています。
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『デビルサマナー 葛葉ライドウ 対 アバドン王』が発売されたのは2008年10月なので、10年以上も沈黙を保つ形に。『女神転生』シリーズ全体として見ると、『真・女神転生』や『ペルソナ』などが活発に動いているので、悪魔と人が紡ぐ物語は今も息づいていますが、『デビルサマナー』シリーズの再始動を持ち望んでいる方も少なくないことでしょう。今後の動向に期待したいところです。
◆今の時代を先取りした『デビルサマナー ソウルハッカーズ』─チームメンバーと共に悪魔に挑め!
『デビルサマナー』シリーズの2作目として登場した『ソウルハッカーズ』は、タイトルからも読み取れる通り、主人公はとあるハッカーチームに属しています。リーダーのスプーキーをはじめ、いずれも個性的な面々ばかり。戦闘に直接関わることはありませんが、異変や調査などに対してチーム全体で当たるため、その一体感はなかなかのもの。拠点に戻ると仲間がいるというのは、やはり嬉しいものです。
このハッカーチームが獲物として選んだのが、ネットワークが社会を支える天海市。最先端の情報モデル都市として注目を集めていることもあり、ハッカーチームとしては見逃せない対象と言えます。『ソウルハッカーズ』一作目が登場したのは、今から21年以上前の1997年11月。すでにインターネット環境などは広まりつつあったものの、ネット社会を軸に盛り込んだRPGは当時珍しく、時代を先駆けたテーマでした。
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しかも切り口だけの話ではなく、シナリオ面でもネット社会を深堀りしており、その便利さ故に翻弄される人間の性なども表現。先見性すら垣間見える物語は、当時も高く評価されましたが、今改めて見ると更に違った感慨が生まれるかもしれません。
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また『ソウルハッカーズ』は、ゲーム性の面でも様々な特徴を持っています。まず、ヒロインに当たる「ヒトミ」は、悪魔の「ネミッサ」に乗り移られており、このネミッサがパートナーとなって戦闘に参加。彼女が覚える魔法はプレイヤーの選択次第で変わるので、戦略性が変化するのもユニークな点のひとつです。
「COMP」は他の作品にも登場しますが、本作の「COMP」は前作の『真・女神転生デビルサマナー』よりも便利になっており、特に大きいのが「バックアッパー」の変更点。これを使うと、ダンジョン攻略中でもセーブが可能となるので、危険な探索には欠かせません。前作にも「バックアッパー」はありましたが、制限が大きく気軽には使えないものでした(後に出たPSP版では変更)。その制限が大きく緩和されたため、シリーズ初心者でも遊びやすい一作に。とはいえ、戦闘の歯応えなどは健在で、生ぬるさとは無縁です。だからこそ、この「バックアッパー」に助けられる場面も多々ありました。
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そして、主人公以外の人生を追体験できる「ビジョンクエスト」も、『ソウルハッカーズ』の特徴的なポイントです。主人公ではない“誰か”になり、その人物の人生を垣間見ることができるこのシステムは、ストーリーを更に深く味わえるといった利点と共に、これから攻略するダンジョンを予習できるといったチュートリアル的な側面も合わせ持っています。
ちなみにPS版では、新規イベントやメッセージが追加されたほか、ポケットステーションで悪魔(P-メッチー)を育てる新要素も。この「P-メッチー」を育成すると戦力の増強に繋がるので、外出中でも『ソウルハッカーズ』に関われる楽しさがありました。また、セガサターン版では一部のユーザーしか挑めなかった「幻のダンジョン」もプレイ可能に。
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時代を先駆けた舞台とシナリオ、チームで挑む一体感、「ヒトミ」と「ネミッサ」の関係性、ストーリー・ゲーム性の双方に好影響を及ぼす「ビジョンクエスト」、初心者でも遊びやすい調整、など、『ソウルハッカーズ』は語り尽くせないほどの魅力に溢れています。今から遊ぶなら、3DSもお勧めです。ゴールデンウィークも近いので、時代を先駆けた名作を、今改めて味わってみてはいかがでしょうか。
※『デビルサマナー ソウルハッカーズ』のゲーム画面および映像は、3DS版のものです。
※『真・女神転生デビルサマナー』のゲーム画面は、PSP版のものです。
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