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2019年4月22日に『Dreams Universe』のアーリーアクセス版がリリースされてから一ヶ月以上が過ぎました。同作は「誰もがクリエイターになれる」というキャッチコピーの通り、ゲームを作ったりそのゲームを共有したりするクリエイト系ゲームです。
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ハイクオリティーな『P.T.』のクローンや初代『メタルギアソリッド』のクローンが作られ、SNSを騒がせたことは記憶に新しいですね! アーリーアクセス(早期アクセス)版である同作は「コンテンツを創作したい人向け」とされていますが他ユーザーのコンテンツを遊ぶ機能は十分整っているため、プレイヤーはこぞってこれらの注目作をダウンロードし、その再現度に舌を巻いたことでしょう。本稿では、大手・インディーでゲーム開発を経験した筆者が、ゲームデベロッパーの視点からアーリーアクセス版『Dreams Universe』を分析していきます。購入を迷っている方は参考にしてください。
本格的ゲーム制作を一歩ずつ学んでいける
クリエイトを一通り触った印象は……「全体的に凄過ぎる」です。オブジェクト一つに対し、プログラム的にもビジュアル的にも膨大な設定を施す事が可能です。ゼロからクリエイトする場合は3Dアクションゲームが基本になりますが、全体の挙動も「ロジック」で管理できるため、FPS、2Dアクション、サウンドノベル、なんでも作ることができそうでした。しかしこれは逆に言うと、小さいゲームでも無限に作り込める領域が存在するため、全体像を想像しながら作業しないと永遠に完成させることができないと感じました(そこがまたクリエイト系ゲームの楽しいところでもありますよね)。
・丁寧なチュートリアル
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それでは、チュートリアルから紹介します。筆者は重度の面倒臭がりであるため、『Dreams Universe』を手がけたMedia Moleculeの過去作『リトルビックプラネット』ではクリエイトに辿り着く前にプレイをやめてしまったのですが、今回はすぐにクリエイトのチュートリアルを見ることができました。このチュートリアルは非常に丁寧かつ洗練されていて、好きな位置でチュートリアル動画をウィンドウで再生しながら、自由にゲームを動かすことができます。音声解説は日本語で、細かい操作に躓かないよう1ステップずつ、テンポよく進めてくれるのでゲーム制作未経験でもどんどん技術を吸収していけるでしょう。動画は早送りや巻き戻しも可能。YouTubeでお手本を見ながら日曜大工をするような気分でお勉強できました。
・オブジェクトの整列やコピーはゲームエンジン並に練られている
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この手のクリエイト系ゲームで気になるのが、「コピペや整列の便利さ」。私はステージを作るとき、自由にあれこれ配置するよりもまずは建物をざっと並べてアタリをつけたいことが多いです。Unityなどのゲームエンジンだと、これらはかつてテクニックや拡張レベルの話でしたが、『Dreams Universe』では標準の機能でピシっとモノを並べることが出来て感動しました。直線に並べるに留まらず、配置の密度やカーブも自由自在です。
・動くキャラクターが簡単に作れる!
ゲーム制作未経験の人にまず体験して欲しいと思ったのは、キャラクター作成機能です。人間型のキャラであれば、チュートリアルを受けるだけでグリグリと動かせるオリジナルキャラを作れます。ジャンプ力や走る速さなど各設定項目の細かさに関心したのですが、それ以上に驚いたのは「メチャクチャにイジってもちゃんと地面を踏んで歩く」という点です。「モデルを動かす」という要素は関節の可動範囲や肉付けなど様々な設定の集合体なのですが、かなり奇抜な体格やポーズにしてもちゃんと歩行するのです。是非プレイして限界に挑戦してみていただきたいですね。
・お互いの素材を共有しよう
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ゲーム制作を経験していても、地味な作業の積み重ねが時に苦痛となることは否定できません。そんな時は「ドリームサーフィン」で他の人の手を借りましょう。この機能ではキャラ、ステージ、草木、ギミック、音楽、なんでも共有することができるのです。そのまま利用することはもちろん、見た目だけ変えたり機能だけ使うことも自由自在。これらの素材は個性豊かですが『Dreams Universe』上のデータを利用しているため、ダウンロードも検索も非常に軽快です。このスピード感はUnityのアセットストアとは違った興奮がありました。
・実際に作ってみた。
というわけで、チュートリアルを復習した後「ドリームサーフィン」上の素材を改造してサンプルゲームで遊んでみました。プレイヤーの強烈な発光機能には何の意味もありませんが、いずれは照らされた色に応じてモノが燃えたり凍ったりする機能をいれたら面白そうだなぁなどと想像しつつ作りました。走行性能もかなり弄っているので元のサンプルゲームが全く違う感触になっています。実際の作業時間はほんの数分です。短時間でこういうことが試せるのはとてもクリエイティブですね!
・わずかに気になった点
いくつか気になった点も紹介しておきます。まず一つが、操作に慣れが必要であること。カメラの操作で左右のスティックを使うため、カーソルの操作はDUALSHOCK 4のジャイロで行います。理に適っているのですが、PS4で多用する操作ではないので始めは戸惑うことでしょう。メーカーも分かっているのか、ジャイロ操作についてのヒントを度々表示してサポートしてきます。
二つ目が、オブジェクトの検索などのファイル管理です。配置する前のオブジェクト検索機能はタグやテキストなど多彩ですが、配置後のオブジェクトの検索はユーザーの視覚頼みで、貧弱だと感じました。アーリーアクセスということもあり機能を私が把握していないか、実装前という可能性もありますので、今後に期待したいところです。
また、数回ですが動作が数秒止まることがありました。クリエイト中に描画するオブジェクトが膨大になった時たまに起こるようです。読み込みは非常に軽快ですので製品版に向けて最適化が進むと良いですね!
ゲーム制作だけが『Dreams Universe』じゃない!
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さて、クリエイト機能について一通り紹介しましたが『Dreams Universe』は実に懐の深いゲームです。最も充実したコンテンツは「ゲームを作る」ことに違いありませんが、同作のユニークな点は「ゲームの素材を作る」「遊ぶ」だけでゲーム制作に「参加」できること。「ゲーム作り」「素材作り」「プレイ」それぞれがノンリニアに繋がり、『Dreams Universe』の世界は日々広がっています。
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ここで言う「素材」とは、ゲームのモデルやギミックのこと。例えばモデルを作るためのスカルプトツールは非常に優秀で、PS4世代のモデルをゼロから作ることができます。前述した通りチュートリアルがとても丁寧なので、モデリング経験がない筆者でもユニークなモデルを作ることができました。
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ギミックを作るための「ロジック」も同様に丁寧に解説されているため、プログラミングや『マインクラフト』のレッドストーン回路に慣れておらずともアイディアをギミックにできるようになります。筆者は『RPGツクール』でこういったギミック部分(転職システム等)だけにムキになってしまい作品を完成させられなかった苦い経験が何度かありますが、同作での成果を投稿しておけば誰かが一本のゲームに仕上げてくれるかもしれない「夢」がありますね。
・楽しみ方は人それぞれ
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『Dreams Universe』は「プレイして素材集める」だけでも楽しいゲームです。まだ見ぬ自分の脳内大作ゲームのため、素材として使いたいゲームや素材を「ドリームサーフィン」で見て遊んで周り、次々とコレクションしていくことができます。細かいフォルダ分けも可能で、それぞれのアップデートをボタン一つでチェックできます。
インターネット黎明期のWebサイト作りで、無料素材集サイト巡りにハマったことがある人には懐かしい感覚ではないでしょうか。「ドリームサーフィン」ではランダムで次々に素材やゲームを巡る機能もあるので、ぶらついているだけで「人の夢を覗き見」しているような気分になれます。ダウンロードや「いいね!」の数は常に集計され上位は優先して表示されるため、プレイすることもコミュニティーへの立派な貢献です。
・いつでも誰かと共同制作
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もしかしたら、『Dreams Universe』を通じて素敵な出会いがあるかもしれません。素材の利用は自動的にゲームにクレジットされますから、無意識の内に共同制作になっています。『メタルギアソリッド』クローンの作者のように共同制作を呼びかけ、それに参加するのもいいでしょう。実際のゲーム制作では諸般の事情で難しいですが、単純な小物一つ提供してもらえるだけでとても助かります。テストプレイも喜ばれると思いますので、積極的に参加してみてはどうでしょうか。
アーリーアクセスなのに素晴らしい完成度。数量限定なので気をつけて
『Dreams Universe』のクリエイト部分から遊び方の多様性まで紹介しました。アーリーアクセス版で十分下地が出来上がっていると感じます。購入しておけば無料で製品版にアップグレードされるので大変お得ですが、今回のアーリーアクセスは「数量限定」とされています。今のところ発表はありませんが、いつアーリーアクセスが終了してもおかしくありません。価格的にも体験の新鮮さ的にも、早めの購入をオススメします。
『Dreams Universe アーリーアクセス版』は3,132円(税込)でPlayStation Storeにて販売中です。
■筆者紹介:KAMEX
大手ゲームメーカーにプランナーとして数年勤務後、別会社で『漢水』ディレクターを務める。現在フリー。ハゲ猫スフィンクスを溺愛。最近はミニチュアゲーム「ウォーハンマー」の塗装にハマっている。