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2019年10月6日に開催された「UBIDAY2019」メインステージでは、「ススムの部屋」というステージイベントが行われていました。エレキコミック・今立進さんの部屋に様々な人がやってくるという設定で、ユービーアイソフトの最新ゲーム事情や、ゲームシーンの話題の人物にスポットを当てていきます。
その中で「ススムの知らない世界」と題して、プロゲーミングチーム「父ノ背中」所属のけんき選手とDustelBox選手が登場。本稿ではその模様をお伝えします。
メンバーは自分で全てやる!
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まず司会の今立さんから「e-Sportsチームとは?」との質問からはじまります。その上で「ダメな質問とかありますか?」との問いに、けんき選手は「僕たちは日本で一番何でも答えるチームじゃないか」と場を和ませました。
「e-Sportsチームの中でも僕たちは特殊」だと前置きしつつ、実際のところ「父ノ背中」の代表を務める“てるしゃん”は選手でもあることを主張します。一般的なプロゲーミングチームにおいて、運営と選手は別のものであり、あくまでもメンバーはプレイヤーとしての立場に集中しますが、「父ノ背中」のメンバー達はそれぞれが営業・渉外を行い、報酬の面でも自立した活動をしているそうです。
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報酬の話になると、今立さんが「僕は事務所とはロクヨンです」とぶっちゃけるも、「上」が挟まると実際はいくらの仕事だったのか分からない、とけんき選手。
「確かに!本当に事務所がその割合でやってるかなんて分かりませんよね。それが昨今のお笑い事務所問題なんですけど」と際どいネタに会場も爆笑。
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ここで「父ノ背中」の二人から今立さんへTシャツのプレゼントが贈られました。「このロゴはWindows標準のペイントソフトで作った」との告白に、今立さんのツッコミも追いつきません。
国内外のe-Sports事情の違い
「父ノ背中」は、なぜチームメンバーが選手としてのみ活動するのではなく、運営も含めた自立したスタイルとなったのでしょうか。そこには国内外のe-Sportsにおける「市場の違い」があると言います。
海外のアスリートチームが、プレイヤーとして集中して活動するなかで収入を得られるのに対し、日本においてはまだまだその金額的な水準が低いという点を、けんき選手はまず指摘しました。そうした数字を見た時に、「自分たちがずっとゲームをし続けるためにはどうするべきか」と考える必要があったとのことです。
e-Sportsに「才能」は必要?
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「そんな中でも強いプレイヤーでいるためには、かなりの努力や才能が必要なのでは?」と質問を続ける今立さんに、少し考えつつも「一般的なスポーツと比べると、才能の比重は少ないのではないか」とけんき選手は答えます。
「もちろん、FPSなどのジャンルでは反射神経が話題となることもありますが、ゲームの勝敗に及ぼす割合としてはそれほど多くないと思います」──それらは鍛えられる範囲の内に入るものだとし、そうした理由から才能よりも努力が大事だろうと考えているそうです。
ちなみに練習時間はどのくらい……?との問いに「毎日12時間くらいでしょうか」と答えると「父ノ背中、ブラックじゃねえか!」と今立さんも思わずツッコミ。「Father's Backならぬ、Father's Blackですよね!」と冗談を飛ばしつつも、それぞれが個人事業主として活動するからこそできていると、リアルな事情を明かしてくれました。
合理性の狭間で「自分たちの価値を高めていく」
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「頑張って実力を付ければ、父ノ背中に入れたりするんですか?」と今立さんが聞くも、なんと父ノ背中では新たなメンバーの募集を特に考えていないのだそうです。「何なんスか!顔で選んでるんスか!?」とツッコまれつつ、けんき選手は「あくまでも仲の良いメンバーで続けていきたい」と心情を吐露します。
また、プロゲーマー全体を俯瞰した時、流行のタイトルが変われば選手もガラっと変わってしまうという状況に思う所があるのだそうです。「企業がチームを運営するという視点で見れば、もちろんそれは合理的で正しいことだと思う」としつつも、流行りによって切り捨てられてしまった選手達からすれば、そこには不安しかないだろうとも。
そうした環境の中で「自分たちがずっと続けていくため」に、流行のタイトルが入れ替わり勝敗の苦しい結果が続く時期があろうとも、常に同じメンバーで「自分たちの価値を高め続けている」、とのことでした。
「僕たちが目指しているe-Sportsの世界は、”上”のような管理者を必要とせず、自分たちで自由にe-Sportsを楽しむもの。そうしたクランのようなものを自分たちで育てていく……ということを楽しんで見てもらえれば」と締めくくり、コーナーの終了となりました。
e-Sportsを取り巻く環境は、年々その変化の激しさを増しており、これに伴って様々な議論も噴出してきています。その中で「全て自分たちでやる」というスタンスを持つ「父ノ背中」は、今後も型にはまらない新たな視点を提供し続けてくれそうです。