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『NBA 2K21』は、世界最大のバスケットボールリーグ・NBAを題材としたゲームのシリーズ最新作。『NBA 2K』シリーズは20年を越える歴史を持ち、新作がリリースされるたびにバスケットボールのリアルなグラフィックとモーションは洗練され続け、今作でも進化が見られます。
今回は『NBA 2K21』のリリースにあわせ、オンラインにて開発者による本作のプレゼンとインタビューが行われました。シリーズの進化はもちろん、最新作で試みた新しい仕掛けなどにについて明かされた取材の模様をお届けします。
ゲームエンジンの改良によって再調整された操作性やモーション
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まず『NBA 2K21』のゲームプレイ・ディレクターであるマイク・ワン氏が、今作での操作性や、さまざまなゲームデザインについて解説。
右スティックによる操作によって、選手のドリブルや、シュートを打つ時の精度が変化するなど、ゲームプレイが大きく変わってくることを説明しました。さらにシグネチャームーブによって、ディフェンスもさまざまな動きが可能となっていることも紹介。『NBA 2K』シリーズならではの、右スティックなどを利用した操作による多様なパフォーマンスは今作でも健在です。
また、プレイヤーが柔軟なゲームプレイができるようになっていることも説明。たとえばバスケットの試合における司令塔のポジション・ポイントガードを担当する選手も、今回は203センチもの高身長の選手までキャパシティが広がっています。
さらに選手に実装されている「スキルバッジ」もより多彩になり、各選手の個性も際立つかたちになりました。ワン氏は「ゲームエンジンにさらなる改良を加えたことで、操作性から選手の動きなども調整され、より充実したゲームプレイとなります」とまとめました。
「マイチーム」モードで自分のだけのチームで他のプレイヤーと試合していこう
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続いてプロデューサーを務めるジョン・スミス氏が「マイチーム」モードについて解説。このモードについて、ジョン氏は一言で「一年を通して楽しめる、さまざまな施策」がテーマだと説明します。
基本的には選手のカードを集め、自分だけのチームを作り、試合をしていくモードです。試合を重ねることでXPを溜め、プレイヤーのレベルを上げていきます。プレイヤーのステータスのわかるバッジのカスタマイズや、選手カードの進化も今回はさらに多様となりました。
本作におけるマイチームの新機軸は、シーズン制が導入されたことです。開発側はプレイヤーが一年中プレイを楽しめるように新コンテンツを追加していく予定とのこと。毎週、金曜日から日曜日にかけてはチャンピオンシップ・リングという報酬を獲得するチャンスなどが用意されています。
このようにカード集めやレベル制のある、他プレイヤーと対戦を重ねていくモードでは、アイテム課金が発生するのではないか? と思うかも知れません。ですが本作では完全無料プレイを実現しています。さらに次世代機が発表されている時期での発売ということもあり、マイチームの進行状況を現世代機から次世代機へと引き継ぐことも可能としています。
NBA選手の物語を追え!「マイキャリア」モード
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こうしたスポーツゲームのもうひとつの華といえば、プレイヤーがひとりの選手となって人生を歩んでいくモードでしょう。本作のマイキャリアモードは、まさしくそんなNBA選手のドラマを体験できるモードです。
マイキャリアモードについてはシニア・プロデューサーを務めるベン・ビショップ氏が解説。ビショップ氏は「物語を楽しんでほしいですね」と前置きすると、なんと今回は「The Long Shadow(邦題:その道の先に待つもの)」とドラマティックなタイトルがつけられたことが明らかになりました。
プレイヤーはアメリカでいち選手が高校、大学のバスケ選手から、NBA選手になってゆくという、実際にプロ選手と同じプロセスを体験できます。登場する大学もミシガン州立大学やコネチカット大学をはじめ、公認を得た実在の10校が登場。ビショップ氏は「キャストの多彩さなども楽しめます!」と、リアルなキャリアを追うだけではなく、物語そのものも楽しめることを語っていました。
今回の街歩き「ネイバーフッド」では2Kビーチが登場!
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近年の『NBA 2K』シリーズで恒例となりつつあるモードに「ネイバーフッド」があります。これはマイキャリアで作成したキャラクターで、街を歩き回ることができる生活感あるモードになります。
今回のネイバーフッドモードについては、ディレクター兼プロダクト・デベロップメントを担当したチェン・ユー氏が解説します。本作では「2Kビーチ」という、パブリッシャーの名前を冠したロケーションを追加したことが発表されました。
“進化したバスケット ”に対してのインタビュー
オンラインセッションに参加したメディアからは、今回の『NBA 2K21』に対して数多くの質問が寄せられました。
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※インタビュー中は敬称略
――マイキャリアモードについて特に注力したところを教えてください。
ベンやはり公認された大学10校が推しているポイントかな、と思っています。オンコートにしてもオフコートにしても、やはり大学のバスケットリーグは特性がプロリーグとは異なるものであります。大学を経て、将来的にNBAのスタープレイヤーになる展開が、非常に高揚感を持って楽しめるところです。
――今年1月にヘリコプター事故で亡くなった、NBAレジェンドの選手であるコービー・ブライアント選手をフィーチャーした “マンバ・フォーエバー・エディション”が日本でも話題になっています。反響はどうでしょうか。
エリックコービーをカバーをフィーチャーするにしても、別の形であったら……と心から願う気持ちが否めませんが、マンバ・フォーエバー・エディションは大変な反響をいただいています。開発者である私たちにとっても、ファンの皆さんにとっても、彼がバスケットボールに賭けた情熱が、レガシー(遺産)として残されるひとつの形でありますので、この取り組みができたことに関してありがたく思っています。
――今作ではプロコントロールの大幅に変化させた理由と、実装するにあたってこだわったところ、難しかったところを教えてください。
マイク一言で言えばバランスです。操作性については、コントロールのスキルの高いプレイヤーについては、しっかりとリワードを出したいというのがありました。一方で、初心者でも十分に楽しめるようなバランスにするのが一番難しかったのです。幅広いユーザーそれぞれが楽しんでいただくことが、このプロコントロールのあり方ということで試行錯誤しました。
――今までの『NBA 2K』シリーズはシーズンが終わってからのリリースでしたが、今回『NBA 2K21』はプレーオフ中の発売になります。発売時期に関してはどうお考えですか。
エリック我々には良い意味に働いたと思います。通常、私たちのゲーム開発の時期は6月以降ということになり、リリースはオフシーズンということになりますが、今年は誰もが経験したことのない年となっています。そうした中、プレーオフ中ということで、皆さんのNBAへの興味が高い中でのリリースというのは、我々にとってはプラスになったと思います。
――今回、新型コロナウィルスの影響により、さまざまなプロスポーツは無観客試合を行っています。NBAでは無観客試合を彩るために、『NBA 2K』の歓声をバーチャル的に流すというお話があったそうですが、これはNBA側か2K側かどちらのアイディアだったのでしょうか。
エリック短く話しますと、NBA側のアプローチで、歓声を使いたいという話でした。
――コロナ禍という特殊な状況で開発を進める苦労についてはどうでしたか。
エリックいい質問をいただいたと思います。このような社会情勢になり、実際にスタッフと会って作業することができなくなりました。家からコミュニケーションを取る手法も違いますし、会議のやり方や進め方も一変したのです。
正直なところ、普段よりもゲーム開発は苦難が多い状況でしたが、チームとしては上手くこの状況にアジャストして、非常にいいものができたと思います。全体の指揮を取る中で、私自身もこんなふうに適応して、素晴らしいものができたことを誇らしいと思っています。フランチャイズ全体にとっても、資産となるものができたと感じています。
――今回、各選手の能力を数値化する “レーティング”をどのように決めましたか? コロナ禍によるイレギュラーなシーズンになり、情報が足りないのではと感じたのですが。
エリック私たちはこれまでも開発者として、チームとして熱心に開発に取り組んできており、そうした経験の中で選手に対して幅広く、深い知識を培ってきました。選手の能力のアップダウンに関しては、経験を持って補足できる範囲のため、イレギュラーなシーズンであったことは障壁にはなりませんでした。
――新しい選手が次々と出てきますが、現実のプレイの再現性が難しい選手というのはありますか。
マイクとても広範な選手名簿があり、モーションキャプチャーの技術を使いながら、「この選手ならこういうことだな」ということをしっかりと再現しながら、ゲームのリアルさを追求しています。
――『NBA 2K』シリーズの世界で日本人選手が活躍するのは夢のような話です。八村塁選手は今回はどのようにスケールアップしていますか。
マイク八村選手に関しても開発チームで研究を重ねました。実際に選手がコート上でどのような動きをするか、そのリアリティやレーティングがゲームに反映されるようにしてきました。
――先ほどコロナ禍で無観客試合のお話がありましたが、ゲーム中でも描かれるのでしょうか。
エリックそこはちょっと考えていましたが、『NBA 2K21』に関しては観客がいることがこのゲームのプラスになると判断しました。その高揚感や空気感といったものが重要だと判断しています。
――過去作と比べて本作のビジュアル面の最大の変化はなんですか。
エリックふたつ答えがあります。ひとつはネイバーフッドモードで追加された2Kビーチ。実在するビーチの雰囲気を、しっかりとゲームの中に作り上げたと思っています。そして秋までお待ちいただきたいのは、次世代機のリリースですね。グラフィックがさらに魅力あるものになるはずです。
――『NBA 2K』シリーズを初めてプレイする人にはどのモードがおすすめしますか。
マイク実際の動きなど、どういったことがゲーム中で可能かを把握したり、全体としてどういうことが可能かを知ったりするには、「2KU」(※チュートリアルモード)に行ってもらうのが一番かなと思います。2KUにはトレーニング機能があり、詳細な解説が備わっています。
――最後に本作で最も注目すべきポイント、そして日本のプレイヤーに向けてメッセージをお願いします
エリックここは3つお答えします。良くなった部分がひとつやふたつではなく、たとえばネイバーフッドモードが新しくなっただけではなく、広範にわたりアップデートが行われています。
ふたつめは、2K Games全体で決めたことですが、マンバ・フォーエバー・エディションを買っていただきますと、PS5のスタンダードエディションがフリーコピーとして付いてきます。
そして最後に日本のファンのメッセージですね。ファンの皆さま、そしてマスコミの皆さまにあらためて感謝します。今年は来日することができなくて本当に申しわけなかったのですが、来年はその機会があることを願っています。私たちは、日本のファン、そして世界のファンの皆さまに支援されながらゲーム開発を続けています。その支援に心から感謝します。
困難な状況から生まれた最新のバスケットボールゲーム
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今回、開発者のインタビューからは、長い歴史を持つシリーズを困難な状況においてもさらに進化させていこうという意識が垣間見えたのではないでしょうか?
特に新型コロナウィルスが世界的に蔓延し、現実のNBAも大変難しい舵取りを迫られたのと同様に、ビデオゲームの開発現場も初めての状況に際し決して順風満帆な開発環境だったわけではないことがセッションでも明かされています。そのような難しい状況下でも、『NBA 2K21』はハイクオリティなバスケットボールゲームを実現しようとチーム一丸となり新たな機能やブラッシュアップを図っていたことが伝わってきました。
『NBA 2K21』は2020年9月4日、PC(Steam)/PlayStation 4/Xbox One/ニンテンドースイッチにて発売を予定しています。また、インタビュー中でも触れられたとおり次世代機版も用意されているほか、現在各プラットフォームにて無料体験版も公開中です。本作に触れることで、バスケットボールゲームの最前線を体験することができるでしょう。
※UPDATE(2020/8/29 0:26):YouTubeのリンクを修正しました。