10月に入り、遅い秋がようやくやってきた今日この頃。今回は落葉が舞う景色が印象的な『ナイト・イン・ザ・ウッズ』(Night in the Woods)を特集します。デフォルメされたキャラクターとは裏腹に、アメリカ社会の重い現実を叩き付けるシナリオが衝撃的で、2017年のリリース以来BAFTA Games Awardsなどの賞を獲得しています。
自分の人生にどこか閉塞感があるのなら、事前情報なしに是非本作に触れてみてください。悩み苦しむメイ達の物語にきっと共感できるでしょう。
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練習問題の解答
1、Poison Tree(毒の樹)
2、Proverbs of Hell(地獄の箴言)
スピンオフコミック「Vision of V」では、本編では描写されなかったVが詩集を初めて手に取る場面もあります。ブレイクの詩集は文章と絵画が一体となった作品になっているので、購入の際は美しい原画も収めたものをお勧めします。
Let’s Play in English:意外にスラングは弱め、浴びせられる憂鬱と苛立ちの言葉
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主人公が鬱屈した若者ということもあり、多くの会話には「Eff」「‘sup」などのくだけたスラングが出てきます。ただし、知らないと全く分からないような言葉は案外少なく、“Watcher doin’”のように多くが状況で意味を推測できます。読みにくいものはネットスラングで、特にグレッグがパソコンのやりとりで多用してきます。「You」が「U」、「to」が「2」というのはすぐに分かりますが、“SK8 2 CRE8”は少し難しいですね。これは「ate」を「8」に入れ替えたもので、元の文は“Skate to Create”となります。
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メイは皮肉屋かつ精神を病んでおり、半分自棄を起こしている彼女の台詞には負の感情がたっぷり含まれています。メイに苛立つビーの言葉もかなり辛辣なもの。二人の間に流れる微妙な空気を感じ取れるようになりましょう。
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貧困に支配される町「Rust belt」とは
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2020年11月3日、アメリカで第59回大統領選挙が開催されます。再選を狙う共和党代表トランプ氏と、民主党代表バイデン氏が有力な候補ですが、先日の討論会が議論の体を成していないのは誰の目にも明らかでした。
現政権の是非はさておき、2016年にトランプが当選した大きな要因に、本作で描写されているような「Rust Belt(ラストベルト)」と呼ばれる地域が関係しています。「ラストベルト」とは、1970年代頃までアメリカの重工業を支えたアメリカ北東部を指し、文字通り産業が衰退して文字通り「錆び付いた」地域です。かつてアメリカが重工業のトップを担っていた時代は、鉱山開発、鉄鋼業、自動車産業など、大きな工場とたくさんの労働者という構図で発展していました。しかしグローバル化によって人件費の安い海外へ工場が移転し、企業が撤退した町は多くの失業者であふれる事態に陥ります。
デトロイトを舞台にした映画「ロボコップ」、Quantic Dreamの名作アドベンチャー『Detroit: Becoome Human』のような貧困と犯罪が蔓延した街のイメージは、この産業衰退の影響を大きく受けたものです。最近“Made in USA”の文字、すっかり見なくなりましたよね。
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デトロイトはロボット、IT産業で再興しつつありますが、ポッサム・スプリング(本作に登場する架空の街)のように新しい産業が来ない郊外の田舎は廃れていく一方。進学率の低いワーキングクラスが多いこの地域では、子供を大学に行かせる経済力もなく、教育格差の最下層に縛られてしまいます。学歴がなければ都会に出ることも叶わず、就職を考える頃には「寂れた地元からは脱出できない」と気付いてしまうのです。
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よくゾンビが発生する郊外の大型ショッピングモールは従業員に警備員、出入りの運送業者まで数百単位の労働者が必要になりますから、このような状況において地域の雇用創出にはとても重宝されます。
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本作の舞台となるペンシルバニア州ポッサム・スプリングもこの「ラストベルト」にあり、町の主産業だった鉱山とガラス工場が閉鎖されて以降、街の住民は貧困のスパイラルから抜け出せずにいます。
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この街に、家に、生まれたときから、夢や希望、可能性というものが自分の人生には存在しない。そんな絶望がポッサムスプリングスを覆っています。そして現状の政治に対する不信に変わり、「既存の政治」を壊し、アメリカに産業を取り戻してくれる“Make America Great Again!”のスローガンを多くの人がよすがにしたのです。(ちなみにこのスローガンは、ロナルド・レーガン元大統領が1980年大統領選挙で初めて「Let's Make America Great Again」と使用したのが始まり。ゲームにおいては、2013年の『メタルギア ライジング リベンジェンス』でも引用されました。)
覚えておきたい英単語集:街を蝕む問題の数々
- Jerk:嫌なヤツ
- Lay off:一時解雇
- Sup:What’s up?(調子どう?)
- Inconvenient:不便
- Shoplift:万引き
- Constellation:星座
- Union:労働組合
- Drop out:落第、学校を中退する
- Sophomore:2年生
- Rehab:更生、リハビリ
今週のキーフレーズ:You used to be worth to talking to!
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あんたは話す価値のあるヤツだったろ!
パーティーでの一騒動の後、メイを車で送るビーが放った一言。自分が行けなかった大学を抜け出したメイに苛立ちを抑えきれず、二人の間にある溝が浮き彫りになった瞬間でした。“used to be”は「昔は~だった」と過去を振り返るときに使いますが、こういった言い争いの場面では「今はそうじゃない」の意味合いが強く出ます。この場合メイに対して「テメーは話す価値もないクズだ」とダイレクトに言いたいのを婉曲表現でこらえているのです。このあたりに腐れ縁を切りきれないビーの機微が反映されていますね。
練習問題:以下の問いに答えなさい。
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次に挙げるアメリカの経済指標の数値を答えなさい。
1、完全失業率(2020年4月)
2、相対的貧困率(2019年)
アメリカの経済格差は先進国の中でも頭1つ抜けて広がっていましたが、2020年のコロナ禍でそのひずみが大きな混乱を引き起こしました。アメリカで今起きている「現実」の数字を自分で確かめてみましょう。