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現在、INDIEGOGOでクラウドファンディングキャンペーンを展開中のゲーミングに特化したウルトラモバイルPC「GPD Win3」。今回GPD社より試作ユニットをお借りできたので、本稿ではどのようなゲーム体験ができるのか、そしてゲーミング用途以外の使用感などをお伝えします。
(今回扱っているのは評価用の試作機であるため、製品版とは仕様や動作が一部異なります。)
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「GPD Win」シリーズは、中国・深圳のGPD社(GamePad Digital)が展開するUMPCシリーズ。ポケットに入るサイズのボディに、アナログスティックやボタンなどを兼ね備えた携帯ゲーム機のような見た目のWindows PCです。
同社はビジネスや普段使い用のGPD Pocketシリーズや、大型化した8インチクラムシェルモデル「GPD Win Max」をリリースしています。そして「GPD Win2」から3年が経ってのリリースとなる「GPD Win3」は、大きくスペックアップしてポケットに入るPS4と呼べる代物に進化しています。
GPD Win3のスペックは以下の通り。
- スペック
■ディスプレイ:5.5インチ(1280 x 720)
■CPU:Core i7 1165G7 2.8GHz(ターボブースト4.7GHz)/ Core i5 1135G7 2.4GHz(ターボブースト4.2GHz)
■熱設計電力: 15~28W
■内蔵GPU: Intel Iris Xe Graphics
■メモリ: 16GB (LPDDR4x-4266)
■容量: 1TB (SSD)
■本体入力: Thunderbolt 4 x1、USB-A x1、イヤフォンジャック、MicroSDカードスロット
■指紋認証対応
■価格:799ドル(i5、メモリ16GB、1TB SSD)、899ドル(i7、メモリ16GB、1TB SSD)※ドックステーションセットはプラス50ドル
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これまでのGPDシリーズとは異なり、ニンテンドースイッチのように底面にThunderbolt 4ポート1つという割り切った仕様に。専用のドックステーションも用意されていますが、こちらはUSB3.2のみであるため、外付けGPUを使用しながら他の機器を接続したい場合は、USBポートを持つeGPUボックスを選ぶか、別途Thunderbolt3やUSB4に対応したドックステーションを用意する必要があります。
GPDの担当者によると専用ドックステーションの仕様は、799ドルから899ドルの価格帯のGPD Win 3に200ドル以上で販売されているような高価なThunderbolt3搭載ドックを付けたくなかったためだとしています。
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Geekbenchによるベンチマークスコアは、CPUスコアが4700前後(マルチコア)、GPUスコアが15100前後(OpenGL)/ 13800前後(Vulkan)。GPD Win MaxのCPUスコア3670前後、GPUスコア9500前後(OpenGL)/ 7800前後(Vulkan)よりもCPUは約1.3倍に、GPUは1.5倍近く性能が向上しています。
『Final Fantasy 14 漆黒の叛逆』オフィシャルベンチマークの結果は、最高品質設定で6400台(とても快適)、ノート用標準品質設定で約9800台(非常に快適)。(どちらも解像度は1280 x 720)『Final Fantasy XV Windows Edition』オフィシャルベンチマークの結果は、高品質設定で2100台(重い)、軽量設定で4100台(普通)となっています。
『Final Fantasy 14 漆黒の叛逆』のベンチを最高品質設定で回しっぱなしにしたところ、バッテリーはフル充電から1時間10分ほどで残り20%に。ディスプレイの発色は色温度高めで青に少し転んでいる印象を受けます。
旧型との比較と使用感
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筆者の持つ初代GPD WinとMaxとのサイズ比較。初代や2よりサイズアップしているものの、実際に手に取ると非常にコンパクトに感じます。実は厚みはMax以上ですが、そのおかげでしっかりとしたホールド感が得られるためネガティブなポイントには感じられません。重さは実測560gで、同じディスプレイサイズとなるニンテンドースイッチLiteの276gの倍以上の重さとなっています。しかし、重心のかかり方の影響か体感的にはかなり軽く感じます。
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ゲームパッド部分は、GPDシリーズで初めてL2/R2がアナログ入力に対応。アナログスティックはWii Uのように両方ともボタンの上に配置されています。担当者によるとこのレイアウトにはかなり頭を悩ませたようで、最終的に本体を握った際に自然に親指がくる位置にアナログスティックを配置することに落ち着いたとのことです。
例えばシューターとRPGでは右アナログスティックとボタンの使用頻度も大きく異なるため、2つあるバランスの取れたレイアウトの1つを採用したのだと説明しています。実際、右アナログスティックは親指を置いた際に程よい位置にくるので疲れさせません。(厳密には、Wii Uゲームパッドはボタンとスティックの位置が斜めに配置されているため指の移動にやや距離があり、GPD Win3はスイッチのJoy-Conと同じく上下の指の動きだけで対応できるようになっています。)
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ちなみに背面にもボタンが2つあるのですが、評価機では使うことができないようでした。製品版では、頻繁に使うボタンを背面ボタンに設定することでユーザービリティを高めてくれそうです。
『MHW:アイスボーン』はほぼ60fpsで動作!しかし現段階ではプレイできないタイトルもちらほら…
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Core i5 1135G7のモデルでもPS4世代のタイトルであれば、軽量設定にする必要はあるものの多くのAAAタイトルが30fps以上でプレイ可能。グラフィック設定を最低にしても、5.5インチのディスプレイでは簡素なテクスチャでもあまり気にならずにゲームに没頭できます。
筆者としては、『モンスターハンターワールド:アイスボーン』がほぼ60fpsで張り付いてプレイできるのは感動でした。他にも比較的重い『Death Stranding』も40fps前後で安定してプレイできました。
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しかし、PS5世代の『Call of Duty: Black Ops Cold War』や内蔵GPUを推奨していない『Forza Horizon 3』『Horizon Zero Dawn』などは、クラッシュしたり、うまくグラフィックを表示できませんでした。Thunderbolt3経由で外付けGPUに接続すればそれらのタイトルもプレイ可能であるものの、携帯機としてのアンデンティティが失われるため悩ましいところ。このあたりは今後のファームウェアで改善されることを期待したいです。
ちなみに、『Gears of War 4』など内蔵GPUを推奨してないにもかかわらず問題なく動作するタイトルも少なくありませんでした。
ゲーム用途以外の使い方は?
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GPD Win 3は、ドックステーション経由でモニターと接続し、キーボードとマウスを用意すれば普段使い用のPCとしても十分活用できます。ディスプレイはタッチ操作に対応しているほか、スイッチを切り替えることでゲームパッドをマウス操作に割り当てることができます。また、静電容量式タッチパネルキーボードが驚くほど使い勝手がよく、実用に耐える仕上がりとなっています。メールチェックや返信、ブラウジングなどは問題なくこなせそうです。
ますます完成度が高まったGPD Winシリーズの最新機種
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※UPDATE(2021/03/05 11:45):誤字を修正しました。コメント欄でのご指摘、ありがとうございます。