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先日、MMORPG『ファイナルファンタジーXIV』(以下、FF14)の高難易度コンテンツであるレイド内のギミックをゲーム外で練習できるシミュレーションの存在が確認されました。
本シミュレーターはレイドの試したいマップに敵やマーカーを配置したり独自のタイムラインを生成し、仲間と練習できるというもの。FF14ファンのAppropriate_Bit2021氏が制作し数カ月前からベータ版を公開しており、15,000人のプレイヤーによる40,000以上のテストを実施。開発状況や議論はreddit上にて報告されています。今回のバージョン1.0では一時停止機能、キャラ死亡時に自動で一時停止機能などが追加されました。アプリのDLは不要、Webブラウザのみで実行できるのも特徴です。
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海外ゲーム系サイト「Pcgamesn.com」の本シミュレータを取り上げた記事内では「FF14を知るために300時間以上を費やしてきたが、いまだにレイド(零式/絶)が怖くてたまらない。幸いなことに、あるFF14ファンが高難易度を練習するためのコンテンツシミュレータを作ってくれた」と好意的に述べています。現状FF14のレイドはエンドコンテンツであり、カジュアル勢がいろはの「い」から教わって繰り返し気軽に練習できる場がありません。練習の名目で募集をかけたとしても、あまりに腕前が追いついてない場合“ギスギスオンライン”になるのは必至です。普段はカジュアルプレイヤーでもレイドに本当は興味がある……でも怖い思いはしたくないという人向けに、こういった形で非公式シミュレータが生まれてしまうのは、おそらく今後も止められません。
ただし、過去の「FFXIV 第57回プロデューサーレターLIVE」にてプロデューサー兼ディレクターの吉田直樹氏は外部MODとツールの使用禁止を明言しています。「XIVsim.com」は個人が開発した非公式シミュレータであり“外部ツール”の対象となりうることから使用はお勧めしません。しかし、外部ツールについて語るうえで避けては通れない「ACT」を始め、大小規模を問わず非公認MODとツールが制作され続けている状況を冷静に見る必要もあるでしょう。
外部ツールと一口に言っても、獲得経験値やゲーム内経済に直接影響をおよぼすチートまがいのものから、「これがあったら、もっとストレスフリーに遊べるのに」というユーザーの本音を汲み上げた痒いところに手が届く、便利系ツールまでその範囲は広いもの。「FF14」の話ではありませんが、プレイヤーに広く愛され、運営・開発元からはある種“黙認”されていた外部ツールの便利機能が、その後ゲーム側に正式採用された幸せな実績も過去には存在しています。外部ツールに対するスタンスも個人差が激しいというのが実情ではないでしょうか。
「そもそもエンドコンテンツなんだから高難易度は当たり前」と認知されてきてはいますが、認知の差によって軋轢がうまれてしまう、一定数のプレイヤーが敬遠してしまうのはMMOという1つの巨大な世界で時間を共有する者同士において非常に残念なことです。全員が有意義な時間を過ごすために、最低限必要な知識共有できる“気軽に何度でも”練習可能な場をプレイヤーのモラルやマナーで生み出す、という理想に現実を近づけていくことがコミュニティに求められていると言えます。
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今回取り上げたFF14 レイドシミュレータを筆者も触ってみましたが、このシミュレータを使ってほしいターゲット層がよくわからない、というのが率直な感想です。モンスターを配置し動きまで再現、ギミックを練習できるのは数あるレイドコンテンツの中でも「絶バハムート討滅戦」「絶アルテマウェポン破壊作戦」「絶アレキサンダー討滅戦」「希望の園エデン零式:再生編4」のわずか4種類に限定されています。操作方法も実際のゲーム内とはかなり異なりますし、本シミュレータが初心者~中級者が本当にレイド本番を乗り越えられるほど役立つのか?と問われると、かなり無理があると回答せざるを得ません(キャラクターの立ち位置や注意点を「図解」する際には、エフェクトまみれで地面が見えない!ということもなく便利に使えそうな気がしますが…)。
公式に外部ツールの使用は禁止されており、本シミュレータの利用はおすすめできません。今後も雨後のタケノコのごとく生まれてくるであろう外部ツールに対する考え方や、高難易度コンテンツにこれから挑戦しようとする若葉プレイヤーを古参プレイヤーとコミュニティが共に成長していけるのか、『ファイナルファンタジーXIV』の今後に注目です。
『ファイナルファンタジーXIV 暁月のフィナーレ』は12月3日(金)より先行アクセスが開始、12月7日(火)より正式発売です。