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ゲームキューブ向けに発売された任天堂の3Dアクションゲーム『スーパーマリオサンシャイン』は2002年7月19日にリリースから20周年を迎えました。そこで、本稿では、本作が登場する前後に起きた出来事や、ゲームプレイの特徴を含めて当時を振り返っていきましょう。記事中のスクリーンショットは『スーパーマリオ 3Dコレクション』からのものです。
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任天堂の大変革の中にあったゲームキューブとマリオ
『スーパーマリオサンシャイン』発表の前段階となる、1999年5月。そのE3の期間中には任天堂と松下電器の提携(PC Watch誌)や、ニンテンドー64に次ぐコンソール機としてコードネーム「DOLPHIN(ドルフィン)」が発表(PC watch誌)されるなど21世紀のゲームを見据えた展開が任天堂でも起こり始めていました。それらを想起させるのが、宮本茂氏が「DOLPHIN」と『マリオ64』以降の作品などを語る、「ほぼ日刊イトイ新聞」1999年10月掲載の「宮本茂が語る。~今思うこと、5年後のこと~」インタビューです。
全6回に渡るインタビューによれば、1981年の初登場から1999年当時までの約20年間にマリオが低年齢層向けのキャラクターとして変化していったことをうけ以降の作品で、過剰なVサインを禁止にしたことや(実際に『サンシャイン』以降の作品だとVサインをしない。じゃんけんという形であるが復活したのは2017年の『オデッセイ』から(Nintendo DREAM誌))、任天堂が低年齢に向いた会社だと捉えられてしまっている誤解、既存の枠から外れた驚きのゲームがどこからくるのかという考察、3Dアクションというだけで面白がる時代の終わりなどなど……、どことなくゼロ年代における任天堂のスタンスに繋がると思える内容が語られています。
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変化はハード側でも起こっていました。ゲームキューブの前世代機にあたるニンテンドー64は、ハードの限界を読み切ることが難しく、最適化やチューニングに多大な時間を費やしてしまうこと(アスキー誌)が大きな問題でした(2009年の『罪と罰 宇宙の後継者』のインタビューでもN64における開発の難しさが言及されている)。
2000年8月に正式発表されたゲームキューブのコンセプトや発表イベント(アスキー誌)でのコメントでもGCでは開発者が制作しやすい仕様に変えようとした意図を感じることができます。また、『マリオ128』を発表した段階で『スーパーマリオサンシャイン』の開発に入っていたとも語られています。
『スーパーマリオサンシャイン』が発表されたのは2001年8月(Game Watch誌)の発表会でしたが、当時のタイトルは『マリオサンシャイン(仮)』。また、任天堂自体も2002年5月に山内社長が退任し、HAL研究所で社長を務めていた岩田聡氏がその任を引き継いだことで新体制へと刷新。そして『スーパーマリオサンシャイン』の開発は2002年5月の段階で完了していました(加えて、この発表では高い年齢層へ向けたタイトルについても言及されていた)。
山内氏から岩田氏への社長交代による新体制とマリオそのもののアピールの変化、開発者フレンドリーなゲームキューブ、同年6月でのGC価格値下げ(Game Watch誌)など、様々な出来事が重なるなか、2002年5月(電撃オンライン誌)にゲームは完成。日本では2002年7月19日に『スーパーマリオサンシャイン』は世に送り出されました。同作では、前述の変化を象徴するように、演出だけでなくゲームプレイそのものもこれまでと異なっていました。
数あるシリーズ作品の中でも異質さが目立つ『スーパーマリオサンシャイン』
本作では、ヒーローであるマリオは冤罪による苦境へと直面します。ドルピック島へピーチ姫と共に飛行機で観光に来た彼は、街をペンキのような液体で汚す「ニセマリオ」に間違えられ罰を課されることになってしまうのです……。マリオは、オヤ・マー博士が開発したポンプを装着し、街を綺麗にしつつ各ステージのシャインを回収。発生した異変とニセマリオの真相を探ります。
近代的な設備が本格的に登場するだけでなく、濡れ衣とはいえ裁判の結果有罪になるマリオが描写されるなど、これまでのマリオシリーズと明らかに異質な表現や演出が目立っていたことが衝撃的でした。
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これまでのシリーズと異なる描写は前述のオープニングを筆頭に、これまで積み重ねられてきた「お約束」を極力避ける作りにも見られるでしょう。例えば、ハテナブロックは本作には登場しないし、クリボーなどお馴染みの敵キャラクターも姿を見せず。マリオが前述の通りVサインをしなくなり、変身もしなければ、そもそも事態の元凶はクッパでない(敵対はする)のです。
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「本作はあえてマリオらしくない世界観にした」と語るニンテンドーオンラインマガジンのインタビューでは、「いままでのマリオシリーズにはない作品を目指していた」と触れられており、数々の異質な要素にも納得でしょう。
難しさは3Dマリオ随一かもしれない『スーパーマリオサンシャイン』
いままでのお約束を廃した『スーパーマリオサンシャイン』のゲームプレイにおいてフィーチャーされているのは、ストーリーの流れでマリオが手に入れる「ポンプ」です。『スーパーマリオ64』で存在したパンチ+キックが無くなった代わりに、アクションに新たな要素「狙って、当てる」ことをもたらし、ホバーノズルやロケットノズルによって身体能力を拡張したことが大きな特徴でした。
アクションそのものも『マリオ64』よりアニメーションを筆頭にブラッシュアップされており、GCコントローラーではポンプの水力をZトリガーで調整できるなど、新たなマリオの行動と合わせて気持ちの良い操作感を与えていました。
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しかし、3Dアクションゲームとして真っ当な新鮮さはあるものの、一方でここまで触れてきた「異質さ」はステージの難易度にも表れていました。
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『スーパーマリオ64』よりステージのバリエーションは減っていますが、その分トリッキーなコースやボス戦が盛り込まれた同作の難易度は序盤から高めで、アスレチック要素だけでなく少しばかりのパズル要素も盛り込まれています。最序盤から歯ごたえのある任天堂の「マリオ」、当時のゲーマーの目にはどう映ったのでしょう。
ボス戦も同様で、ボスパックンなどシンプルに何らかの方法でひっくり返して弱点にヒップドロップをすれば倒せるものもいますが、メカクッパではジェットコースターが動くなかロケットを当てることや、ルーレット上で戦うボステレサでは唐辛子を出現させて食べさせることが要求されるなど、微妙にひねりが加えられたボスもいました。
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さらにヒミツコースは『スーパーマリオサンシャイン』の高難易度を現す象徴と言っても過言ではありません。何故なら本作を通じて慣れ親しんだ「ポンプ」をニセマリオに奪われ、定番曲のアレンジBGMが鳴り響くなか、難易度高めに調整されパズル要素も含んだマップを攻略するという厳しさを容赦なくプレイヤーに叩きつけてくるからです。
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途中のチェックポイントも無く、足場となるのも前後左右に回転する巨大なキューブや、横回転する長方形など一癖揃い。筆者もミスをして何度も滑り落ちたことが忘れられません(それでも1upキノコが各所に設置されており、バランスを取ろうとした形跡がもちろんあります)。とはいえ、これらの高難度ステージは、ジャンプを中心としたプラットフォーマー元来の面白さを3Dマリオでも表現しているようにも感じ取れました。
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難しくも見逃せない『スーパーマリオサンシャイン』
2002年に発売した『スーパーマリオサンシャイン』は、2020年リリースの『スーパーマリオ3Dコレクション』で復刻されるまでの18年間、1度も移植される機会が無かったために、ゲームキューブがレガシーなハードになってしまってから、シリーズの中でも触れずらかった3Dマリオでした。
今回、記事制作のため改めて遊んでみてもその異質さと難しさが強く印象に残りましたが(90年代のマリオ作品より高めな年齢層向きの印象も改めて感じました)、南国の解放的な雰囲気や、マーレ族とモンテ族のセリフの面白さも含め、遊んでみて損はないタイトルです。
他にも、『マリオ』シリーズに関する任天堂の「社長が訊く」インタビューを読んでみると、『スーパーマリオサンシャイン』以降のタイトルでストーリーの是非やキャラクターのデザインの方向性の変化などが挙げられていることから、ある意味で本作が『マリオ』シリーズにおいて一つの区切りを作った作品なのかもしれません(加えて、直接的な言及ではないが2003年にファミコンが、2005年に『スーパーマリオブラザーズ』それぞれが20周年を迎えたことも変化の切っ掛けでもあるそう)。
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最後に。思い返してみると、『スーパーマリオサンシャイン』がリリースされたゼロ年代前半のゲームは水を如何にして表現するかが問われていたようにも思えます。同時期の『MGS2』では雨や水滴表現が、『鬼武者2』では海岸の波表現が、『FF10』でもブリッツボールやカットシーンでも水球などを表現していたことからも、当時各メーカーが直面していた一種の課題を感じ取れるのです。
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『スーパーマリオサンシャイン』を今から遊ぶには、現行機向けに移植された『スーパーマリオ3D コレクション』が望ましいですが、2020年9月から2021年3月までの期間限定で販売されていたためにDL版での販売は終了。店頭で新品か中古のパッケージ版を探す必要があり少しだけハードルは高めです。とはいえ、少なくとも本記事執筆時点の2022年であれば、店頭で見つけるのはそう難しくはないでしょう。
3Dアクションゲームとして難しさが目立つタイトルですが、夏のバケーションを楽しむ1作品として再び触れてみてはいかがでしょうか。