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コーエーの『大航海時代』シリーズは、今に至るまで高い人気を誇っています。
Motifとコーエーテクモゲームスの共同開発タイトル『大航海時代 Origin』は、同シリーズ2作目『大航海時代Ⅱ』の登場キャラを引き継いでいます。また、シリーズ4作目(外伝を除く)の『大航海時代Ⅳ』は様々なハードに移植されているロングセラータイトルです。
その一方で、『Ⅱ』と『Ⅳ』に挟まれた『大航海時代Ⅲ』(1996年発売)はあまり知られていません。
これは今でもSteamなどでオンライン販売されていない「封印されたタイトル」なのです。記事にすることさえ躊躇うほど、センシティブな内容のゲームとして知られています。
今回はこの『大航海時代Ⅲ』を現代のPCでなんとか起動してみましたので、実際のゲームプレイをご紹介します。かなり不安定な挙動だったのでゲーム画面をスクショする程度にしか進められませんでしたが(申し訳ない!)、筆者はかつてこのゲームにハマっていました。その時の記憶を呼び起こしつつ、シリーズ最大の問題作について解説していきたいと思います。
インドを目指せ!
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現実の歴史において「大航海時代」を切り開いたのは、ポルトガル人とスペイン人です。
この当時のヨーロッパで売られていた世界地図には、ヨーロッパと中東と北アフリカの一部しか描かれていませんでした。それより外の地域は殆ど知られていなかった、ということでもあります。しかし、かつて中国の元朝に仕えたマルコ・ポーロというオッサンが「遥か東方の島国ではベラボーな量の金が採掘されている!」と言ったせいで、黄金の国ジパングを目指そうとする船乗りが続々登場するようになりました。
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『大航海時代Ⅲ』の主人公の国籍はポルトガルかイスパニア(スペイン)のどちらかから選択できます。ポルトガルを選んだ場合は基本的に東回り、イスパニアの場合は西回りでジパングを含むインド地方(この時代、東洋は総じてインドと呼ばれていました)を目指すことになります。
このゲームの一応の最終目的は世界一周ですが、要はアジアやアフリカやアメリカ大陸を侵略して回る……という内容です。
世界はポルトガルとスペインのもの
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『Ⅲ』は大航海時代シリーズの中でも、極めて史実に沿った内容として知られています。
たとえば、ポルトガルとスペインはカトリックの国のため、イスラム王朝が支配する港には基本的には寄港できません。忍び込んだり役人に袖の下を渡す方法はあるものの、あまり無理をすると捕縛されて裁判にかけられるという事態も。
また、このゲームのスタートは1480年ですが、1494年になるとトルデシリャス条約が締結され、ポルトガル人がイスパニアの港を利用することができなくなります(イスパニア人がポルトガルの港を利用することも不可)。そしてセーブポイントは自国支配下の港のみという辛口仕様。ここまで史実に沿わなくても……。
『Ⅲ』は交易もできますが、それよりも探検による遺跡や宝物の発見に重点を傾けています。大都市にある図書館へ行き、本を漁ってヒントを得て、その話を地元の有力者に持っていってプレゼンして資金援助してもらう……という現代にも通じるプロセスが待っています。世界には様々な宝物が存在し、それを探して原住民から略奪して(「分捕る」という選択肢がちゃんとあります)証拠品としてスポンサーに提出する、というのが大まかな流れ。
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そして発見物の中には、「ホッテントット族」というのもあります。これ、筆者が言ってるんじゃないんですよ? 本当にこのゲームの中に「ホッテントット族」っていう記載があるんですよ!!!
ホッテントットとは、アフリカ南部の遊牧民コイコイ人に対する蔑称。現代人が当事者に対して「ホッテントット」と言うのは大きな問題ですが、「かつてこのような呼び方が広く使われていた」ということは否定できません。そのあたりも、『Ⅲ』では容赦なく再現されているのです。
中南米征服イベントも
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そして『Ⅲ』の最大の問題点は「奴隷貿易ができる」ということでした。
西アフリカの港に行くと、なんと奴隷を交易品として購入できます。その交易品はヨーロッパへ持っていくも良し、アメリカ大陸の港へ運んで高値で売るのも良し……。
これは初回ロット版のみの実装で、さすがに問題視されたのかその後のロットでは削除されています。しかし、当時のヨーロッパ人が何の躊躇いもなくアフリカから奴隷を調達していたのは不動の事実。そもそも、トルデシリャス条約自体が「世界はポルトガルとイスパニアのもの」という身勝手極まりない内容でした。
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また、中南米を侵略する前にドーニャ・マリーナという女性を通訳に雇うイベントも。このドーニャ・マリーナは、史実ではイスパニアのエルナン・コルテスに付き添ってアステカ文明を滅ぼす手助けをしてしまいます。中米からさらに南下して、今のペルーにあるインカ帝国を滅ぼすイベントもしっかり実装されています。
このような具合に、『Ⅲ』はあまりに史実的のため非常に血生臭い内容のゲームに仕上がっています。
『Origin』は当時の気候を再現
『Ⅲ』以降の大航海時代シリーズは、『Ⅱ』のキャラゲー路線を強化する方向性に徹しました。
では、近々登場する予定の『Origin』もそのようなゲームになるのか……というと、これは『Ⅲ』とは違った意味での「リアル志向」になるそうです。というのも、『Origin』は「当時の世界中の気象データを反映」しているとのことで、16世紀世界の小氷河期(飢饉も頻繁に発生しました)をどれほどリアルに再現しているのか要注目です。
……でもやっぱり、『Ⅲ』のSteam版って配信されないのかなぁ……?