「Indie Games Contest 学生選手権」審査員インタビュー
――審査員を務めての感想を教えてください。
宮田吉田さんが(授賞式での)講評で触れていましたが、今回のコンテストは学生たち自身によるプレゼンも実施されました。まだ学生なのにすごく熱意のこもったプレゼンが多く「ここにこだわりましたので遊んでください!」という強い気持ちが伝わってきて楽しかったですね。
吉田私はこうした企画で審査員をさせていただくことが多いのですが、『Death the Guiter』はプロのクリエイターによるインディーゲームの中にまざっていても遜色ない魅力を持つゲームだと感じました。このまま作り込んでいけば、評価されるゲームとして発売できると思います。
平元市場ではなかなか見られない、学生さんならではの観点や感覚で作られた作品ばかりで、楽しむと同時に驚かされました。昨今はゲームそのものだけではなく、どのようなクリエイターがどんな思いで作ったのかというようなところもセットになってプレイヤーに届きやすくなっていますので、そういった意味でも有意義なコンテストだったと思います。
――審査をしていて印象に残った作品や傾向はありましたか?
宮田僕が賞状を授与させていただいた『JackALoop』はMOBAという難しいジャンルに挑戦するだけでなく、より幅広いユーザーが楽しめるように改良されていたタイトルでした。プロでも難しいであろうテーマにチャレンジする姿勢がすごくよかったですね。印象に残りましたし、今後の可能性を強く感じました。
吉田プレゼンではMidjourney(画像生成人工知能プログラム)で生成したビジュアルを資料に活用している人もいたりして、新しい時代が来たなと感じました。こうしたAIツールは今後ものすごく発展していくと思いますし、これからのサービス・ツールですので、そういう意味では「学生たちもプロと同じスタートラインに立っている」と言えると思います。
大手メーカーは権利関係などのリスクからゲームへの直接の使用を控える判断をするケースもありますが、そうした懸念を物ともせず、他の人がまだやらないことを率先してできるのがインディーゲームクリエイターの強みでもあります。よりおもしろいゲームの登場に期待しています。
平元審査員特別賞の『CRUSHER』は、僕と吉田さんのプッシュで決めさせていただきました。荒削りではあるのですが「モノを壊して、爆発させる」というプリミティブな欲求・遊びをポップな世界観でとことん突き詰めた作品で、我々にはない感性を大切にされているのが伝わってきました。
――日本のインディーゲーム市場に期待することを教えてください。
宮田吉田さんがおっしゃったように「プロの作品群にまざっていても"戦える"インディーゲーム」が学生の中から出始めているのは、日本のシーンにおいて大きなプラスだと思います。ゲームを作る土壌がどんどん整ってきており、今の学生クリエイターが10年後、20年後にどんなゲームを作ってくれるのかと思うと可能性しか感じませんね。このまま、ゲームを作ることが遊びや趣味といえるくらいに浸透すればおもしろいインディーゲームがもっと増えてくれると思います。
吉田私は2008年にアメリカから帰国しました。欧米ではその時すでにインディーゲームがブームになって盛り上がっていましたが、戻ってくると「日本ではあまりインディーゲームが遊ばれてないぞ!?」と。その頃からずっと、日本のみなさんにもインディーゲームのおもしろさを発見してほしいと思い、行動し続けてきましたが、その市場がここ数年で一気に花開いた感があります。私にとっては待ちに待った時代の到来で、このコンテストはまさにその象徴でした。
平元インディーゲームを取り巻く潮流――作り手の増加や遊べる環境の整備は、ここ数年で本当に大きくなったと僕も感じています。プレイヤーとしてはプロのクリエイターや大手メーカーによるメジャータイトルにも目が行ってしまいがちな面もあるかもしれませんが、インディーゲームの存在や、AAAタイトルとは異なる魅力などをマスメディアとして発信し、より多くの方にゲームを買う時のカテゴリーのひとつとして認識してもらえればと考えています。
――学生インディーゲームクリエイターへのメッセージをお願いします。
宮田学生がプロになる前から積極的に挑戦できる場が増えてきています。ぜひこうした企画やコンテストを活用してください。漫画や音楽のように、会社に所属せずとも世に羽ばたいていけるチャンスがここにあります。
吉田プロと学生さんの垣根は、近年どんどんとなくなってきています。たとえば、アメリカのインディーゲーム『Before Your Eyes』はプレイヤーのまばたきを認識してゲームを進めるアイディアが盛り込まれた作品ですが、学生のプロジェクトとして始まったのがきっかけでした。それが練り込まれて、ついにはBAFTA Games Awardを獲得するまでになっています。
私は「同じことが日本でできないはずがない」と思っています。日本だけでなく世界中の市場やゲーム業界に視野を広げながら、今後も一層活躍してもらえれば嬉しいです。もちろん、そのためには英語の勉強も大切ですよ。
平元「今はプレイヤーも作品の向こうに見えるクリエイターの情熱や思いに敏感になっている」のは先ほどお話した通りですが、私は同時に「それでも結局プレイヤーが一番求めるものはゲームのおもしろさであって、本質的には会社の規模やクリエイターの年齢・性別などは一切問われない」とも思っています。これからも、自分にとって本当におもしろいゲームはなんなのかを突き詰めて作ってもらえたら、これ以上のことはありません。
※UPDATE(2023/5/3 12:00):受賞作『Death the Guitar』の名称に記載ミスがありました。お詫び申し上げます。