いよいよ発売の『ゼルダの伝説 ティアーズオブキングダム』。冒頭の場面では、ハイラル場の地下に眠る遺跡をゼルダ姫とリンクが探索します。壁画を見た直後の会話の中では、“I can’t shake”“It can’t be”“I can only hope”助動詞の「Can」を使った定型表現が連続して出てきました。助動詞「Can」の使い方は主に「能力の可否」「可能性(推量)」「許可」の3つを習いますが、定型表現、それも遠回し表現でもよく用いられるために、一見肯定文であって否定の意味であったりその逆も有り得る、英語初心者がよく引っかかる点です。今回はそんな「Can」を使った表現を見ていきましょう。
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I can’t shake the feeling that I’m missing something here.
日本語訳:何か見落としている気がしてならないのです。
日本語版:腑に落ちませんね…
“I can’t shake the feeling ~”は定型表現で、「~という不安を拭えない」「~がどうしても気になる」という時に使います。「Shake」は他動の「振るい落とす」であるのに注意して、「私はこの感覚(嫌な予感)を振り払うことができない」、確証のない懸念を示すくらいにちょうど良いですね。
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y would anyone want to keep this whole area a secret? It can’t be because of what’s shown in those murals...
日本語訳:何故この場所を秘匿しておきたいのでしょう?壁画の内容が理由ではないはず…
日本語版:壁に描かれた内容を見ても禁忌にするほどとは思えませんし…
“It can’t be”は「Must be」「May be」などの推量表現の一種で、「そんなまさか」という状況で日常でも頻繁に使うフレーズです。「Can」の推量は、普通に考えてあるいは予想通りならという、「その対象が通常通りに振る舞えばそうなるだろう」の予測がポイント。英会話表現の“It can’t be!”はこれを前提に不自然や想定外だという意味合いを含め、「あり得ない」「まさか」の訳が当てられています。
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I can only hope we’ll find more answers father below.
日本語訳:この先で答えを見つけるしかありませんね
日本語版:答えはまだこの先にあるのかも…
単純な“I hope ~”に「できるのは願うことだけ」と加えることで、期待がいくつか潰されて若干ネガティブになるなか、残された可能性に望みを託すニュアンスが含まれます。これが「I wish I would」の場合だと実現可能性の見込みがそもそも低いので、むしろほとんど諦めに近い感情になります。「Hope」「Wish」の使い分けに注意しましょう。
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ゼルダが使った3つ以外にも定型表現はまだまだあり、その中からいくつかピックアップします。
I can’t help ~
「Help」のイメージは「介入によって状況や結果を変える」なので、自分の意思では状況を変えることができない、それで「仕方がない」「~せざるを得ない」の意味になります。
Can’t ~ too ~/Can’t ~ enough ~
「どれだけ~しても~にはならない」の派生2種類。「多すぎても問題ない」「どれだけしても足りない」との違いはありますが、念には念を入れての忠告や、ポジティブなことの誇張の表現といった基本的な使い方は似ています。
“I can't get enough of ~”はどれだけやっても飽き足らない、つまり否定文であっても「飽きない程大好き」のポジティブな表現ですね。
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You can say that again.
話し相手が何か言ったときに、「全くその通りだ」と相手の意見に完全に同意するときに使います。自分も同じように言いたいけれど、そのまま帰すのも野暮なので、自分の代わりにもう一度言ってくれ、ということですね。
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「Be」「Do」「Have」など、英語に限らず語学ではすぐに覚える基本の言葉がありますね。そういうものほど応用の幅がとても広く、知っている範囲で訳すと大変な誤訳を引き起こすケースがよくあります。「基本」の言葉こそ油断せず、使い方を逐一確認してバリエーションを常に更新していきましょう。