ミニチュアゲームの代表作「Warhammer 40,000」をテーマとしたレトロスタイルFPS
テーブルの上を片付けて薄紙1枚の地図を置き、コップや紙箱のビルを建てフィギュアの兵隊を並べたら、あっという間に小さな戦場の出来上がり。
指の大きさほどの兵隊がストローサイズの銃を構え、握り拳ほどの戦車が敵の包囲を突破する。想像力の翼を広げたならば、火薬も硝煙も火の手もなくともそこはもう無数のロマンを生む立派な戦場なのです。
かつて軍隊での戦術や戦略といった軍事研究で行われていた兵棋演習。チェスや将棋を複雑化したような、もっと言えば兵科や階級ごとに細分化された駒に、特火点や集積所といった軍事関連の諸要素が組み合わされた地形図。そして、あらゆる偶然を処理するためのサイコロと、火力の効能をまとめたリストなどからなるこの兵棋演習は、後に一般向けの娯楽としてより簡略化された「ウォーシミュレーションゲーム」へと派生していきます。
そして、この兵棋演習と、もっと昔から存在するごっこ遊びの代名詞たる「ブリキの兵隊」といったフィギュアが結びついたものこそ、いわゆるミニチュアゲームなのです。
金属製のメタルフィギュアに「キン消し」に代表されるゴム製。食玩にアクションフィギュアにソフトビニール人形。素材も種類も様々なミニチュアを駒として、一定のルールに従いつつ紙製の地図やジオラマの中を動かしていくミニチュアゲーム。中世から近代、あるいは遥か未来まで。地上で海上で空で宇宙で、ありとあらゆる場所で行われる戦場を再現することで、時間と場所を超越し遊ぶ者の心を動かす。これこそミニチュアゲームの魅力の1つと言えるでしょう。
今回ご紹介するレトロスタイルFPS『Warhammer 40,000: Boltgun』は、そんなミニチュアゲームの代表作である「Warhammer 40,000」をテーマとした作品です。
「Warhammer 40,000」とは
「Warhammer 40,000」は英国のゲームズワークショップが展開するゲームとその派生作品で、41千年紀の遠未来の宇宙を舞台とするSF作品群です。
作中世界で「皇帝」に率いられた帝国は、その版図を銀河内のほぼ全域まで拡大し、銀河統一の寸前という絶頂期にありました。そして、この時に創りだされた遺伝子的、肉体的強化が施された超人兵士が「スペースマリーン」です。
「スペースマリーン」という強兵と彼らを率いる皇帝および18人の「総主長」と呼ばれる人造の超人将帥たちの働きにより無類の栄華を誇る帝国でしたが、「ケイオス」4大神の陰謀により大規模な内乱が発生します。「総主長」が9人ずつ、文字通り帝国を2分し、後に「ホルスの大逆」と呼ばれるこの内乱により、帝国は急速に弱体化へと向かうこととなります。
帝国とケイオス、そして無数の異種族たち。広大な銀河にはただ戦争だけが残され、終わることのない熾烈な争いが永遠と続くこととなったのです。
作品全体に広がるダークな狂気と悲壮さ。遠未来という設定にも関わらず城塞の如き見た目の宇宙船に、異端審問官などという時代錯誤な存在。そして、胞子で増え戦乱を全力で満喫する異種族「オルク」に代表される、クセもインパクトも強烈な多くの登場勢力。
あまりの内容の濃さ故に、1回で理解するのは困難というかほぼ無理ですが、噛めば噛むほど味が出て、知れば知るほど好きになる。そんな作品群となっています。
本作の主人公「スペースマリーン」
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特徴ともいうべき青く重厚な装甲服に身を包んだ、本作の主人公である「スペースマリーン」は、異端審問官サイベルの命により工業惑星グライアにて観測された異常を調査すべく派遣されます。
そして、そこで目にしたのは暗黒神である「ケイオス」4大神に魅入られ、堕落し、寝返った「ケイオススペースマリーン」やその他有象無象の異端者の姿でした。
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彼らがここで何をしようとしているのかは不明ですが、良からぬことを企んでいるであろうことは確実で、疑う余地など毛頭ありません。まして、相手は畏れ多くも神聖なる皇帝陛下に仇なす異端者なのです、生かしておく道理など微塵もありません。
携えたチェーンソードとボルトガンで、立ち塞がる敵を尽くミンチに変えつつ、任務遂行のために歩を進めるのでした。
異端者どもに生きる資格なし!眼前のあらゆる敵をミンチに変える爽快感!
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舞台となるのは戦争だけが残されたとある銀河、当然ながら倫理や人道性なんて影も形もありません。そして敵は堕落した異端者ども、とくればもはや遠慮は不要です。
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接近戦ではチェーンソーと剣が組み合わさった武器、その名も直球なチェーンソードが唸ります。ザコ敵ならさっと一振り、鎧袖一触。ミンチの山の出来上がり。
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ケイオス側に寝返った「ケイオススペースマリーン」は、その装甲ゆえにちょっとは耐えますが、そんな相手はキー連打で押し付け攻撃。これまたミンチの山の出来上がり。
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遠くの敵相手には、飛び道具のボルトガンの出番です。弾ではなくボルトを打ち出す考えただけでも痛そうなこの武器、生身の相手にはやはり威力過剰のようで、容易く相手をミンチに変えてくれます。
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他にもFPSの定番、各種グレネードにMAP内に散在している誘爆するドラム缶。高所からの踏み潰しや高速移動からの体当たりでも相手は軽く弾け飛びます。
あの手この手で敵を千切っては投げ千切っては投げ。ちょっとクドすぎる気もしますが、爽快なことには変わりありません。
レトロもモダンも自由自在!設定次第でレトロにもモダンにも変更できるグラフィック
本作のオプション設定には、ビデオや操作方法といった一般的なものに加えて独特な項目が存在しています。その名も「レトロ」、色深度やピクセルの粗さを変更することでレトロな表現に変更することが可能なのです。
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流石に極端な設定となると、著しく視認性が悪化するのですが、ちょうどいい設定だと世代の人には刺さるいかにもなグラフィックとなります。
モダンなFPS体験をレトロなグラフィックで楽しむ。ちょっとした味変感覚で設定を変えてみるとなかなか面白い、そんな機能です。
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「Warhammer 40,000」シリーズの顔役ともいうべきスペースマリーンを操作して、一騎当千の大暴れを味わう本作。同シリーズのダークでブラッディな雰囲気は、しっかりと表現できていると思います。加えて、前述の「レトロ」設定に加えて、ゲーム体験自体もオールドスクールな90年代風のシューターで、この世代の人にはグッと来るものがあるのではないでしょうか。
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一方で、ほぼ一本道のルートに全体的に説明不足な部分が多い点。また、出現する敵をひたすら撃つの繰り返す単調さゆえに、やや飽きがきやすい点は少し気になります。
各ステージにはシークレットとして複数の隠しアイテムが脇道に配置されたりしているのですが、そういったものは大体が効果時間が決まっています。そのため、前述の説明不足と合わさって効果不明のアイテムを脇道で取得し、本ルート復帰時には既に効果時間切れなんてことが非常に多く、わざわざ探検しようという気が起こりにくいのが少々考えものです。
また、特徴の1つであるノード式のモダンな敵AIというのも、正直あまり実感が湧きません。特に低難易度では顕著で、敵の弱さ故に気づいたら死んでいるというパターンが多く、それほど意識に残らないのです。
確かによく観察していると、自発的に遮蔽をとろうと移動していたりする様子も確認できるのですが、ほとんどが背後からの滅多打ちでミンチの山に。やや打たれ強い「ケイオススペースマリーン」も、ボルトガンで打たれて怯みっぱなしのままミンチ化と、行動できぬまま死ぬ敵がほとんどです。
この辺りは高難易度では状況が異なるかもしれませんが、少なくとも低難易度では特徴として意識できるほどのものではないというのが率直な感想となります。
もちろん、『DOOM』などのシューターのファンであれば本作も十分楽しめる作品となっていますし、血まみれのゴアに次ぐゴアは爽快感溢れるものとなっています。それに、「Warhammer 40,000」の作風自体、本作のようなシューターとの親和性が高いというのを実感できる作品です。
概して「Warhammer 40,000」シリーズのファン、また90年代風シューターのファンならば、満足できる作品かと思います。
スパくんのひとこと
「Warhammer 40,000」をテーマとした古き良き90年代風シューターを楽しめる1作スパ!ただ、もう少し詳しいアイテムとかゲーム内要素の説明が欲しい所スパ。あと、「Warhammer 40,000」を題材としたゲームは多いスパ。その辺り差別化できるような強烈な個性は欲しいスパね!…スパくんは異端者じゃないスパ、皇帝陛下万歳スパ!あー、ホルス総主長万歳…ってしまった、この人大逆派だったスパぁ(ギョリギョリギョリ)
タイトル:Warhammer 40,000: Boltgun
対応機種:PC(Steam/Microsoftストア)/PS4/PS5/Xbox One/Xbox Series X|S
記事におけるプレイ機種:PC
発売日:2023年5月24日
記事執筆時の著者プレイ時間:3時間
価格:Steam 3,300円(2,970円のセール中)
¥2,970
(価格・在庫状況は記事公開時点のものです)