■「マルチウィンドウ」が、プレイ意欲の維持と情報量のコントロールに貢献
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『ドラクエ』が採用した「マルチウィンドウ」も、見逃せない重要なポイントです。メニュー内のコマンドを実行すると、そのコマンドにまつわるウィンドウが前面に表示され、複数のウィンドウで様々な情報を提供してくれるシステムです。
当時、パソコン向けにリリースされていたRPGの多くは、フィールドやダンジョンの画面と共に、別枠でキャラクターのステータスやメッセージ画面を同時に表示していました。このスタイルは、多くの情報を随時確認できる利便性を持ちますが、その分煩雑になりやすく、またフィールドの画面が必然的に小さくなり、没入感を阻害するデメリットもあります。
『ドラクエ』の「マルチウィンドウ」は、確認した時はウィンドウからコマンドを入力しなければなりません。一手間かかるのは事実ですが、フィールド画面などが表示されたままなので、持ち物の確認をしている間も冒険が中断している感じはなく、常に「勇者」な自分でいられます。
また、情報は多ければいいとも限りません。ゲームに慣れていないと、目にする情報が多すぎると消化しきれず、プレイの心地よさを阻害する要因になります。RPG初体験のユーザーが多いとくれば、情報量のコントロールは重要事項のひとつ。出し過ぎないようにセーブできる「マルチウィンドウ」は、その意味でも優れたシステムでした。
「マルチウィンドウ」自体は『ドラクエ』以前から存在していますが、作品の立ち位置やユーザーのRPGに対する理解度を踏まえ、的確なシステムを採用したそのセンスに脱帽です。
■自らの意志で成長させ、結末すらも変えられる“ゲームならではの体験”の提供
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ファミコン初のコマンドRPGとして、新たな道を切り開いた『ドラクエ』。慣れないユーザーに向けたチュートリアルの導入や一部システムの簡略化、出し過ぎない情報量のコントロールなど、隅々まで配慮が感じられる先進的な作品でした。
しかし、そうした配慮だけが『ドラクエ』の魅力ではありません。漫画や小説では味わえない、ゲームだからこそのプレイ体験も、ユーザーを大いに魅了しました。戦いを通じて主人公のレベルを上げ、強力な武具で強くなる実感。努力を重ね、手ごわい敵を撃破する爽快感。努力と結果を結びつける絶妙なゲームバランスが、「勇者の冒険」をユーザー自身の喜びとシンクロさせたのです。
雑魚相手に苦労していた勇者が、気が付けばドラゴンをも打ち負かすほどの存在に成長していく。漫画ではよくある展開ですが、その過程に直接関わる体験は新鮮で、ゲームならではの楽しさがそこにありました。
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しかも、ユーザーが干渉できるのは、成長過程だけに限りません。ラスボスである竜王の提案に従うか否か。また、竜王を倒すまでにローラ姫を救ったかどうか。プレイヤー自身の行動が、物語の結末すら変化させました。
それは、ゲーム的な表現に置き換えると、「マルチエンディング」の実装です。竜王の提案に乗れば、いわゆるバッドエンディングを迎えます。また、ローラ姫の救出は必須ではないため、彼女がいるかどうかで竜王討伐後のエンディングが変化します。
キャラクターを育て、結末をも変えられる。漫画や小説では味わえない体験を、『ドラクエ』が与えてくれたのです。そうした革新性を正確に理解したユーザーは、当時はまだ少なかったことでしょう。しかし、肌で、そして本能で実感した人々の多くが、RPGの虜となりました。その道を切り開いた先達こそが、他ならぬ『ドラクエ』でした。
37年前の最先端は、今から見れば37年前のゲームに過ぎないかもしれません。ですが、初代『ドラゴンクエスト』が踏み出した道に、多くの名作たちが続いた結果、37年経った今も「RPG」というジャンルは輝き続けています。
『ドラクエ』で初めて触れた体験は、これからも刺激的な景色を見せてくれることでしょう。そして、シリーズ最新作『ドラゴンクエストXII 選ばれし運命の炎』への期待が、改めて募るばかり。40年近い時が流れてもなお、『ドラクエ』はユーザーをワクワクさせてくれる存在です。