今回プレイしたタイトルはモバイル向けRPG『ドールズフロントライン』の原点とも、スピンオフともいえるターン制シミュレーションRPG『逆コーラップス:パン屋作戦』。長い沈黙を経て再び動き出した本作は現在開催中の体験版の祭典「Steam Nextフェス」に合わせ、デモ版を公開しています。
人気ゲームのスピンオフというだけでもプレイヤーの目を引きますが、オリジナル作品に興味がないという方にも是非注目して頂きたい、シミュレーションRPGとしての面白さが感じられた本作の体験版。実は『ドルフロ』は聞いたことがあるぐらい…という筆者でも、全ミッションでSランクを達成してしまうその魅力をプレイレポ形式で紹介していきます。
『ドルフロ』30年後の未来を舞台とした骨太ストーリーを展開
冒頭でも紹介したように本作は『ドルフロ』の30年後の未来を舞台としたスピンオフ作品で、開発スタジオMICAteam雲母組が同人時代に製作した『面包房少女(CODE NAME:BAKERY GIRL)』をリメイクしたものです。
近未来の「第二次冷戦」を舞台に、新興勢力「南極連邦」と「ロクサット主義合衆国連盟」の争いの中で繰り広げられる工作員“モンド”、謎の銀髪の少女“ジェフティ”の逃避行を描きます。
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ゲームはストーリーパートとターン制SRPG式の戦闘パート、それらを繋ぐ準備パートの3場面を繰り返す形で進行します。ストーリーパートでは美麗な2Dアニメーションの立ち絵キャラクターやイラストカットと共に本作の骨太なストーリーが展開されます。
テキストにおいてはオート再生や倍速送り、UIの一時消去、ログといった機能はもちろんのこと、作品固有の用語を色付きで強調表示し、クリックすることでその場でゲーム内辞書から該当用語の詳しい解説を閲覧できるなど、シリーズ初心者を置いて行かないための配慮を感じました。
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ステルスシステムが肝となる
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次に戦闘パートをご紹介。戦闘は「バトルチェス」と名付けられた王道のターン制SRPGで、移動や攻撃といったそれぞれのアクションについて消費し、ターンごとにMaxまで回復するAPを上手く割り振り、ステージ目標の達成を目指します。
ステージ目標は単なる敵の殲滅の他、指定地点への到達や指定ターン数の生存など様々な物があり、ステージによってはその攻略方法にもいくつかのバリエーションが存在しています。
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というのも本作では、敵の視界と自分の視界、体勢等の要素で成り立つステルスシステムが存在し、どの場面で敵に見つかるかによってもその後の展開に違いが生まれます。そのため、ただ見えている敵を倒せばよいというわけにはいかず、不用意な行動が時に思わぬ窮地を生むこともありました。
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一方で、丁寧にステルスを駆使して進めば、目標次第で一切戦闘をせずともクリアできる場合があり、戦闘が必須となる殲滅ミッションであっても、有利なポジションからの奇襲と総攻撃といった具合に十分戦略的な価値を感じました。
シミュレーションRPGでよく見る、いわゆる敵の攻撃可能範囲である危険範囲の表示と同じように、これらのステルスにおける戦略について重要となる敵の視界、自分の視界といった情報についても、キャラクターごとの個別のものから敵視界のまとめての表示まで、UIできっちりとサポートされている所も評価点と言えるでしょう。
手の届きそうな目標に熱が高まる絶妙なバランスのサブターゲット
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またメインの目標とは別に、クリア時の評価に関わるサブターゲットも用意されています。筆者が本作の戦闘に一番味を出していると感じたのがこのサブターゲット。“味方が瀕死にならない”、“敵ユニットの指定数撃破”といった簡単な物の中に、“狙撃手に撃たれない”など各ステージに一つは絶妙に手が届きそうで試行錯誤が必要な難度の物が存在し、そちらの攻略を目指していつの間にか熱中してしまっていました。
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この点でも先に述べたステルス要素が大きく関わり、例に挙げた“狙撃手に撃たれない”の達成を目指した際には、索敵を怠り視界外のスナイパーから襲撃を受けたり、多方向からの襲撃に対応しきれずスナイパーの攻撃を受けてしまうなど、何度も失敗を繰り返しました。サブターゲットの攻略にはステルスを使いこなすことが必須と言えるでしょう。
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なお戦闘パートとは言うもののメインミッションの進行に従ってストーリーが展開されることも多くあります。この点はプレイヤーの操作体験とストーリーとの距離を近づけ、より没入感が高められるように感じました。
スキルやアイテム強化の優先順位がカギを握る一本道のゲームプレイ
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最後の紹介となる準備パートは、戦闘で得た物資やレベルアップボーナスの割り振りを行うパートです。物資は手榴弾や回復アイテム、偵察機といった戦闘に有用なアイテムに合成でき、その威力や回復力を向上する品質のレベルアップもここで行うこととなります。合成は戦闘中に行うこともできますが、APを消費する行動であるため特別な理由がない限りはここで作っておくのが無難でしょう。
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キャラクター育成では主に武器の強化とカスタマイズ、そしてキャラクターごとの固有能力となるゲノムスキルの強化が行えます。ゲノムスキルは敵の撃破によって溜まるスキルポイントを用いて能動的に発動できるものと、パッシブ効果として常に発動している物に分かれ、攻撃力や命中率を強化したり、敵の攻撃への反撃や味方の攻撃に伴っての追撃といった特殊な効果を得られるものもあります。
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更に準備パートからは、ストーリーと関係なく戦闘を行い、経験値を得られる模擬訓練へと出撃することも可能です。ただし、模擬訓練によるレベルアップにはストーリーの進行具合による上限が存在しています。また、基本的にストーリーミッションは一本道で、1つのセーブデータにおいてクリア後に再度ミッションを行うことはできないため、物資の入手などには注意が必要です。
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体験版時点ではレベル上限の関係から全てのスキル、武器を強化することもできないため、自分のプレイスタイルに合った物を見極め、適切にレベルアップさせることが攻略のカギとなります。
シリーズファンはもちろん、SRPGファンにこそおすすめしたい魅力十分
以上のようにモバイルゲームのスピンオフとなめてはいけない本格シミュレーションRPGとしての側面が色濃い本作。筆者のプレイ難易度は3段階中一番簡単なレジャーモードでしたが、それでも思わぬ面白さと奥の深さに気づけば10時間以上に渡ってプレイしていた大盤振る舞いの体験版でした。
なお、標準モードではセーブ回数が制限され、チャレンジモードでは敵の能力値の強化や模擬訓練での経験値取得不可といった条件が追加されるほか、実績やギャラリーの収集といった要素も残されており、筆者のプレイした範囲以上にまだまだやり込める点が残されています。
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少しだけ残念な部分として一人称や口調の揺らぎ、完全に中国語の文が表示されるといった具合に時折ローカライズに難がある部分が見られることが挙げられますが、あるステージから進行不能となるバグが期間限定の体験版ながら迅速に改善されるなど、開発のフットワークの軽さにはかなり信頼が持てるため、製品版迄にはこちらの改善も期待できるのではないでしょうか。
総じて、シリーズファンはもちろんのこと、シミュレーションRPGに興味がある、目がないといった人にこそおすすめしたい、ゲームとしての面白さ十分の作品だと言えそうです。
スパ君の一言
王道SRPGとして完成度の高い作品スパ!簡単すぎず、かといってクリアするだけなら難しすぎることもないバランス調整は秀逸の一言に尽きるスパ。
タイトル:逆コーラップス:パン屋作戦
対応機種:WindowsPC(Steam)/モバイル(後日対応予定)
記事におけるプレイ機種:WindowsPC(Steam)
発売日:2023年
著者プレイ時間:11時間
サブスク配信有無:無
価格:後日発表
※製品情報は記事執筆時点のもの