今回のゲーム系プラモデルレビューは、『アーマード・コア4』(以下、AC4)と『アーマード・コア フォーアンサー』(以下、ACfa)において、プレイヤーが初めに選べる3種のプレイアブル機体の1つである1/72「インテリオル Y01-TELLUS テルス」です。
制作期間と記事公開の都合から今回は記事を素組みの前編と、塗装とレビューの後編の前後編に分けました。後編は塗装とレビューが主体となり2007年に発売した本キットがいかなるプラモデルであったかを探ります。
終わりが見えなかった塗装
さて、後編は合わせ目消しを含めた1/72「Y01-TELLUS」の全塗装です。早速合わせ目消しから入りたいところですが、とにかくパーツが大量なために順序を考えるのが大変でした。脚部と腕部両方に合わせ目消しをしたかったところですが、パーツ数が多く簡単に完成しない脚部を後に回し、まずは腕部とショルダーユニットに搭載するSM01-SCYLLAと、バックユニットのBM03-MEDUSAの合わせ目消しを行いました。
合わせ目に対してパテを盛り、隙間を埋めてサーフェイサーを使い塗装をし始めて気付いたことと言えば、とにかく大量にある細かいパーツの塗装も並行しなければ簡単に完成しないということです……。
そのため、関係なさそうなパーツも並行して塗装します。小さなパーツが多いことからグレーのサーフェイサーを使ったシャドウ吹きは望めないために、全てをブラックのサーフェイサーで下地を整えつつ、シェーディングを行うことを決意します(いわゆる黒立ち上げ)。また、『アーマード・コア4』におけるテルスは、光沢表現が目立つことから光沢塗料かメタリックカラーを用いることに決めました。
そのため青部分にXC05サファイアブルーを選択すると共に、白部分をC316 ホワイト FS17875に決めます。テルスは、ほぼこの2色で構成されますが、一部パーツのグレー部分はC305 グレー FS36118に、接続部のパーツはC61焼鉄色を選びました。なお青部分は黒サフ→光沢ブラック→XC05サファイアブルーで塗装しました。
パーツの塗装は、細かなものが多いことから無我夢中で順序なく色を塗りつつもミサイル部分を中心に進めていました。パーツを順序無く塗っていたこともあって途中経過を撮影していませんが、とにかく終わりが見えないため、正直かなり心身ともに体力を消耗したことは隠せません。
さらに夏の暑さも立ちふさがりました。暑さで危険なところ塗装ブースの排気の関係で実質冷房が使えず、防毒マスクからくる息苦しさもあって気温が上がらない夜にしか塗装出来ないことも困難さの一因でした。
しかし、長く続く塗装の中、キットが小さなパーツを継ぎ足しながら構成していることと、その中心がコアパーツだったと理解したことは幸いでした。
外側のパーツだけを塗っていると、バラバラに保管しなければならないパーツが多く管理が困難ですが、中央のパーツから外側へ広がるように塗装できれば、塗装後すぐに組めるためパーツを無くしにくいことが大きな理由です。
このコア部分のパーツを塗装したあとは順調に進み、コア→両腕を組み上げたタイミングでようやく全体の半分を超えました。あとは、両脚と武器の合わせ目消しの後にマスキングして塗装すれば完成です。タイトなスケジュールのなか、とにかく空いた時間を本キットに投入しつづけ、ついに完成した瞬間は感無量でした。
圧倒的なパーツ分けとディテールで納得させるヘビー級キット
さっそく、塗装を終えた1/72テルスを見てみましょう。全体的に白と青が分けられて武器を含めた存在感が増したほか、細かなディテールもより強調されるようになりました。
しかし基本的には武装も含めて似たようなカラーリングのパーツで占められているために、派手さを感じるものの装備に統一感があります。
素組み時においてポロポロ外れてしまったパーツは瞬間接着剤で固定しており、外れなくなったことで取り回し易くなりました。
しかし、素晴らしいディテールで構成されているのに、重心位置の関係から前後に転びやすいため、あまり動かせないことが残念です。これなら、重装備を持ったこのテルスで無く、『アーマード・コア4』や『アーマード・コア フォーアンサー』の初期機体としてのテルスであれば、武装の重量バランス問題に直面しなかったのかもしれないと思ってしまいます。
次は、2017年に制作して2022年年末までに改めて完全塗装した1/72ホワイト・グリントと並べて見ましょう。1/72 ホワイト・グリントはテルスより後に開発されたキットであるために、フライングベースへの接続穴があることに加え、可動範囲も広くアクション性の高いポーズもとれるようになっています。
パーツ分け自体も1/72ホワイト・グリントは、1/72テルスより洗練されていて、オリジナルのキットが発売された2009年までの2年間に着実な進歩を遂げていたことがよく分かります。
多量パーツで素組みでも見映えする形になることを選んだ1/72「テルス」
1/72テルスのパーツやプロポーションのディテール自体は2023年でも通用しますが、可動域の狭さやフライングベースに接続出来ないことを考えると、2023年にそのまま組み立てるに厳しさも残るキットです。2018年再販時の価格は4,620円(税込)なので、ディテールだけをみると価格相応に思えます。
筆者の主観では2005年を境に、大手メーカーでは可動域の拡大を求めるキットや、色分けを追求したキットが少しずつ登場していたようにも思えました。そんななか、2007年発売のテルスはパーツの色分けを追求したキットであることが理解できます。その証拠にシールやデカール類は付属していませんでした。
合わせ目も極力出てこない構造ではあるのですが、モナカ割りのパーツも多く2007年相応のキットであると思えます。一部パーツの構造や構成を変えて可動域を広げたり、フライングベースへ対応させた改良版が欲しくなるキットです。
・2007年発売とは思えないプロポーション
・ほぼ完璧なパーツの色分け
・多く付属する武器
悪い点
・狭い可動域
・トップヘビーになってしまう装備ばかりで重心位置が高く不安定
・多すぎるパーツと読みにくい組み立て説明書