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初代『METAL GEAR』とは、後に続く『METAL GEAR SOLID』シリーズの原点であり、様々なデバイス向けに復刻されているステルスアクションゲームの金字塔です。過去に復刻されているのはどれもオリジナルであるMSX2版を基礎としている一方、移植版であるファミコン(FC)版は、ゲームキューブ向け『METAL GEAR SOLID』リメイク版である『METAL GEAR SOLID THE TWIN SNAKES』の限定特典でしか復刻されていません。
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現代において遊ぶにはハードルの高かった作品ですが、『METAL GEAR SOLID: MASTER COLLECTION Vol.1』のボーナスコンテンツとして、海外向けに発売されたNES版と共に再復活しました。そのNES版の続編として開発された海外限定タイトル『SNAKE'S REVENGE』も同時に収録されています。
本記事では、今回復活したFC版を同じくコレクション収録のMSX2(復刻)版『METAL GEAR』とゲームクリア時点まで比較するほか、日本で遊ぶにはハードルが高かった『SNAKE'S REVENGE』を、ストーリー序盤を中心に紹介していきます。
なお本記事に記載されている内容は、各作品のオンラインマニュアルが未公開な時点でのプレイを元にしているほか、発売後の製品と一部仕様が異なる可能性もあるのでご了承ください。
オリジナル要素も存在!FC版『METAL GEAR』をゲームクリアまでプレイしてみた
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本コレクション公式サイトにて、FC版はオリジナルから「大幅に内容を改編」と紹介されていますが、まず飛び込んでくる変更点は冒頭のデモシーンです。MSX2版では主人公ことソリッド・スネークが武装要塞「アウターヘブン」に水中から侵入するシーンから始まったのに対し、FC版では空中からのパラシュート降下に変更。初期のゲーム開始地点も基地の中ではなく、“ジャングル”のマップになりました。
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初代『METAL GEAR』は複数のビルをまたがってゲームが進行しますが、MSX2版はゲームの導線がハッキリしていて“一本道”のような作りになっている一方、FC版はいくつかのビルのフロアが分割され、それぞれ別のビル扱いになっているほか、上記ジャングル(とそこに配置されているトラック)を起点に各ビルへ行き来するため、“マップ探索型ゲーム”という印象が強くなっています。
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ジャングルを抜けマップ南にあるトラックに乗ると、最初のビル(ビル1)に到達。本ビルはMSX2版と似通った作りになっており、攻略手順もほとんど一緒ですが、FC版独自の仕様が浮き彫りになってくるのもこの段階からです。
まずMSX2版ではエリアを移動した際、次エリアでのプレイヤーキャラの出現位置に応じた敵の配置調整が行われます。このシステムがあることで、ドア周辺を巡回する敵兵がいたとして、警備のスキを掻い潜り室内に侵入したプレイヤーキャラが、同じドアを出た瞬間に敵兵に見つからないようになっています。
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しかし、FC版でこのシステムは導入されておらず、エリアを移動した途端に敵兵に発見されてしまう場合もあるため、トラックや部屋の中へ侵入する前から敵兵の配置を考慮しなければなりません。
また、FC版ではコンティニューの仕様も変更。MSX2版では一部エリア入口に加え、各ビルにあるエレベーター乗り場に移動するたびにチェックポイントが更新されましたが、FC版では階級(他ゲームのレベルアップに該当するシステム)が上がった際にのみ行われます。
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この階級は、各ビルに配置された捕虜を一定数助けるとプレイヤーキャラのライフやアイテム所持数の上限が増えるシステムです。チェックポイントとして初めて階級を上げられるタイミングを考慮すると、MSX2版では序盤でエレベーターまでたどり着けるのに対し、FC版ではジャングル地帯の突破からエレベーターの先にいる捕虜たちの救出までこなす必要があるので、かなり遅めのタイミングとなっています。
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FC版で階級が上がる前にゲームオーバーになった場合、スタート地点であるジャングル地帯からやり直しになるので、ビルに侵入するまでの道のりを繰り返さなければなりません。また、FC版のビル1にはMSX2版では後半から登場する即死判定付きの落とし穴も追加されているので、ゲーム序盤にしては厳しめの仕様です(※本コレクションでは後述の理由により改善)。
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なお、MSX2版はゲームオーバー時にチェックポイント段階までゲームのフラグなどがリセットされますが、FC版では開始地点を戻されるだけで、所持しているアイテムや助けた捕虜数などは引き継げます。
進行度を戻されるが比較的近い地点からやり直せるMSX2版と、進行度を引き継げるが道を進み直さなければいけないFC版、これらは好みの範疇かもしれませんが、筆者個人としては、後述する問題からFC版のチェックポイント仕様は本作と噛み合っていないのではと感じました。
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FC版のビル1以降は、マップ構成やボス戦の内容などに変更があるものの似た流れで進行し、道中でMSX2版と同様、今回のゲームの最終目標である“メタルギア破壊”の方法を知る「ペトロヴィッチ博士」を探すことになります。
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探索していく中、FC版での「ペトロヴィッチ博士」は“ビル5”に捕らえられていると判明しますが、その位置が少々曲者です。ビル5がどこにあるかはゲーム中で(少なくとも筆者が確認した限り)ヒントが無いうえ、実際に位置している場所はジャングル地帯に存在する迷路を突破した先にあります。
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この迷路は、一見ループし続けるマップを特定の手順で4回進むとゴールにたどり着けるギミックとなっていますが、ゲーム序盤では理由なくループするマップが登場。このマップの存在を覚えているプレイヤーは、仕様が似ている本マップが意味あって配置されており、その上4回移動する必要があることに気づかずスルーしてしまうかもしれません。
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なおビル5の内部構造は、MSX2版でペトロヴィッチ博士が捕らえられていたビルと概ね変わらず、メタルギア破壊方法を教える前に“博士から人質となっている娘の救出を頼まれる”流れも同じです。この際、娘が監禁されているビルには“ペトロヴィッチ博士が捕らえられているビルから直接向かうルート”と“迂回して別のビルから向かうルート”が存在します。
両ルートは概ねMSX2版と同様で、前者は近道な代わりに即死判定付きの落とし穴が複数配置された危険地帯を突破する必要があるのに対し、後者は遠回りする代わりに道中が比較的安全です。これらは分かり易い2択ですが、FC版における両ルートでは少々事情が変わってきます。
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FC版における近道ルートでは本バージョン独特のチェックポイントの少なさが問題に。本作はMSX2版・FC版共に落とし穴は近づくまで配置されている場所が分からないため、本トラップが多数配置された近道ルートでは、何度もトライ&エラーを繰り返す必要があり、途中ゲームオーバーになる可能性も十分に考えられます。
しかし、FC版でゲームオーバーになった際は(仮に階級が最大になっていた場合)、チェックポイントの仕様からビル5から離れたジャングル地帯からのスタートに。前述したジャングル地帯の迷路も攻略し直しになるうえ、道中も変化があるわけでも無いので、場合によっては味気ない戻し作業を繰り返すことになってしまいます(※MSX2版はゲームオーバー時に落とし穴があるエリア手前からコンティニュー可能&落とし穴の判定も優しめです)。
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一方、FC版における遠回りルートは本作独自の仕様が壁となる懸念があります。MSX2版では文字通りただ遠回りするだけですが、FC版では遠回りルート途中に迷路が存在。こちらも一定の手順で進む必要がありますが、前述の迷路とは解法も違うので、答えを導き出せなければそもそも通ることができません。
ちなみに無事に娘を助けたあとは、博士からメタルギアの破壊方法を伝えられます。MSX2版では方法さえ知っていれば両名の救出は必要ないのに対し、(筆者が検証したところ)FC版は両名を救出しなければメタルギアの破壊は不可能―つまり、必ず上記救出の手順は踏まなければいけません。
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この仕様については、MSX2版のメタルギア破壊方法が複雑で、初見では実質的に“教わらないと不可能”であったのに対し、FC版では破壊方法がシンプルになっているため、“プレイヤーが適当に試したら偶然破壊できてしまった”というケースを避けるための処置とも考えられます。
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ここまでゲームを進行すれば後はメタルギアの破壊を残すのみ。MSX2版ではレーザー装置の攻撃を避けながら静止したメタルギアを破壊する一方、FC版では「メタルギアのスーパーコンピューター」を破壊する内容となっており、それ以降はMSX2/FC版は概ね同じ流れでエンディングを迎えます。
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また他の細かい違いとして、FC版は現代ゲームで一般的なセーブではなく、パスワードを採用。パスワードにはゲームの進行度が記録されており、これをタイトル画面から入力するとゲームを再開できます。
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しかし、このパスワード表示するには一度ゲームオーバー画面に移行し、「END」を選ぶ必要があるため、初見ではわかりにくいだけでなく、好きなタイミングでゲームをやめられない、いつでもセーブを使えるMSX2版と比べ不便であることは否めません(※本コレクションでは後述の理由により改善)。
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本記事で列挙したもの以外にもFC版独自の仕様はまだまだありますが、最終的な感想として、MSX2版と比べた際の残念な点は無視できない一方、大まかなストーリーの流れは守っており、当時のファミコンゲーム市場全体を思い返すとゲームとしてのクオリティも“まだ遊べるライン”という印象を受けました。
また、本コレクションではMSX2/FC版ともに収録されているため、"遊び比べてみる”という楽しみ方もできます。
ちなみに、ここでお気づきの方もいるかもしれませんが、FC版でメタルギアの姿は出てきません。FC版のサブプログラマーであった上野正博氏は後に、この変更は"ハードウェアの制約”が理由であったと語っているほか、"ジャングル”のマップについても、当時の経営陣が"オリジナルとの差別化を望んでいたため”と明かしています。
ついに日本上陸!隠れた名作『SNAKE'S REVENGE』
FC版『METAL GEAR』は海外市場向けにはNES版が発売され大ヒット。その結果、海外限定でNES版続編『SNAKE'S REVENGE』がリリースされました。
本作は正史として扱われていないものの、ストーリーからシステムまでオリジナル要素を盛り込んだ意欲作であり、かつて小島秀夫監督からは肯定的な評価を受けています。国内からは手を出しにくかった本作ですが、本項ではその序盤をお伝えします。
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まず前作からの大きな変更点としてオープニングムービーが存在。前作では見られなかったメタルギアの姿が映し出され、ゲーム開始前には、 “3年前に破壊したはずのメタルギアらしき兵器の存在を知った主人公ソリッド・スネークが仲間を連れて敵基地へ潜入する”という旨のストーリーが語られ、仲間やスネークのプロフィールが表示されます。
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この時点で本作の気合を感じますが、前作から進化したのはここだけではありません。タイトルからスタートボタンを押すと、スネークと仲間たちがヘリ降下地点から散開するシーンが再生されゲーム開始します。バックにはコナミ矩形波倶楽部による、懐かしくも勇ましい音楽が流れており、味方の照明弾がマップを照らす演出と併せて冒頭からプレイヤーの心を奮い立たせてきます。
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ジャングルから敵基地へ向かう道中では、MSX2版『METAL GEAR』に無かったサーチライトといったギミックが登場し、オリジナルの模倣では収まらない、ステルスゲームとしての進歩も感じられます。また重要な改善点としてチェックポイントが各エリア到着時などに設置されるようになったため、ゲームオーバーからの復帰がスムーズになりました。
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敵基地の門前に到達すると別行動していた仲間から無線連絡がきます。「(スネーク)ポイントAに到着した。作戦を実行する。幸運を。」なんと仲間がわざと門番に見つかり、囮となることでスネークが潜入するスキを作ります。本作はこういった、“単独潜入”が基本となる正史作品ではあまり見られないストーリー展開も魅力です。
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敵基地に潜入後はMSX2版『METAL GEAR』のように、各ドアに対応したカードキーを使いながら先へ進みますが、道中でメタルギアは既に船積みされていると判明。敵基地の下層から港を目指すことになります。下層フロアではゲームが2Dアクションに代わりますが、こちらはジャンプ中にキャラクターを制御できない、同社タイトルで言えば『悪魔城ドラキュラ』のような仕様です。
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下層の最奥部では本作最初のボス戦が待ち構えており、装甲を着た5人組が「誰も我らの攻撃は避けられん」のセリフと共に襲ってきます。ここまで『SNAKE'S REVENGE』の魅力を伝えてきましたが、恐らく本作の欠点になりうるポイントを挙げるとすれば本ボスを含めた難度の高さです。
例えば本ボスは“5人組がプレイヤーキャラに向かって突進する”というシンプルな攻撃方法を取りますが、突進の追尾力が高すぎてセリフに違わず回避は困難を極めます。筆者が見つけた攻略法は、ボスの攻撃開始前にエリア入口の右端へ移動、ボスをギリギリまで引き付けたら左端へ移動、攻撃の追尾が終わった隙に攻撃を仕掛ける…というもの。文章にすると簡単に見えますが、ボスを引き付けるタイミングがシビアで、他の有名なレトロゲーであれば体感、早くとも三ボス目くらいの難しさとなっています。
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なお、本ボスを倒した後はエレベーターから基地の裏口へ向かい、港に停泊している船に潜入、巡回する兵士の目を掻い潜り、積み込まれたメタルギアを探すことになります。
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船内を探索していく中で本作2回目のボス戦が待ち受けますが、こちらも例に漏れず高難度。後述する理由から人によっては詰む可能性もあるボスです。本ボス戦では土のうに身を隠した3人の兵士が登場し、プレイヤーキャラに向かってグレネードを投擲してきます。その爆発はプレイヤーキャラの体力を半分も削る恐ろしいダメージ量となっています。
本ボスの攻略法として、プレイヤー側も相手側へグレネードを投げることが有効な戦法ですが、この段階で持ち込めるグレネードの最大数は15個、そして各兵士の耐久力はグレネード6個分。最後の一人を倒すにはグレネードが2個足りません。
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そこで、プレイヤーはプラスチック爆弾(恐らくクレイモア地雷も有効)を最後の兵士の近くに設置することで不足したダメージを稼ぐ必要があります。しかし、ここで思い出してほしいのは相手のグレネードのダメージ量です。こちらを狙って投擲してくるうえ、爆風もその場にしばらく止まるので、爆弾を設置するために近づくのも、設置した爆弾に巻き込まれないように離れるのにも気を抜けません。
また、船内には回復アイテムが一切配置されていないため、それまでのステージで使い切ってしまった場合は、出来る限りノーミスで道中と本ボスを突破しなければいけません(※ただし、回復アイテムは素手攻撃で兵士を倒せばランダムでドロップします)。
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なお、ボスを撃破した後は船倉に進めるようになりますが、そこに積まれていたのはなんと4体のメタルギア。前作で登場しなかった分を差し引いても3体は余る出血大サービスです。さらに本メタルギアには前作のような弱点は無いので、火薬庫を爆発させ、船ごと沈める必要があります。
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火薬庫を爆発させたあとは船の甲板から仲間のヘリに飛び移り脱出しますが、ここでパイロットから衝撃の事実を知らされます。「おめでとう!!メタルギアは破壊された。しかし、我々はメタルギア2の存在を確認した。ニック(もう一人の仲間)も消息がわからない。“Your Person”と敵基地でコンタクトを取れ。」
プレイヤーはここから別の敵基地へ潜入し、メタルギア2と仲間たちの行方を追うことになります。
序盤とも言える本段階でも『SNAKE'S REVENGE』は満足感が強く、高難度なボス戦も練習と知識を重ねれば突破できるようになっているため、『メタルギア』ファンだけでなく、“最近のゲームは温い”というハードコアゲーマ―にも間違いなくオススメできるゲームです。
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あえて問題点を挙げると、セーブデータの保存形式が依然とパスワード制でゲームを中断しにくい(※本コレクションでは後述の理由により改善)ほか、一度クリアしたステージには後から戻れない仕様となっており、「地雷探知機」のようなアイテムを回収し忘れると、詰んでしまう懸念も否定できません。
しかしそういった細かい欠点を差し引いても、先が気になるストーリーや良質な楽曲も備える本作はプレイする価値があります。
おわりに
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初代は復刻の機会が少なく、続編は国内で日の目を見なかったFC/NES版『METAL GEAR』シリーズ。記事執筆時点でSteamの実績に対応しておらず、「ボーナスコンテンツ」の一環として扱われているのは、両作品とも小島監督が開発に関わっておらず、『メタルギア』サーガではない、その独特な立ち位置をKONAMI公式が配慮した結果とも考えられます。
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しかし、ファミコン版スタッフが「メタルギアは小島さんが作らなきゃダメですよ」と同氏に明かしたことで、最終的に正史であるMSX2『METAL GEAR 2 SOLID SNAKE』の開発に繋がったエピソードも語られており、メタルギアの歴史を語る上での貴重な資料であることは間違ありません。
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また筆者はプレイ後に気づきましたが、本コレクション収録の両作品ではRボタンとLボタンを同時押しすれば、キーコンフィグや中断セーブ/ロードといった機能にアクセスできます。このセーブ/ロード機能はいつでも使えるため、上手く活用すれば"パスワード制による手間”や"FC/NES版『METAL GEAR』のチェックポイントの少なさ”、そして"『SNAKE'S REVENGE』の難度の高さ”などを緩和して楽しめます。
両作品は今回の先行プレイ時点でどうやらキーボード操作にも対応しており、それぞれオリジナル版には無い独自の要素もある作品なので、シリーズファンや高難度なゲームに挑みたい方は是非一度遊んでみて下さい。
『METAL GEAR SOLID: MASTER COLLECTION Vol.1』は、PS5/PS4/Xbox Series X|S/ニンテンドースイッチ/Steam向けに2023年10月24日発売(PS4/Xbox Series X|SはDL専売)。FC/NES版『METAL GEAR』ならびに『SNAKE'S REVENGE』は、『METAL GEAR SOLID: MASTER COLLECTION Vol.1』バンドル購入時に付属する「ボーナスコンテンツ」内に収録されています。
©Konami Digital Entertainment