5月4日にインディーゲームイベント「東京ゲームダンジョン 5」が開催されました。「東京ゲームダンジョン」は開発中の作品でも出展することで、開発者が交流を経てフィードバックを受けたり、逆にこちら側から「どういう作品になるのか」などを伺える、インディーゲーム好きにはたまらないイベントです。
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今回紹介する『Alone A Long』も、開発者・このへさんが現在開発中のタイトル。本作は「使わない物が風化する世界」に一人残った最後の人間が自分の日常を守っていくシミュレーションです。開発中とあってそのすべてを体感できたわけではないのですが、本稿では『Alone A Long』にて筆者が味わえたコンセプトやゲームシステムなどをお届けしていきます。
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◆「使わない物が風化する終末世界」で取捨選択をしながら“自分の日常”を残そう
まずプレイ前にPVを観たところ、『Alone A Long』で描かれるノスタルジックな雰囲気が非常に筆者のツボに刺さります。“1人暮らしの良さが味わえそう”と思いながらブースにお邪魔したのですが……実際にお話を聞きながら遊んでみると『Alone A Long』はその「スローライフをただ過ごす」ゲームではありませんでした。
本作の紹介文に書かれていたのは「ただ日常を過ごす。何でもない日常を維持し続ける。最後の一人となったあなたは、何を残すか。日常を維持するシミュレーションゲーム」という文言……「最後のひとり」というよりはむしろ「日常を維持する」ことに主眼を置いた内容です。
ゲームではぽつんと置かれた一軒屋の中、自分のほかに人間がいない世界で言葉通り“日常を維持”していきます。ただしその構造がやや特殊で、周囲にある「ベッド」や「自販機」、果ては路傍の石にまで時間経過で消費されていくゲージが設置されています。これはプレイヤーが使用することで回復させることが可能なのですが、使わずゲージが尽きてしまうと「風化して消えてしまう」のです。
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消えてしまえば、元には戻りません。「人が使わない家は朽ちるのが早い」という言葉を思い出すと同時に、概念的な世界だとも感じます。「使われない」ということは「存在する意味を喪失してしまう」ということ。世界にひとりだけの“主人公”は家のあらゆるものを使用することによって意味を与える……と筆者は解釈しました。
伺ったところ、本作にはストーリーが用意され、なにを残すかでこの先も変わっていくとのこと。ノスタルジーを呼び起こすタイプのストーリーが展開されるか、それとも終末世界的に向き合う物語が用意されているのか……どちらにせよ“緩やかに崩れていく終末世界を体感できる”ゲームになりそうですね。
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この「日常」は昼夜が巡っていくことも含めて、穏やかな雰囲気です。ゆったりとした世界が味わえますが……それと同時にかなり忙しい! “文化を維持” するためにゲージが減った家具などを使用するため家中を駆け回ります。
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ベッドが無くちゃ生きていけないと、ベッドのゲージを回復させているときに隣のデスクのゲージが少ないことに気づきます。すぐ起きてデスクに向かえば、今度は下の階のダイニングテーブルが消えそう!
プレイした感触では「取捨選択の文化維持」を必ず迫られるゲームという印象。もう、路傍の石とか消えちゃうけど優先順位低い……「自販機は惜しいけど、ベッドを優先したから仕方ない!」と、家の物のゲージが次々にゼロになっていきます。
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開発中ということもあってまだオブジェクトが消える挙動は実装されていませんでしたが、プレイしていくごとにどんどん物悲しい絵面になっていくことでしょう。日常を維持するのって大変だ……。
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現状試遊できる範囲では“日常を守るのみ”でしたが、そのバックボーンにあるもの、根本に存在している概念などは背筋がヒヤリとするほどに不可思議で今後の開発を期待させてくれます。
筆者は終末世界の雰囲気をもった作品が好きですので、『Alone A Long』で、今後どのように“消えていく世界のなかで日常を守る”体験ができるのかと楽しみにさせてくれます。
少なくとも、「終末世界で生きるひとりの人間」というジャンルが好きな方は、継続してチェックしていく価値はあるでしょう。