アニプレックスは、カナダのStudio Cut to Bitsが手がけるダークファンタジーアクションアドベンチャー『Venture to the Vile』をPC(Steam)向けにリリースしました。
本作は「ヴァイル」と呼ばれる凶悪な存在によって侵食された奇妙な街・レイニーブルックを舞台にした探索アクション。主人公は行方不明になった親友を探し出すため、凶悪な怪物と戦い、その力を吸収しながらマップの探索や、さまざまなクエストを行っていきます。
ゲームとしては2D横スクロールアクションに3Dレイヤーの奥行きを加えた「2.5Dメトロイドヴァニア」であることが特徴。マップ内には仕掛けを解かないと通れない道や、時間や天気によって影響するアイテムやサブクエストなども存在しています。

本記事では『Venture to the Vile』のプレイレポートをお届け。昨年実施した本作のプロデューサーへのインタビューもあわせてお楽しみください。
仮面の人々が暮らす不思議な街の物語
本作の舞台となる街・レイニーブルックは、すべての人物が“何らかの動物の仮面”を被って生活している不思議な街。物語は主人公の少年時代から始まり、彼のお祝いの日として母親から新しい鹿の仮面をプレゼントされます。角がない仮面から角の生えた仮面になることで、成長を祝っているのですね。
その後は、主人公の親友である少女・エラと一緒に森に仕掛けられた罠を確認するアルバイトにいくことに。街中には犬やネズミ、カラスなどさまざまな仮面のキャラクターが暮らしているのですが、なんともコミカルで、どこか不気味な雰囲気を感じさせます。





エラとの森の冒険ではチュートリアルとしてジャンプや調査、攻撃といった基本操作のほか、本作の特徴である「奥行きのある移動」を学びます。色々な冒険と共に少年時代はあっという間に過ぎ、2人は立派な若者に成長していきます。しかし、時とともに「恐るべき何か」が育ち、この地を脅かしているようです。




ある日エラと逸れてしまった主人公は、迷い込んだ洞窟で怪物に襲われてしまいます。倒れた主人公を救ったのはマッドサイエンティストのカラス博士。現在「ヴァイル」と呼ばれる脅威が街を侵食していること、主人公の生還は奇跡的で恐らくエラは助かっていないことなど、博士からは絶望的な情報を告げられます。
しかし、生還した主人公は怪物に傷付けられた腕が「凶悪な爪」に変化する力を得ていました。ヴァイルの力を吸収する能力に興味を持った博士は、主人公にヴァイルの調査を依頼します。エラの生存を信じている主人公は、怪物の力で怪物と戦いながら、彼女を探し出す冒険に出ることになるのです。



こうして危機が迫るレイニーブルックの町を舞台にしたストーリーが始まります。導入は非常に丁寧で、ストーリーを楽しみながら基礎を学ぶことができます。



手強い怪物の戦い方を見極めろ!
主人公は変異した巨大な爪を使用して攻撃します。ヴァイルとの戦闘では爪で斬りかかるほか、敵の攻撃に合わせてガードすることで敵にダメージを与えることができます。バックステップもできるので、ガードを回避を駆使しながらなるべく攻撃を受けないように戦うことが重要です。
ゲーム内で重要なのが回復アイテム「トニック」です。トニックを飲むことで体力をある程度回復できるのですが、飲むアクションが完了しなければ効果を発揮できません。飲んでいる最中は他の行動も取れないので、戦闘中は敵から距離を取って回復しましょう。



消費したトニックは、マップ内にあるテントで休憩することで補充可能です。休憩すればセーブもできますが、道中で倒したヴァイルも復活してしまうので注意しましょう。戦闘で倒されてしまった場合は最後に休憩したテントから再開するので、こまめにセーブすることも大切です。
戦闘では敵の攻撃パターンを学ぶことが必要です。特にボスとの戦いでは変化するパターンを見極めなければ勝つことはできません。ボス戦前にはほぼ確実にテントがあるので、何度倒されても挑み、敵の行動を確実に学んでいきましょう。





ボスを倒せば主人公はヴァイルの能力を吸収し、二段ジャンプや空中ダッシュなどの能力を使えるようになります。また、ヴァイルを倒した素材で肉体を強化したり、街の施設でトニックの所持数を増やしたり、最大体力を増やしたりも可能です。






とても丁寧なメトロイドヴァニア作品

ヴァイルの侵食に脅かされるレイニーブルックの街は、ゲーム序盤ではほとんどの場所が封鎖されています。ストーリーが進むことで新しい道が開けたり、閉まっていた店がオープンしたりと、さまざまな変化が起こってゲーム内でやれることは増えていきます。
また、マップ内には高い足場や壊せる壁などのギミックもあり、主人公が新たなアビリティを身につけることで新しいルートが拡がっていきます。このあたりは基本に忠実なメトロイドヴァニアなのですが、本作は「今は能力が足りなくてまだ行けない場所」の表現も優秀です。



本作最大の特徴ともいえる奥行きシステムは、例えば通路や橋などの特定のポイントで移動できます。家の中に入り、2階のベランダから外に出て、手すりをつたって塞がれていた部屋に入る、といった立体的・直感的な動きが可能です。奥地にいる敵の行動が見えたり、オブジェクトの変化を確認できたりと前後のマップもリンクしています。





街の住民たちも個性豊かで、それぞれが悩みを抱えて生活しています。彼らからのクエストをクリアすることで展開する物語も印象的です。また、ゲーム内で発見するジャーナルやメモ、コレクタブルアイテムも豊富で、マップ内をくまなく探索したくなります。
昼夜によって敵やギミックが変化するなど、探索中は同じマップであってもさまざまな姿を見せてくれます。エリアのショートカットなどもあり、とにかく探索が楽しくなるような、遊びやすい丁寧なゲームデザインを目指していることも感じられます。




『Venture to the Vile』は、強化されていくアビリティでマップを拡げていく楽しさ、隠されたルートやアイテムを見つけ出す楽しさなどを感じられる、メトロイドヴァニアとしてとても堅実な作りです。
奥行きのあるマップは「あの奥に何かあるな」というギミックやオブジェクトへの道を見つけ出す探索の楽しさを作り出しています。プレイして何よりも魅力に感じるのは、とても丁寧に作られた世界観や雰囲気です。そのダークな世界観を支えるビジュアルやBGMも印象的で、ストーリーにも没入できます。



激しい敵の攻撃やダメージ地形など戦闘はやや難しめで、慣れるまでは次のテントを見つけるまで何度もやられてしまうことも。ただし、しっかりと探索したり、戦闘で素材を稼いでいくことで主人公のアップグレードもできるので、地道にプレイして行くことでボス戦でも乗り越えていけると思います。
奇妙でダークな雰囲気の世界を堪能できる堅実なメトロイドヴァニア作品!手強い戦闘や探索がしっかり血肉になるゲームデザインも秀逸スパね!