2024年6月22日、ベルサール秋葉原にてインディーゲームイベント「TOKYO SANDBOX 2024」が開催されました。
本記事では、2000年代のインターネットを舞台にしたアドベンチャーゲーム『Terranova(テラノヴァ)』の試遊レポートと開発者へのインタビューをお届けします。
すべてが懐かしい2000年代のネットにタイムスリップ
本作は、BL好き女子が集うコミュニティを舞台としたテキストアドベンチャーゲームです。プレイヤーはファンタジーのロールプレイコミュニティ……日本で言うところのなりきり掲示板や合作をするサイトである「テラノヴァ」に属する女性の視点から、インターネットでの交流を通じた物語を楽しみます。
本作で描かれるのは、TwitterなどのSNSが台頭する前の2000年代のインターネット。いわゆるWeb 1.0と呼ばれる、現在ほど双方向での交流が発達していない頃のものです。
本作のゲームプレイは、仮想OSを操作して本当に主人公になったかのように楽しめるのが特徴。そのOSのモチーフはWindows XPであるほか、主人公が頻繁に書き込むのはLimeJournalと呼ばれるブログと、1対1でクローズドに会話するチャットサービス。どれも実在のサービスを思わせるもので、古くからインターネットを楽しんでいる人にとってはとても懐かしく感じられるでしょう。
仮想OS上で展開されるという作りであるため、地の文はなく、すべての物語がチャットの会話やブログの文章で描かれます。なりきりコミュニティの設定や物語はかなり細かく作り込まれており、エネルギーが感じられました。ブログは顔文字多用などオタクっぽさを隠さない文章が巧みであったり、日本在住のキャラは「orz」など日本特有のネットスラングを使うなど、キャラごとの個性もしっかり描かれています。
特に感動を覚えたのは、なりきりチャットでの会話の一文。それぞれが創作したキャラになりきって話すというのが基本ルールですが、時折なりきりをやめて普段の自分として会話しなければならないことも。そんなときに「なりきりやめて会話するときは()つけてね!」などのルールを決めるわけですが、この描写が非常にリアルで感動を覚えました。
筆者が体験したのは物語の序盤でしたが、さらに進めば摂食障害、ガスライティング、同性愛嫌悪、うつなどシリアスなテーマも描かれる模様。プレイした範囲でもやや苦手なタイプの子と接しなければいけない場面など少し暗いところがあります。賑やかに見えながらもシリアスさも潜む2000年代のインターネットをどのように描くか、とても興味を惹かれました。
なお本作は2022年に英語版を発売しており、現状はデモ版のみ日本語に対応しています。まずは無料で遊べるデモ版を触ってみてはいかがでしょうか。
製品版でも日本語を実現したい!
ここからは、開発者のひとりであるMatt Knightさんにお話をうかがいます。
――本作の舞台として2000年代を選ばれたのはなにか理由があるのでしょうか。
Matt Knight氏(以下、Matt) 2000年代は我々開発チームがちょうど高校生であった頃で、とても記憶に残っています。当時の雰囲気や楽しかったことの再現を目指して開発しました。今回は会場に来られなかったのですが、パートナーでもうひとりの開発者であるCJ Knightがこうしたコミュニティへの思い出が深いこともあり、自身の経験を生かした物語が描けるのもひとつの理由となりました。
――日本在住のキャラクターが日本独自のスラングを用いていることに感動を覚えました。こちらは英語版でも同様の表現なのでしょうか。
Mattはい、英語版でも日本のスラングを使っています。海外在住だけど日本の文化に精通していて、もはや自分のことを日本人だと思い込んでいるレベルでマニアックな友達がいるので(笑)。そうした友達がいることは、本作のテキストを描く上で重要なことのひとつでした。
――日本語の翻訳品質が高くて驚いたのですが、製品版の日本語対応はいつごろを目指していますか。
Mattこれは正直なところ未定です。プロの翻訳者を見つけて日本語に対応させたいのですが、製品版は10時間ほどのボリュームがあるため、まだそれをすべて訳してもらえるだけの報酬が用意できないというのが理由です。
――なるほど……!いつか製品版でも実現できるよう期待しています。ありがとうございました。
『Terranova』は、PC(Steam)向けに配信中です。