オリンピック2024パリ大会も佳境を迎え、いよいよ新競技として熱い注目を集める「ブレイキン」が日本時間今夜23:00からスタートします。他のどの競技とも全く違う異色の採用だけあって、どんな雰囲気の試合になるのか今から楽しみですね。
日本からは男女2人ずつが出場、それぞれ国際大会優勝の実績を持ち、メダルを狙える実力者が揃いました。
ブレイキンを題材にしたゲームは黎明期から存在し、国際大会「Red Bull BC One」の実名選手が登場する作品もありました。現在の機種で遊べる最新の作品は、手描き調のアニメーションが特徴的な『Floor Kids』。本格的なブレイクビーツの音楽と多彩なコンボでダンスバトルの雰囲気を上手くゲームで再現しています。まもなく始まる大一番を前に、同作品を参照しながらブレイキンの見所紹介しましょう!
ブレイキンを含めたヒップホップなどのストリートカルチャーは1970年代、ニューヨークの北に位置するブロンクス地区から始まりました。移民や黒人が集まるブロンクス地区は当時60%にも上る失業率に達していて、ギャング団による抗争で治安は最悪の一言では全く足りないほどの荒れ具合。
貧困と犯罪に苦しむ人々が工夫を持ち寄って楽しみを見いだしたのが、近場の空き地で行う「ブロック・パーティ」でした。ジャマイカのレゲエ文化から持ってきた野外パーティのスタイル、すなわち大きなスピーカーとDJのターンテーブル、場を盛り上げるMCがあって、流行のブラックミュージックをかけるクラブ的なイベントです。
ここから生まれたのが曲の間奏部分だけを抜き出して繋げていく「ブレイクビーツ」です。ブレイクビーツで踊るから「ブレイキン」であり、そのダンサーを「B-Boy」「B-Girl」、両方合わせてブレイカーと呼びました。
これに目をつけたのが、ギャング団のボスでもあったDJアフリカ・バンバータです。彼は激化する抗争を収めるのに文化の力、則ちブレイキンのダンスバトルを提唱します。こうして始まったダンススタイルは「B系」のファッションにも派生し、文字通りやるかやられるかの戦いが、ブレイキンによってストリートカルチャーの発信源へと転換していったのです。(ここに日本のローランド社製リズムマシン「TR-808」が大きく寄与したのも忘れずに!)
日本でブレイキンが始まったのは80年代。風見しんご氏がステージに取り入れたのをきっかけにして、第一次ブレイクダンスブームが巻き起こりました。
今大会に向けてJDSF(日本ダンススポーツ連盟)ブレイキン応援団を務めている、ナインティンナインの岡村隆史氏は、中学生時代に「KID」として大阪トップのダンスクルー「ANGEL DUST BREAKERS」に所属していて、名実ともに関西のレジェンドB-Boyです。ゲームにおいては1988年を舞台にした『龍が如く0 誓いの場所』で真島吾朗のバトルスタイルとしても登場。当時の大阪の流行が反映されていました。
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ブレイキンの技は大きく4つに分類され、ブレイカーそれぞれの得意とするカテゴリが違ってきます。お気に入りの選手を見つけたら、まずは印象的な技の種類を覚えましょう。
トップロック
基本の立った状態で、手足を大きく使って軽快に踊ります。最初の自己アピールとしてラウンドの開始に多く使われます。
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インディステップ
足を前に蹴った後、足を前にクロスしながら手を横に大きく広げるステップ。初心者もここから入るのですが、8ビートが効いていないと不格好になってしまうので、まずはリズムのメリハリをしっかりつけるとこから。
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サルサロック
インディとは逆に足を大きく横に踏み出します。この2つの基本ステップは試合でも要所で多用され、上手い人ほど洗練されたムーブに感心させられます。
フットワーク(ダウンロック)
手を床につけた状態で、細かくステップやツイストを繰り出してテクニックを見せる技です。リズムに合わせやすいので、アドリブによる変化にも注目です。
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六歩(SIX STEP)
円周を6分割した位置に足を置いていくフットワークのベースになる技。歩数によって十二歩、三歩などの派生があります。
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キックアウト(CC)
全身を捻りつつ片足を揚げるスタイリッシュな技。対戦相手に向かったままなので、空いた手でジェスチャーも交えた挑発もできます。
パワームーブ
回転状態を作り出すダイナミックな大技。ヘッドスピンやウィンドミルもこのカテゴリです。この技を出すには服装が大事で、ブレイカーは回転で引っかからない素材の服と帽子がマストアイテムです。
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ウィンドミル
開脚した状態で横に転がりつつその場で回転する、ブレイクダンスを象徴する技の一つ。
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ヘッドスピン
頭頂でバランスを取って回転するパワームーブの中でも特に難しい技。足を漕ぐことでさらなる加速も可能で、連続の世界記録は大野愛地氏による118回転です。
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ナインティ(1990)
片手倒立のまま回転する高難度の技。両手を重ねるとトゥーサウザンド(2000)に派生します。
フリーズ
逆立ち状態でここぞというタイミングに使う決めポーズ。ラウンドの締めにピタリと止められれば観客も大いに盛り上がります。
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チェア
椅子に座っている人から着想を得たポーズなので、足を組んでいるのがポイント。片手片足で支えても良いですし、両手で持ち上げる応用もあります。
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ベイビー
片膝を同じ側の肘につけた状態で行う倒立。カエル倒立の応用で以外に覚えやすいので、最初の持ち技にするのにうってつけです。
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ダンスバトルは1on1からダブルス、チーム戦など様々なスタイルがあり、DJとMCが仕切るラウンドで交互にダンスを披露。複数のジャッジが両者を見比べ、どちらがよりインプレッシブなダンスをしていたかで勝敗を決めます。
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国際大会で主に使う評価は「技術性(Technical Elements)」「多様性(Vocabulary)」「完成度(Execution)」「独創性Originality」「音楽性(Musicality)」の5項目。大技をどんどん繰り出せばいいわけではなく、連戦を続けていく中で持ち技が尽きないことも重要です。
最も大事なのは音楽に乗せて自分らしさを貫くこと。ブレイキンのベースは自己表現にあり、ベテランブレイカーが見せる独自のスタイルは多様性、完成度、独創性で高い評価を獲得します。
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音楽に合わせて踊るのはもちろん大前提ですが、DJが競技中何をかけるか、どの速さのテンポにするかは誰も知りません。ある程度の準備はありますが、会場の様子に応じてDJはその場でその都度決めていきます。
どんな音ネタが出てくるか、スクラッチのタイミングに合わせられるか、変速ビートを素早く掴めるか、即興で合う技を出せるか、決めきるのは簡単なようでいてかなり難しいのです。これを実況では「音ハメ」と呼び、音楽性の項目で評価する要素です。
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待機中のブレイカーもただ休んでいるだけではありません。これは互いのプライドを賭けた戦いなので、相手のミスも容赦なく煽るのがブレイキンです。スピンの回転不足やリズム外れがあったときに、ジェスチャーで指摘することでジャッジにも影響を及ぼします。例えば、床を叩く「クラッシュ」は技の失敗で完成度が低いことをアピールします。
また、相手の出した技により高い技術で被せる「技返し」で、自分のテクニックが明確に上手だと見せつけることもあります。相手の技をしっかり見て、自分の技を見せつける。これらのやりとりは「バトルアティテュード」として評価に含まれ、対戦競技であるブレイキンならではの面白いポイントです。
以上を踏まえた上で、5月に上海で行われた予選大会を見てみましょう。試合の流れやいくつかの技名は分かるでしょうか。何が起こっているのかが読み解けると観戦もより楽しくなるはず。オリンピック初代チャンピオンの栄光を手にするのは一体誰か、コンコルド広場が沸き立つ2日間をお見逃しなく!