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2025年の正式リリースに向け、『Path of Exile 2』のアーリーアクセス版がついに幕を開けました。50時間という決して短くない時間をこの世界に費やした筆者。その胸に去来する感情は、ただ一言「圧倒的」でした。
本稿では、先行プレイ期間に感じた魅力と不満点を紹介します。なお、今回プレイしたバージョンはアーリーアクセス版かつ先行プレイ用の環境であることをご了承ください。
「アーリーアクセス」とは思えない圧倒的なボリューム
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『ディアブロ II』の暗黒に染まるゴシックホラーの雰囲気と、『ELDEN RING』などに代表されるソウルライクなゲームプレイ、そして独自のビルドシステムの奥深さを融合させた『Path of Exile 2』は、「アクションRPG版ソウルライク」と呼べるほどの重厚かつ壮大な体験を提供してくれます。
筆者は約50時間ほどこのアーリーアクセス版をプレイしましたが、キャンペーンをクリアするのに要したのは30時間ほどでした。これだけ時間を投じても『Path of Exile 2』の氷山の一角に触れただけに過ぎません。まるで広大な海に浮かぶ小舟のように、筆者は未だにその全貌を捉えきれていないのです。
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簡単に言うと、「エンドゲームの一部まで」しか触れていません……アーリーアクセス版にはエンドゲームが丸ごと実装されていますが、50時間のプレイを重ねてやっと本番!というところで、先行プレイ期間が終了しました。
『Path of Exile 2』のキャンペーンは全6章で構成されていますが、アーリーアクセス版では3章までしか実装されていません。そして、その3章をクリアするまでにかかった時間が「30時間ほど」ということ。ゲームディレクターのJonathan Rogers氏は「初心者だと25時間ほどかかる」と語っていたのですが、本作のマップは非常に広大で、隅から隅まで探索していると30時間はかかるわけです。
『Path of Exile 2』はマウント可能な騎乗生物が登場し、マップの広さはこのマウントを前提としたボリューム。探索にもかなりの時間がかかるのですが、なんとこの要素は4章から解禁されるため、アーリーアクセス版では使えないというオチが待っていました。
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特に3章からのマップの拡大ぶりは凄まじく、探索中に死亡してしまうと敵がすべて復活してしまうこともあって、プレイにはかなりの時間がかかります。ソウルライク作品に似ていますが、マップ内で重要なアイテムやボスは一部の部分だけ。残りのエリアに公開イベントなどはないので「移動」と「戦闘」が続くだけの空虚な時間もありました。今後のアップデートで、さらに探索の喜びを高めるような多様なイベントや、インタラクティブな要素が追加されることを期待したいところです。
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そしてキャンペーンを30時間かけてクリアした後に筆者を迎えたくれたのは、ハクスラゲー待望のエンドゲームコンテンツ! というわけではなくて、1章~3章の高難易度版です。アーリーアクセス版では3章終了時点のステータスでエンドゲームをプレイできないので、高難易度版である「残酷」を繰り返しプレイして、エンドゲームに挑めるまで鍛える方式になっています。エンドゲームの目標レベルは65なのですが、『PoE 2』のレベリングはとても時間がかかるため、到達するまでのゲームプレイはなかなか険しいのです。 筆者がレベル65に届いたのは、結局「残酷」版の2章ほぼ終了時点でした。
脳汁ドバドバの緊張感あふれる戦闘が魅力
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時間で考えるとエンドゲームまでの道のりは簡単なものではありませんでしたが、プレイしている間はそんなことが気にならないくらい、楽しい冒険が続きました。特にボス戦はソウルライクのようで、緊張感と達成感が好きな方にはたまらないでしょう。
『Path of Exile 2』は、決して簡単なゲームではありません。すべてのボス戦は高い戦略性と正確なプレイヤースキルを要求します。難易度調整オプションは存在せず、油断は即座に死を招き、プレイヤーを絶望の淵へと突き落とします。筆者は「あと少しで倒せる……」という場面で起きるたった1つのミスで、何度も敗北を喫してきました。
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だからこそ、強敵を打ち倒した時の爽快感と達成感は筆舌に尽くしがたいものがあります。『DARK SOULS』や『ELDEN RING』で味わったあの緊張感とカタルシスをアクションRPGとして遊ぶ時間は、『Path of Exile 2』の至福のひとときと言えるでしょう。
ボス戦直前にはチェックポイントが用意されているため、リトライのストレスも最小限に抑えられています。幾度となく挑戦し、勝利を掴み取る喜びを存分に味わいましょう。
圧倒的なパッシブスキルツリーを紡いで自分だけのビルドを掴め!
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『Path of Exile 2』の戦闘システムは、アクションRPGというジャンルの中でも高い完成度を誇ります。豊富なスキルと自由度の高いビルドシステムは、まさにプレイヤーの想像力を解き放つ遊び場。『Path of Exile 2』の目玉は、合計で1,500個を超えるノードが輝くパッシブスキルツリーです。壮大なタペストリーのようなスキルツリーを前にして「これから何ができるのだろう」と興奮する方もいれば、「何をすればいいか分からない……」と絶望する方もきっといるでしょう。
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筆者は魔法使いのクラスである「ソーサラー」をメインにプレイしましたが、スキルが解禁されていくにつれて、コンボのように強力な攻撃の組み合わせがどんどん紡がれていきます。その様は、まさに魔法使い。
たとえば最初は「7つの弾を飛ばして敵を凍らせる」だけだった攻撃が、サポートスキルを解禁することで「敵を貫通する攻撃」となり、広範囲の敵をまとめて凍らせられるようになります。『PoE2』は雑魚敵が数の暴力で攻めてくるので、殲滅力は大切です。
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そして敵を凍らせるスキルの次は、クリティカルヒット率が上がるサポートスキルも解禁されます。さらに2章に入ったあとには「ソーサラー」の上位クラスとなる「アセンダンシー」クラスの“ストームウィーバー”または“クロノマンサー”を選んで解禁可能。筆者が選んだ“ストームウィーバー”では、クリティカルヒットが発生した地点に範囲攻撃が自動発動するように。もちろん、この攻撃も敵を凍らせてくれます。
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敵が凍ったら、一気に大量のスキルを叩き込むチャンス。 「最後に凍結した敵を粉砕する大ダメージを与えるスキル」に、さらに「トドメを刺したら爆発が発生して近隣の敵を巻き込むサポートスキル」も組み合わせれば、殲滅力は大幅アップします。
3章で大化けするソーサラー
3章に入ると、サイドクエストの報酬として「特定の行動をトリガーにして、セットしてあるスキルが自動で発動する」という効果が登場します。ここで筆者が選んだのは“コメット”というスキル。巨大な氷塊をぶつけ絶大な威力を出してくれる代わりに、発動まで溜めモーションがあるので隙も多いのですが、このスキルが自動トリガーによってノーモーションで発動できるようになりました。
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コメットも凍結能力を持っているため、「ノーモーションで発動するコメット」で敵を凍らせたあとに「自ら詠唱するコメット」で安全に追撃するというスタイルを確立できます。この自己詠唱のコメットもサポートスキルを組み合わせて大幅強化していて、一度に最大で7発も同時発動できるようにカスタマイズ済。ただでさえ強力なコメットが勢いを増し、筆者の瞬間火力は爆発的に上昇しました。これらのコンボを解禁できた頃の3章はどのボスも非常に手強いため、その高火力なスキルコンボ 回しは筆者を大いに助けてくれました。
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「スキル」「サポートスキル「パッシブスキル」を組み合わせるビルドの可能性は無限大であり、まるで錬金術師のような気分。ハクスラジャンルを好むプレイヤーの戦略性と創造性が試されます。最適なビルドを模索するプロセスも、ハクスラアクションならではの魅力と言えるでしょう。
ユニーク装備のクセが強くて面白い
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ハクスラで一番アガる瞬間は、ユニークドロップが発生した時。異論は認めません。今回の先行プレイ期間を通して、筆者は合計で4つのユニークアイテムがドロップしました。 そのうち1つは死亡した瞬間にドロップしていたので、虚空へと消え去りましたが……。エンドゲーム到達前にこれだけドロップしたので、待望の“エンドゲーム暮らし”が始まればより多くのユニークに会えるかも! と期待が高まります。
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今回は「クロスボウ」のユニーク武器”霧の囁き”をご紹介します。 こちらの特徴は全ての通常攻撃スキルが必ず跳弾して、最大2体追加で攻撃できる点。しかも全ての攻撃に凍結効果が付与されるので、連発しているだけで敵がどんどん凍結し、近寄ることを許さないまま安全に殲滅できてしまいます。
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デフォルトでこの殲滅力なうえに、通常攻撃スキルのサポートスキルを取り付けると火力は大幅アップ。 試しに「マーセナリー」に持たせたところ、通常のクロスボウとは桁違いの処理能力でサクサクっと1章をクリアしてしまいました。
ただし、この武器は装備レベル制限がないため「素の火力」は非常に頼りにならず、「ソーサラー」の進行度だと凍結能力は高いものの火力がないので、主武器とするには厳しいレベルでした。 アイテム詳細欄にわざわざ“WIP(開発中)”と書いてあったので、装備レベルがないことも先行プレイ環境がゆえだったりするのかもしれません。でもこのネタ要素がユニーク装備らしくていいんです。
コントローラー操作が快適すぎる!
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アクションを楽しむうえで注目したいのが、ゲームの操作方法。本作は「マウスでのクリック操作」「WASD操作」、そして「コントローラー操作」の3つのタイプが選べます。筆者は一通り試しましたが、最も操作性に優れていたのは「コントローラー」でした。『PoE2』は回復アイテムのフラスコをボタン2つで操作できるようになったので、コントローラーでの操作性が抜群に優れています。
コントローラーだと、「キーボードとコントローラー間での操作切り替え」のために一度キャラクター選択画面に戻る必要があったり、カメラのズーム調整ができなかったりと、欠点もあります。それでも、コントローラー前提で制作されたかのような「非常に洗練された操作性の魅力」が上回るように感じました。
視覚的にも盛り上げるビジュアル
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視覚的な美しさも、本作の魅力を語る上で欠かせない要素です。ダークで陰鬱なテーマ性と『ディアブロ II』の影響を感じさせるアートスタイルは秀逸。スキルエフェクトやボスデザインの細部に至るまでのこだわりは、楽しいアクションやボス戦を視覚的にも盛り上げてくれます。
陰影を巧みに利用した演出も、本作のダークな世界観をより深くより鮮明に描き出しています。 だからこそコントローラーでもカメラのズーム調整はしたかったという口惜しさも残ります。
「日本語消滅バグ」に遭遇
今回プレイしたバージョンではいくつかのバグやクラッシュが発生しましたが、正式リリースまでに改善されることを切に願います。実はレビュー版提供直後はアーリーアクセス版よりも前の段階であるアルファ版。このバージョンでは、2章で一緒に戦ってくれる重要な女性キャラが、顔アイコンは筆者にとってどストライクなのにキャラクターモデルは髪しか表示されないという透明人間となっていました。
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ところが、高難易度版で2章に辿り着く頃にはファイルサイズ約14GBのアーリーアクセス版アップデートが配信されており、謎の女性はやっぱり筆者の好みどストライクのビジュアルと判明しました。 このように、重大なバグは早い段階で潰してくれます。
ただし、アーリーアクセス版にアップデートパッチが配信されたところ、それまで日本語で表示されていた部分の一部が英語に戻ってしまうなど、日本人プレイヤーとしてはちょっと困る部分もありました。今後、早急な対応を期待したいところです。
50体以上の個性豊かなボスたち、400種類を超える異形のモンスターたち、そして1,500以上ものパッシブスキルが織りなす曼荼羅のようなタペストリーは、プレイヤーを無限の可能性へと誘います。アーリーアクセスの先行プレイ版で体験できたのはその広大な世界のほんの一部、まだまだ序章に過ぎません。
アーリーアクセス版は30ドルで販売され、正式版は基本無料プレイとなります。アーリーアクセス版には3つの章、6つのクラス(それぞれ2つのアセンダンシークラスが用意)、そして50体以上のボスが収録されています。正式版では既存の3章に加えて6章が正式に実装され、さらに壮大で深みのあるストーリーが展開される予定です。本作の正式リリースが待ち遠しくてなりません。暗黒の世界に希望の光が灯るその日まで、ベータ版で深淵なる世界を堪能し、来るべき日に備えましょう。
『Path of Exile 2』は、PS5/Xbox Series X|S/PC(Steam)を対象にアーリーアクセス版を配信中です。