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あらためて状況を簡単におさらいすると、GPGの新作『Wildman』が発表されたのが今年1月15日。RPGとRTSをミックスした作品ということで、なんとなく『AOEO』繋がりのRobot Entertainment『Orcs Must Die!』シリーズを連想した方もいたかもしれません。最大のポイントは、資金集めを流行のクラウドファンディングサービスKickstarterで実施しようとしたこと。当時、31日で110万ドル(約1億円)を目標としていました。デジタル版入手には20ドルの投資からであったため、概算で少なくとも5万5,000人程度の参画を計画していたようです。この数値の多寡について、議論はひとまず避けます。
続いて、GPGの大規模レイオフが発表されたのがわずか4日後の1月19日。Taylor氏以外に数名を残すところまでスリムになったと報じられました。どんな判断だったのか?についてゲーマー側に疑問が残る他方で、このまま出資を募るかどうかを迷っていた様子でした。27日残した時点での獲得金額は18万ドル、等速直線運動でなら目標金額に達しなくもなかったでしょう。
やや間をおいて一昨日2月11日、『Wildman』のKickstarterがキャンセルされました。理由はGPG社の経営に集中するためとしています。資金も人もない状態での経営となるとなかなか混迷を極めそうなイメージがありますがそれはさておき、Kickstarterで集められたのは9,300名からの50万4,120ドル。目標へは59万ドルほど足りませんでした。これについてTaylor氏は「あまりに多くの人が、このゲームに期待するからではなく、私達を哀れんで投資してくれたという事実が本当につらい。」「アイデアを好んだということを支援の動機にしてほしいし、そうでないと正しいプロセスとはいえない。」等と述べています。なるほどやはりゲーム作りと組織運営は一筋縄ではいきません。

そして本日、Taylor氏による冒頭の発言です。続けて「これは数字あそびでしかない。」「このビジネスは本当に、本当につらい。1日12時間・週7日・そして数十年の間ゲームを研究したりするのでなければ、宝くじを売るのと同じになる。」「今からハリウッドに行って映画を作りたいというようなものだ。ただしライバルはジェームズ・キャメロン。」と付け加えました。さらに、1990年代のデベロッパーはパブリッシャーに殴りこみをかけることもできたし、もしそれで獲得した予算を消し飛ばしてもさしたる問題ではなかったのに、今はそうではなくなってしまった、とも述べています。
「もう廃業寸前だ。私は業務は続けているし、同業者なら誰でも知っている。だが彼らは助けてくれなかった。ようは1000万単位で売れる大ヒット作があるかどうか、なんだ。」とほぼ十割悲鳴のような言葉とともに、Taylor氏が独立したデベロッパーを救う別の方法を模索しているとし、情報元は締めくくられています。
また厄介な話ですが、頭を冷やして考えるとTaylor氏の見通しの甘さやGPG運営の問題だと片付けるのはいささか早計です。まず、Kickstarterをはじめとするクラウドファンディングサービスの問題点について。すでにKickstarter上でのいくつかのプロジェクトが破綻もしくは崩壊間際になっているとゲームファンならずとも小耳に挟んだことがあるでしょう。
直接金融の究極形態と言えなくもない同サービスですが、つきつめると資金獲得手段としては審査も信用の概念もない、いわばマスなユーザーのイメージ一つに左右される、きわめて不安定なものと判断せざるをえません。クラウドファンディング自体はTaylor氏が語ったように終焉を迎えるというより、金融業の今後を語る上で重要な存在になることには疑いの余地はないものの、なにゆえ(人によっては旧態依然に映るかもしれない)銀行業や株式市場が今なお不可欠な存在であるのかは再考の余地があります。
さらにTaylor氏の発言を泣き言と断じるのも不適切です。果たしてそれが健全であるかはさておき資金面で比較的自由闊達であれた時代があったのに対し、現在ではよほどの実績がない限り、クリエイターが1人で「俺がゲームを作るからカネとヒトとモノをよこせ」とパブリッシャーに押しかけたところで門前払いにあうでしょう。伝説的(に無茶)な過程を経て製作されたゲームの事例は枚挙に暇がありませんし、最近なら『風ノ旅ビト』の話題も記憶に新しいところです。Taylor氏に支払われうる「信用」の額がいくらになるべきかという打算はともかく、そこそこの実績のあるゲームデザイナーが資金集めで頓挫してしまうという事実は、現在のゲーム業界とゲーム製作の在り方そのものが問われているように思えてなりません。
今後のTaylor氏ならびにGPGの去就、ならびに50万ドルに達した支持者の想いの行方、さらにはなかば終わったコンテンツ呼ばわりされたKickstarterの今後に注目です。(ソース: VG247)【関連記事】Diablo風のゾンビサバイバルRPG『Roam』のKickstarterが海外にてスタート
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