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ネット中立性(network neutrality)は、国や立場によって捉え方が異なりますが、基本的にはすべてのユーザーが公平かつオープンにインターネットのサービスを受けることを目指すというコンセプトです。
このネット中立性、欧米では活発に議論が交わされています。2014年4月には欧州議会が規制案を採択。アメリカでは現在進行形で新たな規則が議論されており、今年2月に入ってから、その新たな規則の一部が明らかになりました。オバマ政権が推し進めている政策のひとつでもあります。
■ネット中立性がゲームに与える影響
現段階では仮定の話ですが、アメリカのネット中立性の規則が施行されると、インターネットプロバイダーが独自に制限していたダウンロード版ゲームなどの大容量のデータのダウンロード速度制限が解放され、これまで以上に速い速度でダウンロードできるようになる可能性があります。
また、速度制限による負荷軽減をできなくなった分、インターネットプロバイダーが追加で設備投資を行い、それにより全体的にネットの流れがスムーズになることも考えられます。
■ネット中立性が抱える問題と課題
インターネットプロバイダーの設備増強によりトラフィックがスムーズになる可能性を先に述べましたが、これは裏を返せば設備投資が追い付かないプロバイダーの場合は、さらに負荷が増える恐れもはらんでいます。
設備を増強できなかったプロバイダーにとって、高い負荷がかかる大容量のサービスであっても、すべてのトラフィックを平等に扱うという規則により、制限できなくなってしまう可能性もあります。つまり、これまではサービスごとにダウンロード速度を制限することで負荷を軽減していましたが、この制限ができなくなることにより、大容量のデータ通信を行うサービスが、他のサービスの速度にまで影響を与える可能性が生まれるということです。
ストリーミングによるクラウドゲームや4K動画配信サービスなど、大容量データを扱うサービスが一般化した場合、ネットが混雑する時間帯にオンラインゲームのダウンロード速度が極端に落ちるほか、ネット対戦におけるマッチングやオンラインストアへの接続に支障をきたすことも考えられます。
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ネット中立性は一見するとインターネットプロバイダーによるトラフィック制限をなくすことで全てのトラフィックを公平に扱っているように見られますが、実際は大容量の帯域を占有するサービスのために他のサービスの速度が遅くなったり繋がりにくくなったりと、ユーザーや企業にとっての不利益が生まれる要素も持っているのです。
欧米では詰めの段階まで来ているネット中立性確保に向けた法制化。日本国内から欧米のオンラインサービスにアクセスする場合、各国のプロバイダーを経由するので海外サービスのユーザーに影響が出る恐れは十分考えられます。日本がこれらの動きを追従するかはまだわかりませんが、国際間のネットプレイやダウンロード販売に影響を与える可能性があるだけに、ゲーマーにとって重要な問題になるかもしれません。